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バーガーキングとKFC、4割値下げに困惑の声も…逆に定価の割高さが際立つ

文=Business Journal編集部、協力=江間正和/東京未来倶楽部(株)代
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バーガーキングのHPより

 バーガーキングとケンタッキーフライドチキン(KFC)が40%もの大幅値下げを期間限定で実施する。SNS上では歓喜の声が広がる一方、そもそもの通常価格が割高なのではないかという声や、通常価格では買わなくなるといった声もあがっている。そのような反応も予測されるなか、なぜ両チェーンはあえて大幅値下げに踏み切ったのか。また、飲食店にとって値下げ販売の判断は難しいものなのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。

 外食チェーンが期間限定で値下げを行う事例は珍しくない。最近では、とんかつチェーン「かつや」が先月7日~10日の4日間限定で毎年恒例の「年末感謝祭」を展開し、「カツ丼(竹)」(通常時は759円/税込み、以下同)、「ソースカツ丼(竹)」(同759円)、「ロースカツ定食」(同792円)、「カツカレー(竹)」(957円)をいずれも605円で提供。店外にまで行列ができるほど客が殺到し、常連客を中心として「混雑しすぎて店に入れない」という声もネット上にあふれた。また、ハンバーガーチェーンのマクドナルドは先月20~25日、通常価格1420円の「チキンマックナゲット 30ピース」を470円引きとなる950円で販売していた。

 そして今話題になっているのが、バーガーキングとKFCのキャンペーンだ。両チェーンといえばともに根強いファンを獲得していることでも知られる。

「相対的な価格妥当性は、バーガーキングの商品はマクドナルドに比べて高い印象を受けます。ワッパーJr.を実食しましたが、具材の多さを感じました。咀嚼していて楽しいです。コスパ面でも、バーガーキングはセットやクーポンなどを活用すれば実売価格はお得になります」(重盛高雄/フードアナリスト、6月25日付当サイト記事より)

 また、KFCについて外食チェーン関係者はいう。

「あの絶妙なスパイスとハーブの配合、圧力鍋で長時間かけて揚げるがゆえの『しっとり』だけどカラっとした仕上がりは、KFCでしか味わえないクオリティといえる。『オリジナルチキン』をはじめ各商品がここ数年は徐々に値上げされているが、それでも固定ファンが逃げていない」 

 バーガーキングは1月12~18日、通常価格530円の「ベーコンチーズワッパーJr.」と「クアトロチーズワッパー Jr.」について、2個で600円の新春初売りキャンペーン「初売チーズバーガーズ」を実施(各1個ずつの組み合わせも可)。積み上げ価格ベースで460円の値引きとなる。ちなみにドリンク(M)、フレンチフライ(M)付きのセットは900円。

「ベーコンチーズワッパーJr.」は直火焼きの100%ビーフパティに野菜、チェダーチーズスライス、ベーコンをバンズに挟んだもの。「クアトロチーズワッパー Jr.」はベーコンの代わりにゴーダチーズ、モッツァレラチーズ、レッドチェダーチーズの3種類をブレンドしたシュレッドチーズを使用した特製チーズソースを使用したものだ。

 外食チェーン関係者はいう。

「一商品あたりの重量と通常価格でみると、『クアトロチーズワッパー』は304gで790円、その小さいサイズ版の『クアトロチーズワッパー Jr.』は161gで530円。通常サイズはJr.より量がざっくり2倍で価格は約1.5倍なので、通常版のほうがお得。一方、今回のキャンペーンでJr.を2個買うと600円で合計重量は322gとなり、Jr.2個買いのほうがお得だが、『通常価格だとJr.を買うのは結構割高』ということが改めて認識される」

 また、KFCは1月10日~2月13日の間、 「オリジナルチキン」3ピースと「カーネルクリスピー」2ピースのパックを890円で販売。積み上げ価格1510円のところ620円もお得となる。ちなみにKFCは昨年10~11月、「ファン感謝祭パック」として以下内容のパックを発売。

・「ファン感謝祭パックA」990円(積上げ価格1510円)
  オリジナルチキン3ピース、カーネルクリスピー2ピース

・「ファン感謝祭パックB」1590円(積上げ価格2420円)
  オリジナルチキン5ピース、カーネルクリスピー3ピース

・「ファン感謝祭パックC」1980円(積上げ価格3020円)
  オリジナルチキン6ピース、カーネルクリスピー4ピース

 最大で520円もの大幅値下げを敢行したものの、通常だと「オリジナルチキン」3ピース、「カーネルクリスピー」2ピースで1510円にも上るとして、SNS上では「ファミチキでいい」「ハンバーガー食べたほうがいい」といった声も寄せられる事態となっていた。

<元々が高く見える>

 そんな両チェーンのお得なキャンペーンに対し、SNS上では素直に「うれしい」とする声があがる一方、以下のように困惑の声も続出している。

【バーガーキングについて】
<2つで1000円するんか>
<元々が高く見える>
<Jr.2個割引って割高なJr.を普通のワッパー程度の値段に引き下げるくらいの割引率しかない>
<バーキンのよさってあのちゃんとしたワッパーの大きさと香りやと思うのに なぜかJr.ばっか常時セールするっていう>
<普段どれだけぼったくってるかって話>

【KFCについて】
<定価が高すぎる>
<コンビニのチキンより割高>
<クリスピーが売れんから抱き合わせなのか>
<オリジナルチキンだけでいい>
<クリスピー2個の値段を安くして>

 値引きキャンペーンが消費者から好評を得る一方で、通常価格が割高であるとのイメージが広まってしまう結果ともなっているが、そのようなリスクが予測されながらも、なぜ大幅値下げに踏み切ったのか。自身でも飲食店経営を手掛ける飲食プロデューサーで東京未来倶楽部(株)代表の江間正和氏に解説してもらった。

きちんと利益を確保する戦略

 飲食店の値下げには、いろいろな思惑や戦略があるものです。40%値下げのように思い切ったキャンペーンを打つことによって、マスコミやSNSで話題になり広告効果を発揮します。今回のKFCの値下げは、全商品が40%オフというわけではありません。オリジナルチキン3個とカーネルクリスピー2個のセットが単品積み上げ価格1510円のところ、40%値下げで890円となっています。たしかにお得なのは間違いありませんが、見方を変えれば「オリジナルチキンを3つ買ってくれた人にはクリスピーを2つおまけ」みたいなものともいえます。バーガーキングのキャンペーンも、デリバリーピザを店頭受け取りにすると「もう1枚サービス」になるかたちと似ています。

 店側とすれば、このような値引きキャンペーンを呼び水に来店客を増やし、他の商品の注文や追加注文も期待できます。特にファストフード店の場合、原価率の低いドリンクやサイドメニューが売れると儲かります。普段からセットにして割引きをしているのは、そのほうが単価も上がり利益が出るからです。

 以前、「この料理は原価率100%」といったPRをするお店が流行ったことがありましたが、他の料理やお通しやドリンクなど、その他の商品の売上も考慮してトータルで利益を確保する戦略です。飲食店の飲み放題も単品の金額の積み上げよりもお得感がありますが、一定以上の単価を確保してちゃんと利益を確保する戦略となっています。

 このように「安く見せる」ことが大事で、それにより来店したお客に他の商品も買わせたり、一定の客単価を確保したりし、薄利多売で結果として利益を確保することを飲食店は意識して値引きキャンペーンを組み立てます。お客が来なければ売上も利益も上がりませんが、キャンペーン商品の購入だけでも多少なりとも利益は残ります。特にテイクアウト商品を扱う業態はなおさらです。イートインについては利益が少ないお客だけで店内を埋め尽くされ、単価の高いお客を逃がしてしまうと、キャンペーンをしないほうがよかったということもありますが、テイクアウトについては売れたら売れた分だけ利益が積みあがっていきます。

 今回、KFCとバーガーキングがあえて大幅値下げに踏み切ったのは、年が明けて少したち消費活動が落ち着く時期ですので、何かキャンペーンを打たなくてはと思ったのでしょう。消費者はキャンペーンや話題性のあるものに反応します。裏を返せば、キャンペーンを展開する店にお客を取られてしまうと同業他社の売上は落ちるので、率先してキャンペーンを打たなければなりません。飲食店は「今だけ食べられる魅力的な商品」をPRできればいいのですが、チェーン店の場合はオペレーションやコスト的に、そう簡単にはいかないので、値下げキャンペーンになりがちです。

 値下げキャンペーンを乱発すると通常料金で売れなくなるリスクもあるので注意が必要ですが、値下げはお客にダイレクトに響くものでもあります。私のコンサル業の経験としては、街場の個人店には安易な値下げキャンペーンはお勧めしませんが、日常使いのチェーン店でしたら値下げキャンペーンも選択肢の1つだと思います。デメリットよりもメリットのほうが大きいと判断した時や、損益的に許容範囲に収まると判断した時には行ってよいですが、それが正しかったのかどうかは、そのときのお客の行動次第といえるでしょう。キャンペーンによってお客が増える場合も増えない場合もありますが、絶えず「次の機会」を提案していくことが大事です。

(文=Business Journal編集部、協力=江間正和/東京未来倶楽部(株)代表)

江間正和/飲食プロデューサー、東京未来倶楽部(株)代表

江間正和/飲食プロデューサー、東京未来倶楽部(株)代表

東京未来倶楽部(株)代表
5年間大手信託銀行のファンドマネージャーとして勤務後、1998年独立。14年間、夜は直営店(新宿20坪30席)ダイニングバーの現場に出続けながら、昼間、プロデューサー・コンサル業。コンサル先の増加と好業績先の次の展開のため、2012年5月からプロデューサー・コンサル業に専念。
「数字(経営者側)と現場(スタッフ・オペレーション)の融合」「各種アイデア・提案」が得意。また、現場とのメニュー開発等、自称<「実践」料理研究家>。
・著書:『ランチは儲からない、飲み放題は儲かる』『とりあえず生!が儲かるワケ』『ド素人OLが飲食店を開業しちゃダメですか?』

Instagram:@masakazuema

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