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新人社員へのパワハラで指導役が異動→実は想像絶するモンスター新人だった

取材・文=逢ヶ瀬十吾/A4studio、協力=松本利明/人事・戦略コンサルタント
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「gettyimages」より

 少し前にインターネット上に投稿された「新人にパワハラしていた先輩を通報した結果」という記事が、多くの読者に戦慄を与えていた。Aさんは、会社からサポート役を任された新人Bさんにパワハラをしていると思われ部署を異動することになったが、その後、実はBさんは仕事がまったくできない「モンスター新人」だったことが次々と明らかになる、という体験談である。新人Bさんは、Aさんに対し同じ質問を何度も繰り返し、自分のミスを認めず、責任転嫁がひどく、嘘をついて誤魔化すなど問題のある言動を繰り返しており、Aさんやその後教育担当を任された投稿者を精神的に追い詰めていったようだ。

 この書き込みには、投稿者やAさんに同情するコメントや、似た体験をした・見聞したというコメントが多く寄せられていたが、このようなモンスター新人に苦しめられるという事例は多いのだろうか。また、同じようにモンスター新人に苦しめられる当事者になってしまった場合、どう対処すべきなのだろうか。人事・戦略コンサルタントの松本利明氏に話を聞いた。

モンスター新人がなぜか採用されるワケ

「上司から見て『この新人違うな』と感じる人を『モンスター』だと例えるならば、モンスターにもさまざまな種類があります。今回の事例の新人Bさんのように、誰がどう指導しても仕事ができないタイプの人もいれば、単純にその会社や上司の人と相性が合わないタイプの人も、企業側にとってはモンスターと感じてしまいがちです。そのため程度の差はあれど、モンスター新人が一定の割合で入ってくるということは事実として多いのだと思います。

 応募数が少なく人材を選べない状況下で、本来なら不採用とする人材を妥協して採用するケースもあります。ただ、同じような人材ばかり採用するのではなく、会社に新しい風を吹かせる可能性がありそうな人をチャレンジ枠として採用し、人材の層を厚くしたいという企業側の思惑もあるのでしょう」(松本氏)

 チャレンジ枠採用の場合でも、採用人事担当者の責任が問われないことも問題だという。

「今回の投稿のケースでは、モンスター新人であるかどうか、その人の本質を見抜けなかったという意味で、採用プロセスに問題があった可能性が高いですが、誰もその責任を取っていないのではないでしょうか。海外や外資系の企業では、自分が採用した人材を面倒見られない場合には、その責任を取らされることがあります。ですが、日本の企業では多数の社員で採用を決定するため『みんなで選んだ人材』ということになり、採用した責任を誰か一人に追及しにくいという構造があるのです。

 人事採用に余裕のある企業では、入社してからトラブルにならないよう、先輩・上司になるであろう方々と就活生が面接をしたり、懇親会や実習や課題を設けて人柄を理解できるような時間を過ごしたりして、肌感覚を掴めるよう取り組む企業もあるようです。そして、さらに採用後のトラブルを防ぐ保険的な意味合いで、現在は3カ月から半年程度の試用期間を設けている企業がほとんどです」(同)

 しかし、「試用期間があれば安心」ということでもなく、試用期間中に見抜けないことも多々あるそうだ。

「『この期間を乗り切れば安泰だ』と無意識のうちに本能的に感じ取っているのか、試用期間中は問題を起こさずにおとなしく過ごし、本採用されて正式に配属された後にトラブルを起こし出すというモンスター新人も少なくありません。試用期間後にトラブルを起こした場合の対応策としては、人の相性が原因となっていることも多いので、まずは教育担当の先輩・上司を替えることでしょう。先輩・上司が替わったことでモンスターのように思われていた新人が、急に活躍するようになるといったケースも少なくありません。ただ、教育担当を2、3人替えても新人の改善が見られない場合は、新人の配属先を替えるなどの対応が必要でしょう」(同)

20年前もモンスター新人は存在したが…

 やはり正社員採用をしていると、簡単にクビを切ることはできないのだろうか。

「はい、難しいです。無断欠席が多い、物理的に働けない状況になっている、コンプライアンス違反で莫大な損害を与えた、窃盗などの犯罪行為を行ったなど、会社ごとに決められている賞罰規定に反している場合は退職勧奨できますが、そこまでのレベルではないケースが大半です。今回の投稿の事例でも、極端に仕事ができないというだけですので、教育担当の先輩・上司が精神を病んだとしても退職勧奨はできません」(同)

 10年前や20年前からモンスター新人は存在していたのかも気になるところ。ひと昔前の若者と現在の若者では、どのような違いがあるのだろう。

「モンスター新人は20年前にも存在していました。ただ、かつては定年までひとつの会社に勤務する終身雇用の感覚が一般的で、『大きい組織で一生安泰に暮らしていきたい』と思っていた新人も多い時代だったため、現代ほど表面化はしていなかったのでしょう。3年に一度ぐらいは会社内での人事異動があるため、新人側には『3年間我慢すれば上司か自分のどちらかがいなくなるだろう』と、よくも悪くも我慢やあきらめもあり、オオゴトにはならなかったのが実態です。

 しかし、10年ほど前から転職することが一般的になり、若者の重視する軸が『自分らしく活躍して生きがいを感じたい』というように変化しました。現在はPCやスマホを使用して簡単に検索できる時代ですので、今の若者は自分に合わない指導を受け入れるよりも、都合のいい正解を探し、安心する傾向があります。結果、同質性が高い人ばかりと付き合った経験しかないという若者が多く、自分に合わないと感じるとすぐに別の道を探したり、先輩・上司からの助言が自己否定に感じパワハラだと捉えてしまったりと、打たれ弱い一面があるとも言えるでしょう」(同)

モンスター新人にはどう対処すべきか?

 では、モンスター新人の教育担当などを任されてしまった場合、どう対処すべきだろうか。

「今回の事例のように、誰がどう指導しても仕事ができないタイプのモンスター新人の場合、教える側のストレスが溜まり精神を病んでしまうので、自分を守ることを優先し、『普通これだけできるだろう』という考えや、『自分が若手社員のときはこうだった』というような思いを一切捨て、モンスター新人を『そういうキャラクターなのだ』と割り切って考えることが大切です。

 一気に指示を出すのではなく、理解できるレベルまで指示を細かくし、こまめに理解度と納得度を確認したり、指示だけでなく、仕事のコツも相手が再現できるまで一緒に丁寧に教えてあげたりと、そういったキャラクターの人に伝わる指導方法に変えてみるという対処を試みるのもいいでしょう。見捨てるということではなく、できないのが当たり前、逆にできたらすごいと、考え方や意識を変えていくのです」(同)

 けれど、それでもストレスが溜まってしまったり我慢の限界を感じてしまったりする人もいるだろう。

「割り切って考えようにも自分の職務に支障をきたすようでしたら、上司や人事に相談してください。ただし、正しく状況が伝わらないと、『部下の扱いができない人』と自分の評価が下がってしまう場合もあります。ですから、例えば3カ月ごとに教育担当をローテーションしていくなど、自分一人の負担にならないような仕組みを強く提案していくことが安全です。複数人で教育することでストレスや負担を分散したり共有したりできますし、一人だけの意見では聞く耳持たないような上層部も、関わった教育係全員が束になって訴えることでモンスター新人の実態を正確に伝えられるようになるでしょう」(同)

(取材・文=逢ヶ瀬十吾/A4studio、協力=松本利明/人事・戦略コンサルタント)

松本利明/人事・戦略コンサルタント

松本利明/人事・戦略コンサルタント

PwC、マーサー、アクセンチュアなどの外資系大手コンサルティング会社のプリンシパル(部長級)を経て現職。5万人のリストラと7,000名を超えるリーダーの選抜と育成を行った「人の『目利き』」。主な著作に『稼げる人稼げない人の習慣』(日経ビジネス人文庫)、『「ラクして速い」が一番すごい』(ダイヤモンド社)、『「いつでも転職できる」を武器にする』(KADOKAWA)などがある。
人事・戦略コンサルタント・松本利明の公式サイト

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