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中学教師、新卒でいきなりクラス担任→激務で休職も…生徒指導や保護者対応も

文=清談社
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「gettyimages」より

 大学を卒業したばかりの新卒1年目の教師が小・中学校に赴任し、充分な研修などを受けないまま、いきなり担任のクラスを持たされるケースがあることが一部で問題視されている。少し前にはある学校教師がSNS上に「1年目で担任ってやっぱしんどすぎる…大学卒業して何もわからないのに、生徒指導、電話対応、事務作業、教材研究、会議、保護者対応ともうすることがたくさんすぎる」とその多忙な境遇を投稿したところ、以下のようにさまざまなコメントが寄せられていた。

「初任者にいきなり担任を持たせ、上手く行かないのを初任者のせいにして責め立てたのでは育たない。もしそれが小学校の常態だとするならばやはり管理職の責任と指導に問題がありますね」

「民間企業なら、数週間から数ヶ月は研修期間で現場には出なかったり、出ても『研修中』の札をぶら下げて見学・サポートに徹します。人件費を削減するためにメチャクチャな仕組みが温存されてますね」

 1年目でいきなり担任を任される教師にかかる負担や、研修やサポートの現状について、元中学校教師のAさんに話を聞いた。

重い部活指導や研究授業の負担

 教師という仕事においては「クラス担任を持って一人前」というイメージがある。1年を通してクラス運営にかかわるため責任も重く、また生徒という人間を相手にするだけに一筋縄でいかないことが起こることも想定される。そんな重要なポジションを、大学を卒業したばかりの新任の教師に任せることが常態化しているという。

「私が見てきたなかでも、初年度で担任を持つというケースはありました。ただ、さすがに投げっぱなしではなくて、指導教員がついてサポートを受けながらという形にはなっていると思います。私も1年目は初任者研修をみっちり受けましたし、指導教員に夜の21時くらいまでアドバイスをいただくような日もありました。ほかにも校外で受ける研修もあるので、時間的には大変でしたが、指導担当の教員や先輩に恵まれて手厚く指導していただいたと思います」(Aさん)

 とはいえ、一般の会社でいえば、初年度の研修と同時に実際の業務も走っているという状況。また、学校には校務分掌と呼ばれる、校内のさまざまな業務を分担する習わしがあり、初年度であればそこに個々の能力や負担が加味されないことが多いので、大きな負荷となってしまうこともありそうだ。

「私の場合は中学校だったので、これに部活指導が加わります。これも担当する競技や、その学校の熱の入れ方によって負担が変わってくると思いますが、土日も部活で潰れることが多いです。ほかにも、研究授業のような学校の代表として発表するようなものは、どちらかというと若手教諭が率先してやることが多いので、この準備も休日返上で行うことが多かったですね」(同)

 クラス担任に加え、これらの多種多様な業務が課せられる。これが初年度に一気にのしかかると、生活ペースも乱れてしまうという悪循環に陥ってしまう。

「社会人1年目で、親元を離れて一人暮らしを始めるというタイミングの方もいます。私の同僚も、新卒で教師になったと同時に実家を離れてアパートで暮らすことになったのですが、いきなり多忙な業務に追われてしまったので、部屋も片付かないし、食事もきちんと取れなくなったりして、体調を崩してしまいました」(同)

人手不足という問題

 体力面だけでなく、メンタルを保つのも大変だという。社会人1年目で、職員だけでなく、生徒やその保護者など多くの人々と向き合わないといけないのは、なかなかハードルが高い。

「保護者の方々への対応は大変そうに思われがちですが、こちらが1年目というのが伝わっているので、それも踏まえて受け入れてくれる面はあるのかなと思います。ただ、生徒たちは、そんな忖度をしてくれないので大変かもしれません。生徒と信頼関係を結ぶということは、1年目だろうが10年目だろうが関係なく、個々に向きあっていくことが重要です。逆にいえば、保護者の方々は基本的に子供の目線を通して意見を言ってくるので、生徒たちとしっかりとした信頼関係ができていれば問題も起きにくいですし、クレームも少なくなるのではないでしょうか」(同)

 とはいえ、体力的、精神的に追い込まれ、休職や退職をしてしまう新卒教師も多いという。教師という職業に憧れがあり、ドラマのようなイメージを持っている人ほど、現実の厳しさに打ちのめされてしまい、心が折れてしまうということもあるようだ。

「確かに、憧れを持って教師になった人は、挫折することもあるかもしれません。なので、もっとほかのことに目を向けたほうがいい。例えば、教師は同年代に比べて年収が高いですし、勤続年数を重ねるほど着実に給料が上がっていきます。福利厚生も恵まれている。そういった条件面にモチベーションを見出して続けるという人が多いかもしれないですね。

 私が教師を辞めようと思ったのは、同じ学校の同僚が倒れて、そのまま退職していったのがきっかけです。その同僚が労災請求をしたこともあり、事実確認みたいなことで私の労働状況も聞かれる機会があって、それに答えているうちに、この仕事は改めて負担が大きいと思ったし、本当にこのままやっていけるんだろうかということを改めて考えたんですよね」(同)

 新卒教師に限らず、職員の悩みや今後のキャリア形成に対して適切なサポートが受けられないケースも多いというが、その大きな要因はやはり人手不足だ。

「サポートに関しては配属された学校によりますが、できるだけ新任への負担は最小限にしようという意識はあると思います。でも、人的リソースが足りないのでサポートしきれずに、休養したり、辞めてしまうということがある。そうなると、新たな人材を採用しなければいけないのですが、その補充もスムーズにいかない。今後の教育現場を考えると少子化という流れは決まっているので、これから人員を増やしていこうという機運がないのだと思います」(同)

 新卒の教師にクラス担任を任せてしまうのも、個々の業務の負荷が大きくなってしまうのも、人手不足ということに尽きる。しかし、もはや成長産業ではない「学校」には人材が集まらず、数少ない若手により負荷がかかってしまうという構造のようだ。

(文=清談社)

清談社

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せいだんしゃ/紙媒体、WEBメディアの企画、編集、原稿執筆などを手がける編集プロダクション。特徴はオフィスに猫が4匹いること。
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