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パズドラ「オワコン説」の嘘…パラメータのインフレ→ゲームバランス崩壊の問題

文=福永太郎/編集者・ライター、協力=岩崎啓眞/ゲームプロデューサー
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ガンホー・オンライン・エンターテイメント「パズル&ドラゴンズ」のHPより

 スマートフォン向けゲームの代表格「パズドラ」こと「パズル&ドラゴンズ」。サービス開始から11周年を迎え、国内累計6,100万ダウンロードを突破。根強い人気を誇っているようにも見えるが、一方で「オワコン」という声もあり、見方が分かれているようだ。そこで今回は、ゲームプロデューサーの岩崎啓眞氏に、パズドラがヒットした経緯やサービスが続く理由、そして現在のパズドラに対する評価について話を聞いた。

スマホ移行期に生まれた面白いゲーム

 パズドラは、2012年2月20日にサービスが開始されたスマートフォン向けのゲームだ。パズルとRPGが融合したかたちで、モンスターを使ってパーティーを編成し、ダンジョンに挑戦する。同色のドロップを3つ以上揃えて消すことでモンスターが攻撃。複数のドロップを連続で消すことでコンボが発生し、敵に与えるダメージが増大する。片手で遊べるため、電車やバスでの移動中にも最適なゲームだ。課金でも手に入る「魔法石」は、ガチャを引く時やコンティニューをする際に使用できるが、無課金でも十分に楽しめる。

 リリース開始から翌年の13年には2200万ダウンロードを突破。開発元のガンホー・オンライン・エンターテイメントの時価総額は、同年5月14日に終値ベースで1兆7851億円となり、任天堂を大きく超えた。全世界では14年に4000万、16年に6000万ダウンロードを達成した。なぜパズドラは、ここまでヒットしたのだろうか。

「パズドラは、当時のスマホ向け人気ゲームであったパズルRPG『Dungeon Raid』とパズルゲーム『Bejeweled』の2つからヒントを得て製作されました。さらに、ガラケー(フィーチャーフォン)で流行していたカード型ソーシャルゲームの要素を取り入れたことで、パズルを解くとデッキが敵を攻撃するという斬新なゲームシステムが誕生しました。12年は、ガラケーからスマホへの急速な移行が進んでいた時期であり、スマホ向けのゲーム数がまだ少なかった時代。パズドラは、そんな状況の中でリリースされた、斬新でわかりやすく面白いゲームでした。しかも、当時はまだ珍しかったタッチパネルで操作するゲームですから、ヒットするのは必然だったといえるでしょう」(岩崎氏)

3マッチパズルゲームの寿命は長い

 最近は「MARVEL」とのコラボイベントを開催し、App Storeの売上ランキング(ゲームカテゴリー)で1位を獲得。eスポーツ大会や、全国7カ所で開催される『ガンホーツアー』などのオフラインイベントも大盛況だ。岩崎氏によると、現在も一定の人気を維持している理由は、パズドラが3マッチパズルゲーム(同じブロックを3つ揃えて遊ぶゲーム)である点が大きいという。

「3マッチパズルゲームは、一度辞めたユーザーが復帰しやすいことが強みです。たとえばRPGの場合、ユーザーが久々に復帰した時には、見たことのない魔法や敵だらけになり、まるで新しいゲームのようになってしまい、プレイするのがつらくなることがあります。その点、パズルゲームは一度ルールを覚えれば、いつでも違和感なく遊びやすい。さらに、一定期間プレイするとカードなどの資産が築かれ、ユーザーは完全には辞めにくくなり、たまにログインして遊ぶ状態が続く。そのため、パズドラに限らず、一定数以上のユーザーを集めた3マッチパズルゲームは、サービスがなかなか終わらないという現象が起きています。『Candy Crush Saga』『Homescapes』『Gardenscapes』のように長期運営が続く3マッチパズルゲームは多いです」(岩崎氏)

ユーザー離れの原因はインフレ

 パズドラの運営は順調に続いているようにも見えるが、「妨害だらけで楽しくパズルさせてくれない」「さすがにあれを何年もやったら飽きる」といった不満から退場するユーザーも。SNSでは「オワコン」という声もあるが、ユーザーが離れていく理由は何か。

「主な原因は、パラメータのインフレによるゲームバランスの崩壊です。ゲーム製作をする時には、キャラクターの能力値には想定の上限が設定されています。ただ、終わりがないスマホのRPGゲームの場合、トッププレイヤーを基準にして作られた新ステージは、クリアされるたびに難易度が上がっていき、想定した数値の上限を超えてしまう。現在のパズドラは、サービス開始当初に比べると、ダメージの桁が何倍にも膨れ上がっています。

 その結果、新しい敵の強さが3倍になるようなことが起き、ステージをクリアするには、新しいカードを引いて最強に育成してから挑むことが必須になる。また、パーティーの組み方や、攻略もパターン化されてしまい取れる行動も制限されてしまう。つまり、インフレによって工夫する余地がなくなり、楽しみにくい状況になっているのです。かといって、ユーザーが購入したキャラクターを簡単に弱体化することもできず、ゲームバランスの調整はできない。インフレによるゲームバランスの崩壊は、RPG要素があるゲームを長期運営する上で、どうしても避けられない問題です」(岩崎氏)

 最近では、インフレ対策のために、ゲーム開始時にゲームバランスを調整するために、ステータスやパラメータの変更に同意することが求められるゲームも登場している。当然ながら、パズドラが今からこのような対策をすることは難しい。

パズドラの終わりはまだ遠い

 では、パズドラはSNSでささやかれるように本当に「オワコン」なのだろうか。現在のパズドラの評価について岩崎氏は語る。

「インフレし続ける現状のゲームシステムに関しては、ある意味オワコンともいえる状況です。ただし、10年以上運営が続くゲームはほとんどないなか、新コンテンツが追加されて、ユーザーが継続して遊べている現状は、『根強い人気がある』といえるでしょう。また、複数のプレイヤー同士で遊ぶタイプのオンラインゲームは、プレイヤーの人数が一定以上減ると急速に人が減り、運営ができなくなることがあります。パズドラは基本的には一人で遊べるゲームなので、急にサービスが終わることはないでしょう。ユーザー数が緩やかに減少し、いずれサービス終了する可能性もありますが、私の感覚ではパズドラがオワコンになる日は遠いと思っています」(岩崎氏)

 サービスが終了するようなゲームは、そもそも知名度がなかったり、多くのプレイヤーに忘れられてしまったりするものも多い。「オワコン」と言われつつも話題に上がっている間は、サービスが終わることはないのかもしれない。

(文=福永太郎/編集者・ライター、協力=岩崎啓眞/ゲームプロデューサー)

岩崎啓眞/ゲームプロデューサー、ゲームライター

岩崎啓眞/ゲームプロデューサー、ゲームライター

「天外魔境Ⅱ 卍MARU」「エメラルドドラゴン」「リンダキューブ」など、まずまずの名作ゲームを手がけてきたゲームプロデューサー。1994年からは「電撃PCエンジン」、「電撃PlayStation」、「電撃王」といった人気ゲーム雑誌でライターを務めてきた。
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Twitter:@snapwith

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