ファッションのリユース市場が活気を見せている。古着の売買は世代を問わず盛んに行われており、最近では海外からのインポート品を取り扱う古着ブームが若者の間で起こり、新たなビジネスも生まれている。そんななか、ECサイトにおいて独自のファッションリユース市場を確立したのが、ZOZOが運営する「ZOZOUSED」だ。2012年11月にブランド古着のセレクトショップとしてスタートし、現在6000以上のブランド、60万点以上の商品を取り扱っている。ZOZOUSED独自のサービス「買い替え割」では、過去にZOZOTOWNで購入したアイテムを下取りして、ZOZOサイト内のほしい服を割引価格で購入できるため、ZOZOユーザーから人気を博している。22年で10周年を迎えたZOZOUSEDは、22年度の取扱高は160億円を超え、前年比で19.3%も伸びるなど、好調な業績となっているのである。
一方、リユースビジネスをより身近な存在にしたフリマアプリといえば「メルカリ」だ。月間ユーザー数が2200万人を超え、他のフリマアプリと比較してユーザー数が圧倒的に多いことが特徴。ファッションリユース部門においては、高級ブランド品からノーブランドの古着まで幅広く出品されている。また、同アプリ内でスマホ決済サービス「メルペイ」も展開しており、メルカリ内での売買だけでなく普段の買い物でも利用できるという利便性もウリである。
小売・リユース専門のクラウドPOSシステム「ReCORE」の運営を手掛ける株式会社NOVASTOの代表取締役・佐藤秀平氏に話を聞きながら、ZOZOUSEDとメルカリを比較し、どちらがより使い勝手がいいのか、またどんな場合に使うのが適しているのかなどについて解説していきたい。
両者の特徴やメリットには大きな違いがある
まず、ZOZOUSEDの特徴やメリットについて確認しておこう。
「ZOZOUSEDの場合、購入体験がスムーズだということが一番のメリットだと思います。以前ZOZOで購入した商品を下取りしてもらい、欲しい商品を安く手に入れることができる『買い替え割』は、ZOZOを頻繫に使うユーザーにとっては、とても便利でお得なシステムです。ZOZOで購入した商品なら基本的になんでも下取りしてもらえるという安心感と、お得な買い物ができるということがセットになっているため、ZOZOのリピーターが増えています」(佐藤氏)
こうしたスムーズな買取査定が行えるのはZOZOUSEDならではの強みなのだという。
「古着の買取査定は通常、コンディションの確認や製造年の特定などで、かなりのコストがかかります。しかし、自社で取り扱っているブランド品のみに絞った買取査定を行っているZOZOUSEDでは、商品のカテゴライズから、流通金額、商品の経過年数など、もともとデータを持っています。買取査定の条件となる基本情報を大まかに把握できるようシステム化されているので、膨大な商品数であっても、査定コストを抑えることができています。さらにZOZOUSEDでは、仕入れから販売までの各プロセスにAIを導入しており、こうした自動化によってさらにコストを抑えることで、スムーズな買取から値引き販売までを実現できているのです」(同)
次に、メルカリの特徴やメリットはどういった部分か。
「メルカリの場合は、手軽に出品できることや、リユースショップで買い取ってもらうなどの他の手段よりも、手元に残るお金が多いといった販売する場合でのメリットが多いです。また、自分で出品から購入者との値段交渉、梱包まで行うため、商売をすることが楽しいと感じる人にとっては、向いているサービスだと思います」(同)
佐藤氏は購入する側のメリットもあると続ける。
「圧倒的な出品数なので、選べる楽しさがあるということ、単純にほしい商品が見つかりやすいことが挙げられます。高級ブランド品からインポートの古着まで、幅広いジャンルのファッションリユース品があり、購入者としても、自分のニーズに合った商品を探して購入することができるのです。また、例えばお気に入り登録した商品が値下げしたら通知が来たり、好きなブランドの商品が新たに出品された際に通知が来たりするように設定できるので、利用者にとって使いやすいと感じるUI(ユーザーインターフェース)になっています。このようにアプリとしてのクオリティが高いことが魅力でしょう」(同)
ZOZOUSEDとメルカリ、それぞれの課題や注意点
では、ZOZOUSEDとメルカリを使ううえで、不便な点や注意が必要な点はあるのだろうか。
「ZOZOUSEDは、あくまでZOZOTOWNを使ったことがあるユーザー向けのサービスなので、普段ZOZOでの買い物をしない人にとっては選択肢に入りづらいでしょう。ZOZOで購入したタイミングでしか、買取サービスを利用できない点と、ZOZOで買い物する際に定価より安く購入できる『買い替え割』を使えるのは必然的にZOZOユーザーに限られてしまう点から、普段からZOZOを使わない方にとっては、お得さは感じづらいと思います。
一方で、メルカリで購入する際の注意点は、一般人が販売しているので、プロの査定を通していない偽物が販売されているリスクがあるということです。もちろんメルカリ側も対策はしていますが追い付いていない部分もあり、購入の際は自己責任になってしまうので、しっかり本物かどうか購入者自身で見極めなければいけないところがデメリットでしょう。販売する際のデメリットとしては、やはり出品から出荷までの工程で手間がかかることです。見栄えよく商品の写真を撮影することや、購入者との交渉、梱包や発送など、一から自分でやらなければいけないことに加え、出品してもすぐに売れないこともあるので、そこは覚悟しなければいけないと思います」(同)
また最近では、ZOZOUSEDで購入した商品をメルカリで売って稼ぐという転売ビジネスもあるようだ。佐藤氏によると同じ商品でも、メルカリのほうが高い価格に設定されていることが多いという。
「メルカリでは独自のポイント制度があり、そのポイントを使って購入するユーザーが多いので、通常より高い価格設定でも売れることが多々あります。同じブランドの商品をZOZOUSEDと比較した場合、もちろんZOZOUSEDのほうが高い価格の商品もあると思いますが、メルカリのほうがユーザー数も圧倒的に多いということもあって、価格帯が高めな傾向にあるのです。どちらで安く売られているか比較することも、購入する際に気を付けたほうがいいポイントかもしれません」(同)
棲み分けができておりライバル関係ではない?
ZOZOUSEDとメルカリのメリットやデメリットについて比較してきたが、結局どちらを使うのがいいのだろうか。
「どちらを使うのがいいかは、ユーザーのプライオリティが何かによるので、一概に決めることは難しいです。例えば、一点一点の服を高く売るよりも、すぐに買い取ってもらい、新しい服をその場で安く手に入れたいというスムーズな買取・購入体験を求めている方には、やはりZOZOUSEDが適しているのではないでしょうか。一方で、服を売る際に、時間をかけても手元に残るお金を最大限にしたい方や、自分で商売をするように、販売までの工程を自分で行うことに抵抗がない方、また購入する際には圧倒的な品数から選んで購入したいという方には、メルカリが向いていると思います。どちらを使うのが適しているのかということに関しては、ユーザー自身がZOZOUSEDやメルカリといったサービスを使う際に、何を一番の目的としているのかを考えて使うということが大事なポイントになるでしょう」(同)
最後にZOZOUSEDとメルカリの関係性が今後どうなっていくか、予測を聞いてみた。
「現在ZOZOUSEDがネット上でファッションリユースのプラットフォーム型ビジネスとして急成長していますが、今後さらに成長させていくために、システム面の向上だけでなく、安く商品を購入したいという訴求では響かない「お金に困っていない層」に対する、利用インセンティブの付与などで、利用者層の拡大をしていくのではないかと思います。
ただし、そうして新たにZOZOUSEDが獲得した層が、メルカリのシェアを奪うことになるかというと、それは可能性として低いでしょう。そもそも現段階で、ZOZOUSEDユーザーとメルカリユーザーは、ファッションリユース部門のなかでも、基本的にはそれぞれ異なった顧客層を獲得し売り上げを伸ばしています。要するに棲み分けができているので、シェアの奪い合いが起きるとしても、1割から2割程度の顧客のなかでの流動となり、売り上げが大きくどちらかに偏るといったことは考えにくいです。今後は基本的にそれぞれ新たなユーザー層を獲得していき、より棲み分けが進んでいくのではないでしょうか」(同)
ZOZOUSEDとメルカリは、ガチガチのライバルとして競合しているというよりも、両者でファッションリユース業界を盛り上げていく、共存・共栄の関係性ということだろう。自身に適したツールを使うためには、何を目的として売買するのか、また、自身の適性などとも照らし合わせることが大事ということだ。
(文=A4studio、協力=佐藤秀平/NOVASTO代表取締役)