「また今日もスライスハムの中にタオルの端が入っていました」
「なぜだ? タオルが入っていた製造ロットは返品して、すべて入れ替えたはずだろう」
私が、惣菜工場で経験した時のことです。スライスハムの中に、ハム工場で使用していたタオルの端が混入していました。ハム工場の担当者に確認し、間違いないと確認しました。ところが、その後、異なった製造日のハムを使用した際に、同じタオルが混入したハムが、再び出てきたのです。
多くの食品工場では、不良品を再び原料として使用していることがあります。包装時に割れてしまったせんべい、手延べそうめんの切れ端、ひねりが戻ってしまい2個分がつながったソーセージ、スライスハムの端などを細かく砕き原料として再度使用するのです。
工場によって呼び方は異なりますが、「再生品」「リワーク品」「もどし品」などといいます。
配合量が少なく、正規品と同じ原料を使用しているので、アレルギー表示など安全性には問題はないのですが、蛋白が熱変成した物を混ぜることになるので、そうめんやハムなどは再生品を使用すると食感が悪くなってしまいます。
チョコレートのように、溶かして再度使用しても食感や味などに変化がなければ再生品を使用してもいいのですが、蛋白が熱変成をしている物を使用して、製品の食感に変化を生じる場合は、使用すべきではないと私は思います。
再生品を配合しても、食感の差はわずかです。再使用すれば、不良品がなくなるので大きな利益につながります。その半面、不良品が発生しても、再生品の配合量を増やせば損失が防げることから、工程を改善して不良品を減らす努力を怠ってしまいがちです。
たとえば、昨日製造したハムにタオルが混入したとします。そのハムをスライスした時に発生した「くず」を、再生品として今日製造するハムの原木に原料として使用すると、タオルの異物が延々とハムの中に入ってしまうのです。
食品工場では、金属異物、骨、石などの異物はエックス線を使用した探知機で探知することができますが、タオル、髪の毛、紙などは探知できないので、見逃された状態で製品が工場から出荷されてしまうのです。
異物混入が発覚したときには、その再生品を使用している、すべてのロットの出荷も止めなくてはなりません。
再生品の使用は、工場で働いている方にとっては常識でも、営業担当者、製品を使用している方、一般消費者にとっては、常識ではないのです。
食品工場は、不良品を減らす努力を行い、それでも発生してしまったB級品は、再利用するのではなくB級品として販売する努力をすべきです。
(文=河岸宏和/食品安全教育研究所代表)