3月28日に発売されたサントリーの新商品「ボス カフェイン」。いわゆる「ロング缶」タイプの缶には「おいしくカフェイン」とのキャッチコピーが書かれ、白(「ホワイトカフェ」)と明るい茶色(「キャラメルカフェ」)のパッケージも飲みやすいイメージを演出。コンビニエンスストアなどでは缶コーヒーの棚に陳列されているが、1缶あたりに含まれるカフェインの量が一般的なエナジードリンクや「眠眠打破」「キラーコーヒー」などより多いことが話題に。一方、原料の特徴を理解していない人がカフェインを過剰摂取してしまうリスクを懸念する声も出ている。
俳優の神木隆之介扮するビジネスマンが会議中に寝落ちしそうになり、「起きてる?(いろんな意味で)」というコピーが流れるCMで知られる「ボス カフェイン」(245ml)。カフェインを中心とした商品設計になっているのが特徴で、商品サイト上では次のように説明されている。
<「カフェインの採りやすさ」を中心にして、コーヒー豆の選定、焙煎や抽出、乳や糖の使い方を見直し、カフェイン量が十分でも程よい甘さで飲みやすい設計を実現しました>
フレーバーは「ホワイトカフェ」と「キャラメルカフェ」の2種類あり、どちらも甘く飲みやすい味となっているが、最大の特徴が1缶あたり200mgというカフェインの量だ。同じボス・シリーズのブラックコーヒー「ボス 無糖ブラック」の約2.7倍の量で、エナジードリンクの「レッドブル」(1缶250ml)に含まれるカフェイン量の80mg、「モンスターエナジー」(同355ml)の142mgより多い。さらに、眠気解消を謳う「眠眠打破」(常盤薬品:1本50ml)の120mg、「強強打破」「激強打破」(同)の150gよりも多いことから、一日に何缶も「ボス カフェイン」を飲んでカフェインの過剰摂取になるリスクを指摘する声もあがっている。
「エナジードリンクや『眠眠打破』などは、眠気や疲労を解消するという効果を消費者に向けて強くアピールする派手な色使いのデザインになっている。一方、『ボス カフェイン』は白とブラウンを貴重とした優しく落ち着いたデザインで、『ミルキーなソフトドリンク』『ホッと一息つきたいときのお供』というイメージを与えるデザインになっており、程よい甘さで飲みやすい。
パッケージ中央には『おいしくカフェイン200mg』と書かれてはいるが、数字を見ただけでは、それが多い量なのか少ない量なのか、わからない消費者が大半だろう。また、コンビニなどの小売店では缶コーヒーの陳列棚に置かれているケースもあり、缶コーヒーを1日に2~3本飲む人は珍しくはないだろうから、その感覚で『ボス カフェイン』を飲んでカフェインの過剰摂取につながる可能性はある。そう考えると、もう少し配慮があってもよいかもしれない」(食品メーカー関係者)
カフェイン過剰摂取のリスクをめぐる議論は以前からみられる。過去には国内でエナジードリンクを日常的に飲用していた20代の男性が、カフェイン中毒により死亡するという事例も発生している。同様の事例は海外でも起きており、コーヒーやエナジードリンクを中毒的に飲用してカフェイン中毒になるケースが問題視されている。
日本ではカフェインの一日当たりの摂取許容量については設定されていないが、カナダ保健省は健康な成人は一日当たり最大400 mg(コーヒーをマグカップで約3杯)まで、10歳~12歳の子供は最大85mgまでとしている。また、世界保健機関(WHO)は、妊婦はコーヒーの摂取量を一日当たり3~4杯までにすべきとしている。
サントリーの見解
「ボス カフェイン」に関し懸念が指摘されていることについて、製造元のサントリー食品インターナショナルに聞いた。
「本商品は、仕事や勉強、スポーツや運転などのシーンにおいて、日常的に飲みやすいコーヒーの味わいながら、カフェインを目的にコーヒーを飲まれる方に向けて開発した、新たなコーヒー飲料です。カフェインに対する耐性には個人差があるため、『ボス カフェイン』というネーミングに加え、カフェイン含有量を正面、ならびに栄養成分表示欄にも記載し、告知物においてもカフェイン含有量を表示するなど、お客様に適切に判断していただけるように努めております。しかしながらこの度のお客様のご意見につきましては真摯に受け止め、本商品の製品上の表示および告知物の表示の参考にさせていただきたいと考えております」
飲用に際して何か注意すべき点はあるのか。
「『ボス カフェイン』というネーミングに加え、カフェイン含有量を正面、ならびに栄養成分表示欄にも記載し、告知物においてもカフェイン含有量を表示するなどお客様に適切に判断していただけるように努めております。しかしながらこの度のお客様のご意見につきましては真摯に受け止め、本商品の製品上の表示および告知物の表示の参考にさせていただきたいと考えております」(サントリー)
(文=Business Journal編集部)