教師の体罰事件を生む「子どものしつけ」の欠如…親が子を叱らないツケが教師に回る
では、生徒が規則違反をしたり、怠けたりしたとき、先生はどうしていたのかと尋ねると、先生は怒ったり叱ったりするのではなく「お話をする」というように表現する学生がいた。穏やかに諭すという意味だろう。
20歳前後の大学生253名、および30代から60代の社会人学生91名を対象として、私が3年ほど前に実施した調査からも、先生たちが叱らなくなっていることがわかる。
小学校時代に先生からよくほめられたという者は、大学生では53%なのに対して、30代以上では37%と大きな差がみられた。よく叱られたという者も、大学生では25%なのに対して、30代以上では42%と大差がみられた。中学校時代や高校時代に関しても、まったく同様の傾向がみられた。
学校の先生は、明らかにほめることが多くなり、叱ることが少なくなっている。
しつけられていない生徒たち
穏やかに諭して、その真意を理解して反省し、自らの行動を修正できる生徒はよいが、それができない生徒も少なくないのではないか。
そもそも学校教育以前に、家庭で厳しくしつけられていない子どもが増えている。人間というのは、どうしても安易なほうに流されやすい。「ほめて育てる」「叱らない子育て」というものが推奨されるようになって、子どもをほめるばかりで叱らない親が増えた。そのため、社会性を注入されないまま学校に通うようになる。そのツケが教師に回ってくるわけだ。
今の子どもや若者を見ていて感じるのは、衝動コントロール力の低さである。嫌なことがあれば気持ちが沈んだり、腹が立ったりするのは誰にもあることだが、沈んだまま「心が折れた」といって立ち直れなかったり、堪えることができずにキレたりする。
たとえば、小学校に入った途端に適応できずに問題を起こす生徒が非常に多くなっているが、小学生の暴力行為が急増しているところにも、衝動コントロール力の低さがあらわれている。
文部科学省による2016年度の調査をみると、教育機関における生徒の暴力行為の発生件数は、5万9457件で、その内訳は小学校2万2847件、中学校3万148件、高校6462件となっており、中学校が最も多いものの、小学校は高校の3.5倍にものぼる。