パンや冷凍食品、菓子、惣菜などに広く使われる加工デンプンには、一般の添加物とは違う重大な問題点があります。
まず、不純物の問題があります。普通の合成添加物については、再結晶などで不純物を除くのですが、デンプンは結晶化しません。したがって加工デンプンをつくるには、デンプンにさまざまな化学薬品を加えて化学反応を起こしますが、化学反応というのは100%進むものではありません。よくて70~80%ぐらいなので、20~30%ほどは不純物が残ります。さらに、合成に使用する化学薬品は必ずしも高純度のものではないので、合成に使用した化学薬品自体に含まれる不純物も残ります。これらの多種多様な不純物を除去することは困難です。
特にデンプンにおいては、水で洗うなどして除いていますが、完全に不純物を除去することは極めて困難です。また、添加物メーカーによっては、水で洗う工程がない場合もあります。使用した化学薬品を除去するために、還元性物質を加えて分解したり四苦八苦しています。
加工デンプンの品質は事実上、添加物メーカーの良心に任されているのです。私の務める食品メーカーにも加工デンプンが納入されていますが、ある日、「このデンプンは変な臭いがする」と現場の責任者から相談を受けました。私はこの「変な臭い」の原因は合成デンプンをつくるときに使用した無水酢酸が変化したものだと考えました。副生物です。ちなみに無水酢酸は酢の成分ではなく、強い反応性のある物質で、食用になるようなものではありません。
幸い人体には無害な物質でした。この場合「変な臭い」がしたことは幸いでしたが、このような場合「これは不純物によるものだ」ということがわかる人が、必ずしも食品メーカーにいるとは限りません。たとえば、無臭の有害な物質だったとすれば、食品メーカーの社員では絶対にわからないでしょう。加工デンプンを使用した食品を食べるということは、加工デンプンに含まれている不純物というゴミも食べることになります。
加工デンプンのそのほかの問題としては、使用した食品の表示がわかりやすいことです。加工デンプンは合成化学物質であり、合成デンプンもしくは化学デンプンと呼ぶべき代物なのです。合成保存料、合成着色料(人工着色料)、合成甘味料(人工甘味料)などと同じ類のものです。
添加物は食品の袋などに必ず表示をしなければなりません。しかし、加工デンプンは食品に使用されていても「加工デンプン」としか表示されておらず、場合によっては「乳化剤」とだけしか表示されていません。
特に食品会社に多い中小零細企業には、食品の専門家などがいない場合も多いのです。加工デンプンが何かを理解せず、添加物メーカーに言われるままに使用している食品メーカーもあるのです。
(文=小薮浩二郎/食品メーカー顧問)