11月23日、今年(2013~14年)の日本カー・オブ・ザ・イヤーにフォルクスワーゲン(VW)の7代目ゴルフが選出された。同賞は、自動車評論家やモータージャーナリストら計60人の選考委員の投票により、「市販を前提として日本国内で発表される乗用車の中から、年間を通じて最も優秀なクルマ」を選定するものであるが、34年目になる同賞の歴史の中で、外国車が大賞に選ばれるのは初めて。長年、「大賞は日本車」という不文律があったともいわれる中、初の外国車受賞に国内自動車業界は衝撃を受けているとも報じられている。
同実行委員会はゴルフの受賞理由について、「正確なハンドリングと上質な乗り心地を両立した見事なシャシーを実現」「クルマが本来持つべき運転する楽しさをいつでも味わうことができ、街乗りからロングドライブまで誰もが満足できる」「いま日本のユーザーにいちばん乗って欲しいクルマと言える」と説明している。
もともと同賞における外国車の扱いについては紆余曲折があり、過去には同賞とは別にインポートカー・オブ・ザ・イヤーという賞が設けられていた。しかしこのようなダブルスタンダードは海外の同様の賞では例がなく、わかりにくいということで、第23回から統一された。そして、それから10年を経て、外国車がようやく初めて大賞を獲得したわけだ。
●取るべくして取ったゴルフ
今回の外国車初受賞について、同賞主催社関係者は次のように解説する。
「10年ほど前までは『日本車に大賞を取らせる』という暗黙のルールが確かにありましたが、今はそのような閉鎖的なものはありません。毎年、各メーカーは接待というほどあからさまではありませんが、選考委員に対して根回しを行っています。今回はVWが本気で賞を取りにきた、ということでしょう」
また、大賞を外国車に奪われた格好となった日本車メーカー各社であるが、同関係者によれば、今回の結果について意外にも冷静に受け止めているという。
「09年の選考ではゴルフが3位に食い込んでいましたし、その翌年にはVWのポロが2位になっています。階段を上がるように着実に順位を上げてきていたので、今回はまさに取るべくして取ったという感じですね。ですので、日本車メーカーはそれほどの衝撃は受けていません。大賞が国産車・外国車になるかについては、今はそんなに日本車メーカーも意識していません。単純に他社に取られたというレベルの意識ではないでしょうか」
かつては外国車といえば、高級で特別な贅沢品というイメージが消費者の間に広がっていたが、今や外国車が「いちばん乗って欲しいクルマ」となる時代が到来したのである。
(文=久保田雄城/メディア・アクティビスト)