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鳩のフンだらけだったJA北河内の精米工場、1年後の現在…監査なき食品工場の実態

文=横山渉/ジャーナリスト、協力=武田泰明/GAP総合研究所専務理事
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鳩を追い出した後のJA北河内の精米工場(JA北河内のHPより)

 昨年5月、JA北河内の精米工場で鳩のフンや羽だらけの環境下で精米作業が行われていたことが問題となった。保健所の立入検査を受けるなどした後、昨年7月14日に精米所は再稼働したと発表された。1年以上が経過し、衛生管理面でどのような点が改善されたのか、JA北河内に問い合わせたところ、「当組合ホームページに掲載させていただいております」(営農生活部経済課)との回答だった。

 HPを確認すると、毎月発行されている広報誌「JAきたかわち」のバックナンバー、2022年9月号に改善点が記載されている。大きく分けて次の3点。

(1)汚染場所の清掃・消毒と施設全体の清掃計画の策定・実施
(2)精米施設への動物(鳥類等)侵入防止対策
(3)HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理の徹底

 HACCPとは、食品等事業者自らが食中毒菌汚染や異物混入等の危害要因(ハザード)を把握した上で、原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程のなかで、それらの危害要因を除去または低減させるために特に重要な工程を管理し、製品の安全性を確保しようとする、国際的に定められた衛生管理手法だ。同誌では、「各業界団体が作成する手引書を参考に簡略化されたアプローチによる衛生管理を行う」としている。

 JA北河内では以前から精米施設に鳩が入り込むことがあったことを認めている。2017年に精米設備の改修工事を行った際には鳩の存在は認められなかったものの、その後は鳩が精米施設に入ることが常態化していたようだ。不適切な衛生管理に至った原因について同組合では、衛生管理に関するチェックリストの運用が形骸化していたことや、コンプライアンス担当部署および監査部署において、精米業務について確認・検証項目としていなかったことを挙げている。

 同組合は今年7月7日に「大阪版食の安全安心認証制度」の認証を取得した。これは大阪府が指定した第三者機関が審査を行うもので、認証基準には衛生管理だけでなく、コンプライアンス・危機管理の項目も含まれる。以前から第三者機関の認証を取得していれば、昨年のような不祥事は起きていなかっただろう。

大阪万博でもGAP認証が必須

 一般的に、食品工場内に鳩が入り込み、工場内がフンや羽だらけになるようなケースはあるのだろうか。GAP総合研究所の武田泰明専務理事に話を聞いた。

「精米工場は穀物を扱っているので、鳩や他の鳥にとっては餌がある場所であり、天井の高い建物は巣を作るにも適する場所になってしまう。管理の良いJAもあれば、そうでもないJAもある。報道を見た限り、正直、北河内は管理の悪かったJAだろう。そういうところは他にもあるかもしれない」

 GAP(Good Agricultural Practices)は、農家が取る認証制度で、「食品安全」「環境保全」「労働安全と人権」が確保された持続可能な農場(SDGs農業)であることを示している。GAPには120以上の厳しい項目があり、第三者による現地審査も行われている。GAP総合研究所は、GAP審査員や指導者の育成と現地指導を行う特定非営利活動法人である。

 2025年開催の大阪・関西万博では、会場内で使える農畜産物の基準に、2021年東京五輪で条件とされたGAP認証をもとに、国際基準に引き上げたものを最低限の基準とすることが決まっている。

「GAP認証は、農産物を扱う施設や農家の肥料、農薬の管理も含まれるのだが、全般的に食品安全がしっかり確保できているかどうかを判断する基準になっている。なので、JA北河内も現在は改善されているようだが、昨年の状態であればGAP認証は取れないし、万博でも使ってもらえない食品の施設だっただろう」(武田氏)

定期的な立入検査はない

 食品工場や食料倉庫には、保健所や農林水産省などによる定期的な立ち入り検査はないのだろうか。

「JAの精米工場でいえば、農水省の管轄なのか、厚労省の保健所管轄なのか、グレーゾーンだった。話し合いで、基本的には保健所ということになった。ただ、保健所が監査に入っているかといえば、それはないだろう。ちなみに、農家やJAは農水省の管轄だが、農薬を正しく使っているか、家畜の糞の処理は適切か、農産物の保管場所に不適切なものが落ちていないかなど、農水省の人が現地に見に行ったりするような管理はまったくしない」(武田氏)

 衛生管理のためには、食品工場やメーカーなどは自主的に第三者認証を取得すべきということである。

「全国の保健所数や人員を考えても、国が管理できない以上、要は未然に事故を防ぐ活動能力はないということ。そうすると、やはりGAP認証のような民間の第三者機関による認証制度などを使いながら管理するしかない。東京五輪も大阪万博もそうだが、イベント業者なども食品事故を会場内で起こさないように利用している」(武田氏)

 前出のJA北河内広報誌では反省点として「役職員のコンプライアンス意識の欠如および組織としての管理態勢に問題があった」としている。トップの衛生管理意識が低いと、現場の管理が乱れるということである。

武田泰明/GAP総合研究所専務理事

武田泰明/GAP総合研究所専務理事

●特定非営利活動法人GAP総合研究所
 GAP指導者の育成と現地指導
 国内外のGAPの情報収集と提供(シンクタンク機能)
GAP総合研究所

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