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大成建設、工事の大幅遅延が続出…世田谷区本庁舎は2年遅れ、札幌の工事遅延が影響か

文=Business Journal編集部
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世田谷区本庁舎(「Wikipedia」より/Wiiii

 大手ゼネコンの大成建設に異変が生じている。7月 14 日、大成建設は世田谷区本庁舎の2期工事を32 カ月、3期工事を33 カ月とする工期延伸を発表した。すでに5月24日、1期工事で計8カ月の工期延伸を発表していたので、たて続けの工期延伸である。これで工期全体が約2年遅れてしまうという異例の事態になった。世田谷区の保坂展人区長は8月1日の会見で「大成建設が1期の遅れを2期・3期で少しでも取り戻すような再提案があるかと期待しましたが、逆に2年の工程延伸となれば、区政への影響は余りにも大きすぎます」と憤慨した(世田谷区HPより)。

 大成建設によると、1期工事の遅延理由には「躯体工事工程の検証不足」「外装工事工程の検証不足」「外溝工事工程の検証不足」などを挙げている。2期工事と3期工事の遅延要因は「引越し期間における作業制限の認識不足」「検査工程の認識不足」「応札時の施工計画・工程計画の見誤り」である。

 こうした事態が発生した背景は何だろうか。建設業界に潜む構造的な問題なのか、それとも大成建設に固有の問題なのか。「こうした事例は今まで聞いたことがないので、想像も交えてお話しする」という前提で、大手ゼネコンOBはこう指摘する。

「工事計画を策定する時には『土日には工事を休止する』『大型車両が出入りできる時間帯』などいろいろな制約を加味しなければならないが、ひとつでも確認漏れがあると工期に影響する。鋼材の発注が遅れたことも考えられる」

 確認漏れや鋼材の発注遅れは、どんな背景で発生するのだろう。

「私が勤務していた会社では社内チェックが何重にも行われていたが、大手建設会社の場合、社内体制を考えればチェック漏れは起こりにくい。想像だが、担当者のミスか、公募から入札までの期間が短くて検討する時間が不足していたこととか、あるいは札幌市の工事のやり直しで職人が取られてしまったこともあり得ると思う」(同)

大成建設の虚偽報告が判明

 大成建設の工期遅延は、発表されているだけで今年に入って2件発生している。3月15日、NTT都市開発が札幌市中央区で開発中の「(仮称)札幌北1西5計画」(地上26階・地下2階建て)新築工事が、施工会社の大成建設に起因する問題で、竣工時期が2年4カ月遅れることが発表された。遅延の要因は、鉄骨のサイズと天井・床のコンクリートの厚みに計画と差異が生じていたこと、さらに計測記録の報告に虚偽が含まれていたこと。NTT都市開発は「契約に基づいた品質」と「建築関連法規」を満たさない見込みとなるため、工事中の地上部分の全ておよび地下部の是正対象部分を撤去したうえで、再構築をせざるを得ないと判断した。

 この件について、設計と工事監理業務を受託している久米設計(東京都江東区)が発表した見解によると、初回の立会検査では柱に問題はなく、大成建設から最初に提出された柱の傾きと柱頭レベルに関する自主検査記録でも、管理基準値内に収まっていた。しかし、その後の調査によって、自主検査記録の報告は虚偽の内容であったことが判明した。さらに、建方精度を自主検査記録等で確認する同社の監理業務内容に照らすと、自主検査記録に虚偽の記載がされた場合、同社の監理者が施工不良を発見することは極めて困難だったという。この問題について、前出ゼネコンOBはいう。

「検査には部分抜き取りが多く、施主が広い箇所を検査する場合もその一部分を検査する。検査に引っかかることはまれなのだが、何ミリ以上ズレていたら不合格という管理値が厳しく設定されていたのだと思う。かなり厳しい数値の場合、検査される箇所だけ厳密に施工して他は一般的に施工してしまうこともあると聞く。そういったケースで1カ所でも引っかかると、全数検査がされた際に引っかかる箇所が多くなってしまう」

 NTT都市開発は「契約に基づいた品質」と「建築関連法規」を満たさない見込みと述べている。

「合格の管理値が建築基準法で定められた数値より厳しく設定されている場合は、法的には問題がなくても、施主との契約に違反してしまう。管理値や検査の厳しさは施主によって異なるが、NTT都市開発が厳しく設定した可能性も考えられる」(同)

 NTT都市開発の物件が該当するのか否かは別として、同OBは「検査の上ではアウトだが、機能として問題がない場合は、検査結果が規約からオーバーしていても、規約による合格の範囲内に数字を改ざんするケースもあると聞いたことがある」と話す。建設業界の一部に悪弊が潜んでいるのだろうか。

他の工事にしわ寄せがいく可能性も

 ともあれ大成建設は1年に2件も大型工事の工期遅延を発生させてしまった。保坂区長は大成建設に対して「各事業や議会、また施工者選定に関わった学識経験者や他の参加事業者がかけた熱意に対して、あまりに誠実を欠くと思います。改めてエントリーする資格はあったのですか」と伝えた(世田谷区HP)。

 信用の失墜だけでなく、ダメージは経済的損失にも及ぶ。7月28日、世田谷区は1期工期分について大成建設に、工程延伸に伴う遅延違約金を約3億 6000 万円、技術提案不履行に伴う違約金約4億 1500 万円を請求し、1期工事完成日延伸に伴う損害賠償は大成建設と協議中と発表した。さらに大成建設の責めに帰すべき事由で1期工事にさらに工程延伸が生じた場合、追加して約1億 3800 万円の違約金を請求する方針だ。2期工期と3期工期の違約金はまだ発表されていない。「(仮称)札幌北1西5計画」では、是正工事関連費用が発生して工事原価が約 240 億円増加する見込みである。

 決算内容も悪化した。2024年3月期第1四半期の連結業績(2023年4月~6月)で営業損益が80億円の損失となった(前年同期は60億円の利益)。大成建設によると、悪化の要因は「建築事業の損失計上」「開発事業の減収」「販売費及び一般管理費の増加」である。工事遅延の影響はそれだけではない。

「建設会社は1年先や2年先までの現場まで見越して、職人の配置を決めるために山積み表という工程表を作るが、ひとつの現場の工期が1年延びると他の現場にも影響してくる。通常、工期が厳しくなると職人を大量に投入して追い込みをかけるが、世田谷区庁舎とNTT都市開発のビルという2つの大型工事で遅延が発生したので、他の工事で職人の手配が間に合わず、しわ寄せがいく可能性もある」(前出ゼネコンOB)

BusinessJournal編集部

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