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斎藤知事パワハラで露呈、県庁・市役所に就職は禁物?地方公務員の悲惨な実態

文=Business Journal編集部
斎藤知事パワハラで露呈、県庁・市役所に就職は禁物?地方公務員の悲惨な実態の画像1
斎藤元彦・兵庫県知事のInstagramアカウントより

 斎藤元彦知事によるパワハラ問題に揺れる兵庫県庁。19日には兵庫県議会で斎藤知事に対する不信任決議案が全会一致で可決され、20~21日にかけて斎藤知事はNHK・民放各局のテレビ番組に出演して釈明や知事としての実績のアピールを行っているが、知事をはじめとする県幹部による職員へのパワハラやコンプライアンスを無視した行為が次々と明らかになり、地方公務員が勤める都道府県や市役所などの地方自治体は“ブラックな職場”なのではないかという見方も広まっている。その実態について元・現役公務員などの見解も交えて追ってみたい。

 2021年に改革派知事として兵庫県知事に就任した斎藤氏への風当たりが強くなり始めたのは今年3月。県の西播磨県民局長(当時)が斎藤知事のパワハラや出張先などでの贈答品の受領などを告発。局長は4月には県の公益通報制度を利用して内部通報したが、県から公益通報の保護対象とされず、停職3カ月の懲戒処分を受け、7月に亡くなった。自殺の可能性が高いとみられている。懲戒処分が出る過程では、斎藤知事は職員から処分については公益通報窓口の調査結果が出るまで待つべきとの見解を示されたが、人事担当部門に公益通報の結果を待たずに処分できないかを弁護士に確認するよう指示し、最終的には局長の告発行為を誹謗中傷と認定し、調査結果を待たずに処分を決めたことが明らかとなっている。

 このほかにも、県議会が設置した調査特別委員会(百条委員会)が県職員へ行ったアンケート結果などにより、以下の斎藤知事による職員へのパワハラ行為や問題行為が疑われている。

・公用車で出張先を訪れた際、エントランスから約20メートル離れたところで停車し歩かされたことを理由に職員を怒鳴った。

・職員らを前に机を叩いて激高したり、幹部などに対してチャットで深夜や休日に業務指示を出していた。

・会議が開かれたホテルで急遽、事前申込制のレストランで夕食をとりたいと職員に言い、断られたことを伝えられると「俺は知事だぞ」と激怒した。

・配布資料やチラシなどに自身の顔写真やメッセージが掲載されていないと叱責した。

・出張先でお土産を要求して持ち帰ったり、民間企業から贈答品を受領していた。県職員が土産に用意されたカニの受領を拒否した際、斎藤知事はそれを持って帰ったこともあった。

・出張先で撮影した自身の写真の写りが悪いと怒鳴った

・職員にモノを投げつけた。

・エレベーター前で待たされると機嫌が悪くなったり、目の前でエレベーターの扉が閉まって乗り損ねたりすると、職員に「お前はエレベーターのボタンも押せないのか」などと怒鳴りつけた。

・公用車で移動中に気に入らないことがあった際、助手席のシートを後部座席から蹴った。

・県の旅費規定を超える宿泊料の高級旅館に宿泊していた。

コンプラが率先して重視されるべきはずの役所が無法地帯化

 なかでも問題視されているのが、前述の県の公益通報制度を利用して通報した西播磨県民局長(当時)への対応だ。公益通報者保護法では通報者への不利益な扱いは禁じられているが、斎藤知事は保護の対象にならないとして局長の懲戒処分を決断。3月には片山安孝元副知事が元局長への事情聴取を行い、

「俺の悪口もよう書いてあったけど。勤務中にやっとったんちゃうんかい。どないやねん」

「名前が出てきた者は、一斉に嫌疑かけて調べなしゃあないからな。 いろいろメールのなかで名前出てきた者は、みんな在職しとるということだけ忘れんとってくれよな。手始めに●●(編注:職員の名前)あたり危ない思うとんやけどな」

などと詰問していたことも判明している。

 県議会は百条委員会を設置し、斎藤知事への証人尋問も行われたが、斎藤知事は元局長への処分について「手続きに瑕疵はない」と主張しており、一貫して辞意を否定。今月19日には県議会の各会派などが提出した知事の不信任決議案が全会一致で可決された。斎藤知事は辞職するか、10日以内に県議会を解散するかを判断する。

 数年前に地方の市役所を退職した男性はいう。

「とにかく上司のパワハラがひどく、企業であれば典型的なブラック企業だった。職員は定年まで働こうと考えている人が大半で、波風を立てないことを最優先にするので、パワハラが存在しても誰も事実を認めようとせず“ないもの”とされる。その上の上司や人事部に相談しても埒が明かないのは明白だったので、辞めるほかなかった。有給休暇も認められにくく、いちいち理由を聞かれる。なぜコンプラが率先して重視されるべきはずの役所が無法地帯になってしまっているのか、まったく理解できない」

 地方の県職員の男性はいう。

「県庁という狭い世界で大半の職員が定年まで働き、かつ成果主義ではなく年功序列なので、パワハラがまかり通りやすい土壌があるのは確かだ。民間企業であれば高い成果を上げれば出世したり給料が上がり、逆に成果が低ければ出世できず給料が上がらないが、県庁の仕事内容は基本的にはルーティン業務なので、成果というものを評価しにくい。結果、評価は上司の考え次第となる。組織としても個人としても利益をあげる必要がないので、現状を改善しようという動機が生じにくく現状維持となるので、いつまで古い体質のままとなる。定年までずっと同じ人たちに囲まれて仕事をしていくゆえの息苦しさもあるし、近年では地方でも民間企業のほうが給料が高かったりするので、個人的には就職先としてはお薦めしない」
 

待遇面の魅力が低下

 かつては地方公務員は比較的給与水準が高く安定している職業だとして人気が高かったが、近年では志望者は減少傾向にある。総務省の発表によれば、2022年度の地方公務員の採用試験の倍率は5.2倍と、過去30年間で最低となった。

「人手不足で広い業界で給与が上昇し、以前は賃金が低い傾向があった建設業や小売業なども上昇傾向にあり、相対的に地方公務員の待遇面の魅力は低下している。このほか、地方公務員という仕事に将来的なキャリアアップのイメージを描けない若者が増えたという要因も大きいだろう。SNSや口コミサイトの普及などで地方公務員の実態が広く知られるようになり、純粋に職業として魅力を感じられなくなった。転職も難しく、キャリアアップに敏感な若者が『いったん地方公務員になると一生、地方公務員』という生き方に危うさを感じるのは当然だろう」(地方の県職員の男性)

 当サイトは2024年1月28日付『スーパー店長から市役所職員に転職したら地獄…地方公務員、なぜ不人気の職業に』で地方公務員の労働環境について報じていたが、以下に再掲載する。

――以下、再掲載――

 スーパーの店長から市役所職員に転職したという人が、SNSに「年収が450万円に下がった」「サービス残業が多い」「有給休暇を取りにくい」「仕事がつまらない」などと投稿し、一部で話題を呼んでいる。投稿内容の当否はともかく、地方公務員には、地元では給与水準が高く、残業代もきちんと支払われ、有給休暇も民間企業に比べて取得しやすいなど処遇に恵まれているイメージがあるのではないだろうか。

 確かに給与水準は高い。総務省の「令和4年度地方公務員給与の実態」によると、地方公務員(一般行政職)の平均年収は約637万円。民間企業の平均年収458万円(令和4年度・国税庁調査)に比べて約179万円高い。地元に本社を置く事業体のなかでは、銀行、新聞社、テレビ局、電力会社などに準ずる水準だろう。

 行政学が専門の神戸学院大学・中野雅至教授は、地方公務員の処遇をどう見ているのだろうか。中野氏は大和郡山市職員を経て労働省(当時)に入省し、新潟県庁総合政策部情報政策課課長などを務めたキャリアを持つ。

「もともと地方には雇用の場が少ないので地方公務員は良い就職先で、Uターンしてくる人にとっても地方公務員は人気の高い就職先である。地方に行けば行くほど、社会的地位、身分保証、給与水準の3つが揃っている職業は公務員しかなく、しかも市町村職員は県庁職員と違って単身赴任が少ない。身分保障は国家公務員法や地方公務員法に定められているので安定志向の人にとっては魅力だ」

 昭和の時代から振り返ると、公務員の就職人気は民間企業の雇用情勢と大きく関係してきた。民間企業の雇用情勢が悪化すれば公務員人気が高まり、逆なら人気が低下してきた。現状は、2012年に始動したアベノミクスによる景気拡大に、少子高齢化にともなう労働人口の減少が加わって、民間企業の人手不足が慢性化している。中野氏は次のように説明する。

「最近は景気情勢というよりも人手不足が影響しているのか、公務員採用の環境が変化して、人事院のデータを見ても国家公務員の受験者が減っている。さまざまな理由が考えられるが、優秀な学生にとっては民間企業の労働条件の改善が大きい。民間企業は人手不足が続くなかで、第一生命保険が今年4月入社の初任給を32万円に引き上げるなど給与水準が上がっているが、公務員の給料は人事院勧告に基づいて国会審議を経るので簡単には上がらない。ところが今は奨学金を抱えている学生が多く、卒業後に返済していかなければならない。仮に私立大学の平均授業料を年間100万円とするなら卒業時に400万円の返済は重くのしかかる。そうなると金銭的なことを視野に入れざるを得ず、結果的に、民間企業(特に大企業)に比べて公務員の給料は安いように映る」

理工系の学生にとって地方公務員は眼中にない?

 民間企業のなかでも給与水準が飛躍的にアップしているのはAIを中心とするIT人材である。理工系の学生は民間にどんどん流れ、1月15日付け毎日新聞によると、同紙が実施したアンケート調査で、23年度の47都道府県の採用試験で土木や獣医など技術・専門職の採用予定数割れが起きたという。

「IT企業がAI人材に対して高額の初任給を用意するケースも出ているが、ここまで高い賃金が用意されると、少なくとも理工系の学生にとって地方公務員は眼中にないと思う。しかも理工系出身の職員は役所であまり出世しないので、地方公務員を目指す学生は少ないと思う」(中野氏)

 それだけではない。会社員と公務員の最も大きな違いである身分保障でも、公務員の優位性が揺らいでいる。要因は転職市場の拡大だ。

「人手不足なうえに労働市場が流動化して転職がきくようになっているので、身分保障が重みを持たなくなった。さらにネットへの書き込みなどで以前から分かっていたことだが、公務員の職場環境がブラックであることも明らかにされている。また、大震災が発生すれば地方公務員が真っ先に現場に駆けつけて対応に奔走している実態を報道で見て、簡単な仕事ではないと分かるようになった。こうして、冷静に考えて地方公務員になることは釣り合わないと考える学生が増えている」(中野氏)

地方公務員のやりがい

 地方公務員の志願者数が低迷している背景のひとつに、災害対応のような例を別とすれば、いまひとつ仕事が見えにくいことも挙げられよう。傍目には「お役所仕事=ルーティンワーク」というイメージがあるかもしれないが、地域課題は変動的で、多くの地方公務員は使命感をもって課題に向き合い、住民の生活向上に励んでいる。地方公務員の仕事は何にやりがいを見出せるのだろうか。実体験を持つ中野氏はこう語る。

「私が学生に伝えるのは地域活性化などです。今は公務員が机の上で判子を押している時代ではなく、地域おこしでは公務員が中心になって、いろいろな人に働きかけて仕組みをつくっていく。そして地域が動いていく実感を持てる楽しい仕事で、ある政策をつくれば救われる住民もいるし、元気になれる住民もいて、公務員というのは多くの人に喜んでもらえる職業だと話している。社会問題に関心の高い学生にとっては良い就職先だと思う」

 社会問題に関心の高い学生は処遇よりも仕事本位で職場を選ぶ傾向が強いが、この傾向は学生全般に広がりつつあるという。学業成績の優れた学生でも一流企業や中央省庁を選ばず、ベンチャー企業に就職したり、起業したりすることが珍しくなくなった。その意味で、地方公務員の仕事をもっとリアルにPRすることが求められるが、もうひとつ、中野氏はキーワードに「成長」を挙げる。

「民間企業は入社すればどんな能力が身について、どんな成長ができるかを説明するが、公務員の場合は、身分保障があるので黙っていても就職してくれるだろうと胡坐をかいている傾向がある」

 時折メディアで話題になるような地方のスーパー公務員がロールモデルとして相次いでクローズアップされれば、地方公務員は「成長できる職業」と認識されるのではないだろうか。
(文=Business Journal編集部)

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