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高島屋、役員への女性積極登用のワケ〜政府の女性活躍推進策、海外投資家の目も後押し

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高島屋、役員への女性積極登用のワケ〜政府の女性活躍推進策、海外投資家の目も後押しの画像1日本橋高島屋(「Wikipedia」より/Wiiii)
 11月5日、日本橋高島屋など6店のレストランや総菜店で食材の偽装が発覚した高島屋(鈴木弘治社長)。最長9年の間に実物と表記が違う食材を約18万点売り、その売上高は合計で3億円を超えるという。

 その高島屋で9月1日、肥塚見春取締役が代表取締役専務に昇格した。同社で女性が代表取締役に就任したのは初めて。5月に取締役に起用されたばかりで、わずか3カ月余りで専務に大抜擢された。代表権を持つ筆頭専務の山口裕氏が取締役(アジア開発室担当)に退き、肥塚氏が専務として企画本部(改革推進本部)本部長兼総務本部、CSR推進本部、IT推進室、日本橋再開発計画室担当など幅広い業務で陣頭指揮を執る。

 肥塚氏は1955年生まれの57歳。一橋大学を卒業して高島屋に入社し、東京店ベビー用品売り場から百貨店人生をスタート。85年に一度退職したが、87年に再雇用された。

 肥塚氏の上司だったのが、東証1部上場企業で初の女性取締役となった石原一子常務。石原氏が「再雇用制度ができたら戻ってくる?」と肥塚氏に声を掛け、適用第1号となった。再雇用制度は、肥塚氏を戻すためにつくられた制度といわれている。

 石原氏は戦後、一橋大学(当時・東京商科大学)を最初に卒業した女子学生で、当時は珍しかった男女同一賃金制度をとっていた高島屋に入社。81年の高島屋とダイエーの提携をめぐって取締役会が分裂した際、創業家出身の飯田新一社長(当時)に同調してダイエーとの提携に1人反対したのが、広報担当取締役の石原氏だった。常務に大抜擢されたが、やがて飯田氏に疎まれて高島屋を去った。清水一行氏の小説『女重役』のモデルにもなった。

 石原氏と入れ替わるように高島屋に戻ってきた肥塚氏は、MD本部商品第2部ディビジョン長、執行役員・IR室長、上席執行役員営業企画部長などを歴任。10年2月に岡山高島屋の社長兼店長に就任した。

 岡山高島屋は赤字経営で、早晩撤退するといわれていたが、岡山財界が存続を望んだ。そこで同社は10年4月、バス事業を展開する両備ホールディングス(小嶋光信社長:当時、現会長)と資本提携し、両備が岡山高島屋の株式33.4%を取得した。両備の協力で地域密着型の百貨店として再出発したのだ。「高島屋の鈴木社長が両備の小嶋氏と慶應義塾大学の同窓で親しかった。これが岡山高島屋を存続させた理由」(百貨店業界首脳)といわれた。

 肥塚氏は女性ならではの視点でさまざまな改革を行い、13年2月期に岡山高島屋を5期ぶりに黒字転換させた。その手腕を買われ、高島屋本社に戻り、取締役、そして代表権を持つ専務へと昇進した。肥塚氏が岡山に行ったことについて、「鈴木社長が自分の次に肥塚(を社長に)と考えて、両備のバックアップで黒字化が可能な岡山に送り込んだ、シナリオ通りの展開」(高島屋関係者)との見方がある一方、「岡山で肥塚は終わりのはずだったが、彼女が鈴木社長と両備の小嶋会長に援護射撃をしてもらう態勢をつくった」(同)ともいわれる。

 現在、日本橋高島屋に副社長はいない。代表権を持つ専務は営業部門を統括する松本靖彦氏と企画部門担当の肥塚氏の2人。松本氏は三和銀行(現・三菱東京UFJ銀行)出身で、三和銀では“陰の頭取”といわれた切れ者だったが、あくまで鈴木社長のブレーン的存在。「社長になることはない」(前出と別の高島屋関係者)といわれている。「鈴木氏があと数年社長をやり、次期社長は肥塚で決まり」との見方が社内外で強まっている。

●早くから女性活用に積極的だった高島屋

 高島屋は、早くから男女共同参画型企業へ向けた取り組みを行ってきた。2月1日付の人事で人事部副部長の中野奈津美氏が執行役員人事部長に抜擢された。これまでマネジメント系の女性役員はいなかったし、40代という若さからも、女性昇進のモデルケースといわれている。そのほかにも、安田洋子・シンガポール高島屋社長、宇都宮優子・ジェイアール名古屋高島屋の常務営業本部長の2人は、高島屋本体に戻ってくれば取締役になる可能性がある。肥塚氏が、大手百貨店初の社長になる日が来るのだろうか。

BusinessJournal編集部

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