昨年7月、元気が都内・渋谷に出店した「魚べい 渋谷道玄坂店」も回転レーンのない回転寿司店だ。店内にあるのは、注文を受けた寿司を客席に届ける三段重ねの高速レーンだけ。客がタッチパネルで食べたい寿司を注文すると、高速レーンで客席に寿司が届く仕組みだ。厨房には、注文を受けた寿司を原則1分以内で客席に届けるため、シャリ玉を皿に自動的に盛り付ける最新鋭の寿司ロボットも2台設備している。基本的にセルフサービスなので、ピーク時の店員数は約15人。従来店と比べ、店員数を5人削減できたという。同社は、この店をモデルに都心店の拡大を図る。
業界最大手のスシローも、駅ビルやショッピングモールへの小型店出店計画を明らかにしている。
一方、ゼンショーホールディングスが運営する業界4位のはま寿司は、都心回帰に一番積極的といわれる。今期(14年3月期)に新規出店する約80店のうち、半数が都心への出店計画になっている。
はま寿司の都心型店は回転レーンを設置しているが、郊外型店が200席程度あるのに対し、都心型店は120席程度と小型化しているのが特徴。前出とは別の業界関係者は「ゼンショー傘下の牛丼店(すき家)のノウハウを生かし、狭いスペースの厨房を小人数で切り盛りし、営業利益を捻り出しているのが、いかにも同社らしい」と評している。
回転寿司業界の最新動向を追うと、都心で生まれ、郊外で育った業界が、再び都心へ回帰、新たな競争を開始しようとしている流れが見えてくる。
同関係者は「業界再編はあくまで内輪の話だが、都心での競争激化は業界内外に与えるインパクトが強いし、何よりも消費者に対するサービス向上効果も高い」と語るが、まだまだ激しい競争が続きそうな回転寿司業界から、今後も目が離せない。
(文=福井 晋/フリーライター)