28日の株主総会は、剰余金の配当を決める1号議案のみが承認された。取締役を決める2-5議案については質疑や投票は終了したものの、委任状の重複などを慎重に集計することを理由に29日午前10時に議案の成否が発表されることになった。集計に時間がかかった最大の原因は、両方に重複して委任状を出した株主がいて、議決権行使の分母が確定できないことにあったという。28日の段階で会社提案の取締役候補9人中、鎌田隆介社長を含む7人と監査役候補2人は、分母を最大に見積もっても過半数を超える票を得たと判断された。
しかし、会社提案の澤田勲氏(社外取締役の公認会計士)と片山典之氏(同弁護士)、株主提案の日野正晴氏(元金融庁長官の弁護士)の計3人については、過半数を取れるかどうかの当落線上の得票となり、慎重に集計することになった。
6月29日の午前10時に議事を再開。会社側候補の澤田氏と片山氏の取締役選任は可決、株主提案の日野氏は落選した。その結果、会社側候補全員の取締役選任が確定。株主提案の候補は1人も取締役になることができなかった。会社側が勝利し、株主委員会は完敗した。だが、夜を徹して集計作業をやり直すなど大接戦だったことは間違いない。
株主総会がここまでこじれた発端は竹生道巨(ちくぶ・みちひろ)・前社長のコンプライアンス(法令順守)問題。親密な女性のために会社の経費を不正に使用したと、秋本一郎・前専務が告発したことから一連の騒動が始まった。4月26日には、秋本氏の告発を受けて、大株主、オリンピア(アコーディアの発行済み株主の1.8%保有)を中心に結成された株主委員会が、ガバナンス体制の刷新を求め、株主総会で選任すべき役員候補として、秋本氏を含む13名(取締役10名、監査役3名)の株主提案を行った(その後、秋本氏ら4人の社内取締役候補は自ら辞退した)。
表向きは竹生前社長による私的流用に端を発した人事抗争に見える。だが、事はそう単純ではない。
実際はアコーディアのライバルのゴルフ場運営会社、PGMホールディングスによる買収工作だった。作戦の背後には、1人の人物の野望があった。PGMの親会社であるパチンコ・パチスロ業界トップの平和(東京・台東)のオーナー石原昌幸氏だ。表面には一切出ていないが、石原氏が今回の抗争の本当の主役なのだ。