「パチンコ王」と言われた平和の創業者、中島健吉氏から事業の継承を頼まれたのがパチスロ機メーカー、オリンピア(非上場)会長の石原氏だった。07年8月、平和が株式交換方式でオリンピアの全株式を取得して完全子会社化。同時に、オリンピアの持ち株会社である石原ホールディングス(HD)(石原昌幸社長)が中島一族の資産管理会社、中島HDが保有する平和の株式を460億円で譲り受けた。その結果、石原HDは平和株式38.2%をもつ筆頭株主となり、石原昌幸氏(2.9%)個人など親族の分を含めて45.8%を保有することになった(12年3月末現在)。
平和の新しいオーナーになった石原氏は成熟市場となったパチンコ・パチスロ機事業から「総合レジャー産業」への脱皮を目指す。その第一弾が昨年11月の国内2位のゴルフ場運営会社PGMホールディングスの買収である。平和はTOB(株式公開買い付け)を実施、米投資ファンドのローンスターが保有するPGM株式を取得した。買い付け総額は649億円。平和はPGM株式の80.4%(11年12月末現在)を保有して経営権を握った。
PGMを子会社に組み入れた平和は、アコーディアの取締役だった神田有宏氏をPGMの社長に招聘した。実は、石原氏はアコーディア株式の3.0%、オリンピアは1.8%を保有する大株主(12年3月末現在)。石原氏がアコーディアの前取締役の神田氏をPGMの社長に起用した意図は明白。アコーディアの買収だ。PGMとアコーディアを傘下に収め、「ゴルフ場王」になる野望を抱いているのだ。
今年1月25日、神田氏はPGMの社長に正式に就任。翌26日、神田氏とPGMの親会社である平和の石橋保彦社長は、アコーディアに経営統合を申し入れた。アコーディアのリリースによれば、「竹生(社長)に対し、神田氏と秋本(専務)は、竹生のコンプライアンスに係わる情報を把握しており、その情報のリークを中止させたいのであれば、竹生は代表取締役社長を辞任し、秋本専務を社長にするよう、再三にわたって要求した」。「PGMの神田氏の発案で、竹生のスキャンダルを利用することにより、よりお金のかからない方法で(アコーディアを)統合ができるとの発想になった」という秋本専務の発言も、リリースで暴露している。
4月16日、竹生社長と平和のオーナー石原昌幸氏とのトップ会談が開かれた。竹生氏には大物ヤメ検の則定衛弁護士、石原氏には太田洋弁護士が立ち会った。交渉は物別れ。翌17日、アコーディアの秋本一郎専務による、「竹生社長が会社の資金を愛人のために使っている」との告発が行われ、血戦の火蓋が切って落とされた。