教師の体罰事件を生む「子どものしつけ」の欠如…親が子を叱らないツケが教師に回る
先頃、教師が生徒を怒鳴りながら殴る映像がテレビのニュースで繰り返し流されていた。この種の報道に接するたびに思うことがある。それは、今どきとんでもない教師がいたものだと印象づけるような報道が目立つが、果たしてそうだろうか、ということだ。
私の子どもの頃は学校での体罰は日常茶飯事だったが、今は教育現場での体罰は固く禁じられている。SNSですぐに情報が流れ、マスコミがそれをすぐに嗅ぎつけ執拗に追及する時代ゆえに、学校側は体罰を厳しく禁じている。それにもかかわらず、しょっちゅう体罰事件が表面化する。なぜなのだろうか。
私は、その背景には、子どものしつけや教育における、世の中全体の厳しさの欠如があると考える。
学校の先生は滅多に怒らなくなった
私が生徒の頃、学校には怖い先生がいたものだ。規則違反をしたり、やるべきことを怠ったり、悪ふざけが度を越したりすると、先生から酷く叱られた。先生は怖い存在だった。
だが、今の子どもたちは、先生に対してやさしいイメージをもっている。
2000年前後、私が教育委員会の仕事をしていた頃、中学ではうっかり生徒を叱ると保護者が怒鳴り込んでくるというのが話題になっていた。
「先生が怒鳴ったりするから、うちの子は怖くて学校に行けないって言ってるんです。どうしてくれるんですか!」
「先生からきついことを言われて、うちの子はものすごく傷ついてます。ほめて育てる時代なのに、なんてことしてくれたんですか!」
などといったクレームがくる。そのせいで実際に不登校になるといった事例も頻出し、先生たちは生徒を厳しく指導することができなくなった。
学校現場で生徒の教育にあたっている先生たちと話すと、そうした傾向は近年ますます強まっているようだ。先生たちは、生徒の背後には保護者がいることを常に意識するように管理職から言われ、体罰をしないのはもちろんのこと、厳しいことを言って傷つけないように細心の注意を払っているという。
生徒の側は、どのようにみているのだろうか。
私が、授業に出ている20歳前後の大学生や、通信課程で学ぶ20代の社会人に尋ねたところ、小学校、中学校、高校のいずれにおいても、先生が生徒を怒る姿はほとんど目にしたことはないという。クラスのワルがよほどの悪事をはたらいたときはさすがに怒鳴ることがあったが、そうした特別なケースを除くと、先生が生徒を怒鳴るようなことはほとんどなかったというのだ。