長時間労働に長時間残業、それなのにもかかわらず、賃金額はほぼ一定。時給換算してみたら最低賃金以下だった――。このような、いわゆる「ブラック労働」の問題を、最近よく耳にする。
このブラック労働は、飲食や小売りなどのサービス業に多く見られるが、最近クローズアップされているのは公立学校の教員だ。通常の授業など、教員としての職務に加え、当然のように部活の顧問を担当させられることが、特に問題視されている。しかも、休日に部活指導に従事しても、手当は微々たるもの。顧問となった教員自身の部活経験がなくても顧問を担当させられる。
部活顧問をしている影響で、本来の教員としての職務にも支障を来す上、プライベートも浸食されてしまっているという。なかには100日連続勤務や1年で7日間しか休みがなかったという教員もいる。そんな公立学校の教員職はブラック労働の典型例ともいわれており、現在インターネット上で「教師に部活の顧問をする・しないの選択権をください」という署名活動まで行われているのだ。
そもそも学校の教員が部活の顧問を担当することは、教員としての職務の範囲内なのだろうか。労働問題に詳しい浅野英之弁護士は、次のように話す。
「現在、ほとんどの公立学校において、教員が部活の顧問を担当することが事実上当然とされている状況です。このような状況からすると、部活の顧問を担当することが採用以前から予想できた場合には、部活顧問業務も教員としての職務の範囲内といえるでしょう。とはいえ、学校と教員との間で労働条件の争いとならないよう、学校側としては教員の採用段階で、どの程度の部活顧問業務があるのかを事前に説明しておくべきだと考えられます」(浅野弁護士)
そうだとすると、採用段階で、たとえ教員が部活の顧問を担当したくないと思っていても、採用面接の際に学校からの説明さえあれば、部活の顧問を担当することが当然に教員としての職務の範囲内に含まれてしまうのだろうか。
「どうしても部活の顧問をやりたくない人が、採用面接の際にその旨を学校側に伝え、学校側もそれを了承した上で学校側から部活の顧問を行わない教員として採用されていたという例外的な場合であれば、部活の顧問はその教員の職務の範囲外となります」(同)
とはいえ、こうした特殊なケースが認められる教員はほとんどいないのが実情だろう。部活の顧問を担当することが職務の範囲内であり、学校が教員に対して業務命令として部活の顧問を担当させることはできる場合が多そうだ。