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苦境の「いきなり!ステーキ」430円の値上げ、開業当初の2倍に…コスパ低下

文=Business Journal編集部、協力=江間正和/東京未来倶楽部(株)代表
苦境の「いきなり!ステーキ」430円の値上げ、開業当初の2倍に…コスパ低下の画像1
いきなり!ステーキの店舗(「Wikipedia」より)

 立ち食いステーキチェーン「いきなり!ステーキ」がウリだったオーダーカットを廃止し、値上げを行う。厳選した米国産牛肉の使用にこだわってきたが、一部メニューに使用する牛肉を豪州産のものに切り替える。一時のブームが去り客数減に伴う厳しい経営が続くなか、相次ぐ値上げで価格競争力が低下している同チェーンは、なぜ大きな特徴の一つだったオーダーカットをやめるのか。また、他のステーキチェーンやファミリーレストランも数多く存在するなか、コスパなどや質などを勘案すると行くに値する価値があるといえるのか。業界関係者の見解を交えて追ってみたい。

 2013年12月に東京・銀座に1号店をオープンした「いきなり!ステーキ」は、高価格帯メニューのステーキを割安な価格、立ち食いスタイルで提供する点などが注目され、瞬く間に店舗網を拡大。一時は490店(2019年12月末)まで店舗網を拡大させた。

 質へのこだわりも強く、厳選した米国牛肉を使用し、「ワイルドステーキ」には米国農務省が認定した認定アンガスビーフCABを使用。大きなブロック肉を店舗で下処理・カットし、 焼き台内部には「桜島の溶岩」を取り入れ、溶岩の遠赤外線の力で肉の旨味を逃さないように焼いている。

 ブーム的な人気を博したものの、18年頃から既存店客数が前年同月比マイナスとなる月が続き、運営会社ペッパーフードサービスの同年12月期決算は最終赤字に転落。20年には100店以上の一斉閉店と200人の希望退職募集を発表したが、20年12月期まで3期連続で最終赤字に。22~23年12月期も2期連続で最終赤字となっている。現在の店舗数はピーク時の約4割、184店舗にまで減っている(24年2月現在)。

 もっとも、「いきなり!ステーキ」事業単体では、不採算店舗の閉店を進めたことで黒字を維持している。

上がり続けてきた価格

 原材料価格・エネルギーコストの上昇を受けて外食業界で値上げが進むなか、「いきなり!ステーキ」もここ数年は相次いで値上げを行ってきた。20年12月、21年12月、22年11月、23年10月と年1回のペースで値上げを重ね、今月3日からの値上げでは「ワイルドステーキ」150gを1240円(税込)から1390円へ、「赤身!肩ロースステーキ」150gを1090円から1180円へ、「特選ヒレステーキ」150gを2100円から2320円へ、「ランチワイルドステーキ」150gを1390円から1560円へ値上げした。もっとも値上げ幅が大きいのは「特選ヒレステーキ」300gで、4200円から4630円へ430円の値上げとなっている。

 13年のオープン当初の価格と比べると、上昇幅の大きさが際立つ。たとえば「リブロースステーキ」300gは税抜き換算で1500円だったが、現在では3273円と約2.2倍に。「ヒレステーキ」300gは2400円だったが、現在では4209円と約1.8倍になっている。

 ちなみに競合業態の牛ステーキメニューと比較してみると、ステーキチェーンの「ブロンコビリー」で最安値の「炭焼きサーロインステーキ」150gは1848円(税込)で、「いきなり!ステーキ」で最安値の「赤身!肩ロースステーキ」150gは1180円、主力の「ワイルドステーキ」150gは1390円。「びっくりドンキー」の「コロコロステーキ」は1700円(首都圏)、ファミリーレストランチェーン「ガスト」の「サーロインステーキ」は1600円となっている。自身でも飲食店経営を手掛ける飲食プロデューサーで東京未来倶楽部(株)代表の江間正和氏はいう。

「一部商品の価格改定によって、他店との差別化が薄れつつあります。『いきなり!ステーキへ行こう』という動機が低下し、必要とする人が減少すると、店舗を存続することがより厳しくなってしまいます。最大のウリであった『ファミレスやステーキハウスチェーンと比べて安い』という優位性も、昨今の値上げにより薄れつつあります。ただし、原材料価格や人件費、エネルギー価格などの上昇は他店にも影響を及ぼしますので、他店が値上げに踏み切れば価格優位性はある程度維持できるかもしれません。ここは我慢比べでもあります。この我慢比べに耐えられる体力を残すためにも、人件費や仕入れる材料費を中心に総合的な経費抑制、合理化が大切ですので、今回の価格改定に合わせて各種変更にも踏み切ったのでしょう。

 商売にはオリジナル性であるウリが必要です。『他ではなく、そこへ行く理由』『そこで買う理由』が必要です。自分たちに残されたウリは何なんだろうと真剣に考え、お客さんがそれを感じ取ることができないと終わってしまいます。経費削減や価格の見直しも大切ですが、それは他店でも行っていることです。いきなり!ステーキが自分たちのウリを確認しながら、この先、メニューや企画など各種提案をしてくれることを期待したいと思います」

 外食チェーン関係者はいう。

「『いきなり!ステーキ』はオープン当初『安くステーキを食べられる』という評判が広まってブームとなったが、当時の客単価は2000円ほどとみられ、実はそれほど安くはなかった。実質賃金の値下がりで消費者のコスパ意識がより強まるなかで、『立ち食い・ファストフード形態の店で一食2000円というのはちょっと高いよね』ということで客離れが生じた。

 実際にコスパという面では優位性があるとはいいがたい。たとえば『ワイルドステーキ』150gに450円の『いきなりセット』(ライス・サラダ・スープ)をつけると1840円となるが、プラス約900円出せば『焼肉きんぐ』で牛・豚・鶏の焼肉に海鮮、野菜、デザートもついた食べ放題をゆっくりと楽しむことができ、業態として厳しい戦いを強いられる面は否めない。

 もっとも、直近の決算(23年12月期)をみてみると、『いきなり!ステーキ』単体では不採算店舗の閉店やマイレージアプリの改定、メニュー改定など地道な取り組みが功を奏して8億円以上の利益が出ている。多少高くても“さっと”ステーキを食べたいという客は一定数いるだろうから、今回の値上げで客離れが起きなければ、経営的にはひとまず落ち着くかもしれない」

オーダーカット廃止

 注目されているのが、「いきなり!ステーキ」がその代名詞でもあったオーダーカットを廃止することだ。その理由はなんなのか。前出・江間氏はいう。

「HP上では、原材料価格や人件費、エネルギー価格などの上昇のためと説明していますが、人件費の部分が大きいと思います。オーダーカットというパフォーマンスを維持するためには、カットを行うスタッフの教育と経験の積み重ねが必要です。昨今の人手不足や時給上昇によって、その部分に対する支出や人材確保が苦しくなってきたのでしょう。合理化・人件費抑制のためにオペレーションの効率化をはかったのでしょう」

 外食チェーン関係者はいう。

「すでに150g、200g、300g、450gというかたちで価格が設定されており、単純にオーダーカットでこれ以上細かく重量を指定して注文する客が少なかったのでやめた、ということだろう。なので、実質的にオペレーション上はあまり変化はない」

 一部メニューで米国産牛肉を豪州産に切り替えることで、ステーキの質は変わるのか。

「これも経費削減の一環です。もちろん、豪州産というだけですべて米国産よりも安くなる、味が劣るというわけではありません。スーパーでも豪州産の牛ステーキ肉が売っていますが、米国産よりも安くておいしいものもあります。取引先業者、部位、取引ロット、品質などによりますが、一般的に価格については豪州産のほうが米国産より安いです。経費削減=材料費の見直しにおいては、現在の取引先業者の米国産価格と豪州産価格を比較しながら、他業者の見積もりとも比較します。価格や品質を比較し、試食を行い、納得すれば材料の変更となります。ですので、いきなり!ステーキとしても客離れを起こさないであろう範囲で材料変更をしているはずですが、味の感じ方についてはお客さん次第でしょう」(江間氏)

 外食チェーン関係者はいう。

「昨年から米国産牛肉の価格が目立って上昇しているため、より安価な豪州産に切り替えたということだろう。要は買い付け段階でどれだけ厳選するかが重要なので、そこで手を抜いていなければ、米国産か豪州産かで大きな質の違いはない」

(文=Business Journal編集部、協力=江間正和/東京未来倶楽部(株)代表)

江間正和/飲食プロデューサー、東京未来倶楽部(株)代表

江間正和/飲食プロデューサー、東京未来倶楽部(株)代表

東京未来倶楽部(株)代表
5年間大手信託銀行のファンドマネージャーとして勤務後、1998年独立。14年間、夜は直営店(新宿20坪30席)ダイニングバーの現場に出続けながら、昼間、プロデューサー・コンサル業。コンサル先の増加と好業績先の次の展開のため、2012年5月からプロデューサー・コンサル業に専念。
「数字(経営者側)と現場(スタッフ・オペレーション)の融合」「各種アイデア・提案」が得意。また、現場とのメニュー開発等、自称<「実践」料理研究家>。
・著書:『ランチは儲からない、飲み放題は儲かる』『とりあえず生!が儲かるワケ』『ド素人OLが飲食店を開業しちゃダメですか?』

Instagram:@masakazuema

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