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スタバ、深夜デリバリー開始…午前5時までフラペチーノやフードも、課題も

文=Business Journal編集部、協力=堀部太一/外食・フードデリバリーコンサルタント
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スターバックス コーヒー ジャパンの公式サイトより

 大手カフェチェーン「スターバックス」が深夜デリバリーを実施している。一般的なコーヒーのほか、コールドドリンクやフラペチーノ、フードなども注文可能。アメリカのペンシルベニア州フィラデルフィアで試行的に行っているものだが、日本でも実現される可能性はあるのか。専門家の見解を交えながら追ってみたい。

 世界で3万店以上を展開するスターバックス。日本ではスターバックス コーヒー ジャパンが約1900店舗を展開。1996年に東京・銀座に日本1号店をオープンし、その後は一貫して拡大路線を取り、2015年には47都道府県への出店を達成。すでに店舗数ではドトールコーヒーショップを抜き去り、現在では国内カフェチェーン業界2位で約1100店舗のドトールを大きく引き離し、圧倒的な首位の座を築いている。ちなみに店舗数ベースでみると、コメダ珈琲店が3位、タリーズコーヒーが4位、サンマルクカフェが5位となっている。

 スターバックスといえば、他のカフェチェーンと比較して割高な価格設定で知られる。人気のフラペチーノをみてみると、レギュラーメニューは「コーヒー フラペチーノ」が515円(税込み/Tallサイズ、以下同)、「キャラメル フラペチーノ」が575円、「抹茶 クリーム フラペチーノ」が590円、「マンゴー パッション ティー フラペチーノ」が575円。期間限定メニューは「ルージュ オペラ フラペチーノ」が790円、「ジョイフルメドレー ティー ラテ フラペチーノ」が790円。またフードは「チョコレートケーキ」が520円、「ハム&マリボーチーズ 石窯フィローネ」が480円、「クラブハウスサンド 石窯カンパーニュ」は570円となっている。

「オリジナルグッズやコンビニエンスストア、スーパーなど小売店向けの市販品の販売にも力を入れており、タンブラー類は4000円以上のものも豊富で、市販品も他社の類似商品より高めの価格設定。値崩れが起きておらず、ブランド力維持に成功している。ビジネス展開の巧妙さという点では、他のカフェチェーンとは完全に一線を画している」(外食チェーン関係者)

 実際にスターバックス コーヒー ジャパンの売上高は高い。2022年9月期の売上高は2539億円であり、ドトール・日レスホールディングスの23年2月期決算の売上高754億7900万円(ドトールコーヒーグループ)の3倍以上となっている。

「スタバの売上を押し上げているのは、フラペチーノなど単価の高いコールドドリンクやラテなど、ドリップコーヒー以外のドリンクだ。特にフラペチーノは毎月のように投入している高単価の期間限定商品が売れている。もともとスタバは本格的なエスプレッソコーヒーを手軽に飲める業態を目指して誕生したチェーンで、創業者のハワード・シュルツ氏は当初、フラペチーノを扱うことに反対だったというエピソードは有名だが、今日ではフラペチーノがキラーコンテンツとして業績に大きく貢献している。実際に日本のスタバ店舗では普通のドリップコーヒーを飲んでいる人は意外と少なく、特に若者層の女性はスタバをコーヒーショップというよりフラペチーノや甘いドリンクなどをスイーツ感覚で楽しむ店と認識しているようにもみえる」(外食チェーン関係者)

 こうした傾向は米国でも同様なようで、23年8月3日付「BUSINESS INSIDER」記事によれば、ドリンクの売上の75%をコールドドリンクが占め、60%がカスタマイズ注文だという。

コストを補うほどの売上は立たない

 そんなスターバックスが米国で深夜デリバリーを試行的に行っているという。食品配達サービスを手掛けるGopuff(ゴーパフ)が昨年10月に出したニュースリリースによれば、顧客から注文を受けるとゴーパフの物流センター内にいる、スターバックスでトレーニングを受けたバリスタがドリンクやフードをつくり、注文から30分以内で商品を届けるという。対象エリアはフィラデルフィア限定。2月9日付「BUSINESS INSIDER」記事によれば、配達時間は午後5時~午前5時までだという。

 外食・フードデリバリーコンサルタントの堀部太一氏はいう。

「スタバにとっては、夜間帯の売上の底上げや、フードのセット注文の増加による客単価の上昇が見込める。ただ、米国の事例は、あくまでデリバリープラットフォーマー側が主体となって進めているものとみられ、スタバでトレーニングを受けたスタッフがデリバリーサービス事業者の拠点で商品をつくり、その事業者が配達を担うため、スタバ側のリスクは少ない。スタバが深夜デリバリーに力を入れているというわけではないだろう」

 気になるのは日本でもスタバによる深夜デリバリーが提供されるかどうかだが、堀部氏はいう。

「可能性はかなり低いと考えられる。飲食業界では『21時の壁』といわれているように、コロナ禍の影響もあり、消費者が飲食をする時間帯が早まる傾向が進んでおり、飲食店は21時以降の遅い時間帯に集客しづらい状況になっている。また、日本はUber Eatsや出前館などデリバリーサービスの配達員に支払う手数料が高く、自社で直接デリバリー要員を雇用するという形態も、深夜の割増賃金も含めて高い人件費がかかる。よって、注文が多く入るとは考えにくい深夜帯に、デリバリー対応のために水道・光熱費、人件費などの運営コストをかけて店舗を営業しても、そのコストを補うほどの売上は立たないだろう」

日本で実現する可能性は低い?

 外食チェーン関係者はいう。

「ファストフードやファミリーレストランのチェーンでも、自前でデリバリーサービスを提供するのは22~23時頃まで。マクドナルドや牛丼チェーンなどの24時間営業の店舗の配達エリア内であれば、Uber Eatsを使って深夜に商品を取り寄せることは可能だが、Uber Eatsも24時間対応している都市は一部であり、くわえて注文したいタイミングで稼働している配達員が付近にいるということが条件になってくる。スタバは24時間営業を行っておらず、東京・六本木などに24時まで営業している店舗はあるものの、数は少ない。もしやるとすれば、最近増えている宅配専用拠点のゴーストレストランを設けて24時間、注文を受け付けるという形態が考えられるが、それでも自前で配達員を確保するのは採算が合わないので、やるにしてもUber Eatsや出前館を利用することになるだろう。もっとも、深夜の2時や3時にスタバの商品をデリバリーしようと考える人は少ないだろうから、いずれにしても採算が合わないと予想され、日本で実現する可能性は低いのでは」

 また、別の外食チェーン関係者はいう。

「スタバの普通のドリップコーヒーやフード類にそれほど特徴があるとはいえず、これらをデリバリーまで使って取り寄せたいという人は多くはないだろう。一方、人気の季節モノのフラペチーノなどは上部にトッピングが乗ったりしており、形を崩さないまま、そして冷えたままの状態で配達できるのかが課題。形が崩れた状態で顧客の手元に届くようなことが増えれば、ブランドのイメージにも響いてくる。スタバは22~23時頃まで営業している店舗も多く、Uber Eatsなどを利用すれば現在でも結構遅い時間までデリバリー注文は可能。もし仮に深夜デリバリーが実現するとすれば、富裕層の多い東京の港区など、ごく限られたエリアで実験的に行われるというかたちだろう」

堀部太一/外食・フードデリバリーコンサルタント

堀部太一/外食・フードデリバリーコンサルタント

関西学院大学卒業後、船井総研に入社しフード部のマネージャー職を勤めその後事業承継と起業。直営では外食8店舗・中食4業態を運営しつつ、月20数社の飲食企業を経営サポート。事業規模は年商2,000万〜1兆円企業まで幅広いです。外食/フードデリバリーが専門領域。

Twitter:@horibe0110

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