また、マグロ、サーモン、エビなど寿司ネタとして人気が高い魚介類の調達量は、企業単位で見ると回転寿司大手は大手スーパーをはるかに上回り、現在は国内最大の需要家といわれる。それに伴い、近年は仲卸業者を飛び越して魚市場で直接買い付けたり、漁船の漁獲物を丸ごと買い上げる「一艘買い」などで水産物流通に影響を及ぼすなど、水産業界に対するバイイングパワーも強まっている。
御三家が急成長した要因としては、次の2点が挙げられる。
1つ目はファミリー層への客層拡大だ。1958年開業の「元禄寿司」を源流とする回転寿司業界は、長い間サラリーマンや学生を主な客層とする都心型のファストフード業態だった。ところが90年代後半から御三家を中心に郊外型ファストフードの「100円寿司」が台頭。当初はドライバーを中心に客層を広げていき、やがてそのドライバーたちが家族連れで寿司を楽しみにやって来る消費行動が広がり、客層がファミリー層に拡大した。
特にくらが00年に子供向けキャラクターグッズなどが当たる「ビッくらポン!!」(同社独自の「皿カウンター回収システム」と連動したゲーム機)を導入してからは、子供を取り込んで親を呼び込むファミリー戦略が主流化し、椅子席が子供連れ客で賑わう現在の「100円寿司業態」が定着した。
2つ目はIT化だ。
外食産業では売上高に占める食材費の割合を原価率としているが、原価率は約30%が常識とされている。ところが御三家をはじめとする100円寿司の原価率は40〜50%にも上っている。食材の強力な価格交渉力をもってしても、売上単価が100円とあまりにも低いため、30%台まで下げられないのだ。そんな中で営業利益を捻り出すために不可欠となったのがIT化だった。
くらの「皿カウンター回収システム」やスシローの「回転すし総合管理システム」はその代表例だ。
90年代後半から導入が始まり、時の流れと共に進化させてきたIT化により、100円寿司は来客の消費行動を把握し、やがて予測することで原価率以外の経費を圧縮、営業利益を捻出してきた。
例えば、7月2日付日本経済新聞記事によれば、ファミリーレストランの場合、原価率30%、人件費30%、販管費35%、営業利益5%となっている。これに対して、100円寿司の比率はそれぞれ45%、25%、20%、5%となっており、IT化によるオペレーションの効率化により、人件費や販管費を削減している様子がうかがえる。また、IT化により他業態の回転寿司との価格競争力を高め、同業界の成長を引っ張ってきたともいえる。
●都心回帰で出店競争激化
このようにして急成長してきた回転寿司業界だが、御三家だけの出店数でも12年度末には1000店を超え、成長を支えてきた郊外の出店余地は急速に狭まり、従来の成長モデルが通用しにくくなってきている。
そこで御三家を含む大手の間で高まっているのが「都心回帰気運」だ。集客密度・効率が郊外より桁違いに高いからだが、その象徴的な業態が、最近増えている「回らない回転寿司」だ。
例えば、かっぱが今年6月に埼玉県越谷市の店を改装して新開店した「かっぱ亭 蒲生店」には、回転寿司店なのに寿司を運ぶ回転レーンがない。客はまずカウンターに並んで寿司を注文し、その寿司を自分でレジに運んで寿司代を払い、その後、テーブル席にまた運んでそこで食べる仕組みだ。従来の「かっぱ寿司」店と異なり回転レーンに常時寿司を流す必要がないため、厨房の人員も半数程度に減らし、握った後の時間経過による寿司廃棄も削減することができる。かっぱは同店舗を、都内駅前など都心に進出するためのノウハウを蓄積する実験店と位置付けているという。