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日産リーフ、走行中に部品が脱落…整備士「運転中止を」、日産「不安全ない」

文=Business Journal編集部、協力=桑野将二郎/自動車ライター
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日産「リーフ」(「Wikipedia」より/TTTNIS

 日産自動車の電気自動車(EV)「リーフ」で、走行中に前輪の上部に固定された部品が「ドーン」という大きな音とともに外れるという故障が起きている。9月29日付「しんぶん赤旗電子版」によれば、あるユーザは日産の販売店に故障した車をレッカー移動したものの修理されず放置され、日産本社の社員も交えて話し合いの場が持たれたが、ユーザは日産側に原因を質問しても説明されず、修理は有償だと言われたという。同様の故障はよくみられるものなのか。また、修理が有償だというのは妥当なのか。日産、専門家の見解を聞いた。

 2010年12月に世界初の量産EVとして発売された「日産リーフ」は日本、米国、欧州など約50カ国で販売されており、累計販売台数は約65万台に上る。23年度の車種別EV販売台数ランキングでは7100台で2位。ちなみに1位のサクラ(3万4083台)、3位のアリア(6300台)と日産の車種がトップ3を占めている。

 そのリーフで前述の故障が発生している。「赤旗」記事によれば、タイヤの振動を吸収する緩衝装置をボルトで車体に固定する「アッパーマウント」と呼ばれる部品のボルトが外れるというもので、国土交通省の自動車の不具合情報には同様の事例が11件あるという。このユーザが展示車だったリーフを購入したのは2014年頃であり、整備士から、取れてはいけない部品が取れているため運転をやめるよう言われたが、日産の社員からは操縦不能には至らないと説明されたという。

日産「不安全となる車両挙動は無く」

 日産に見解を聞いた。

――「リーフ」のアッパーマウントの破断の原因と発生頻度は。

日産「個別のケースについてのコメントは差し控えます。 なお、フロントストラットのマウントインシュレータに水が溜まった場合でも乾燥により常に水が存在するわけではなく、発錆し更に破断まで至ることはまれと考えております」

――アッパーマウントの破断による、安全に問題が生じる可能性や事故発生・操縦不能のリスクが高まる可能性は。

日産「フロントストラットのマウントインシュレータが錆により破断した場合、異音や振動が発生するものの、本事象が原因で不安全となる車両挙動は無く、走行不能や操縦不能には至りません。 なお、当該事案発生の検知性からお客さまは確実に異常を検知され、販売会社へ入庫・点検の上、適切に修理されることを想定しています」

――アッパーマウントの破断が発生した場合の修理費用はユーザ側の負担となるのか。

日産「弊社では、保証書に示す保証期間および条件のもとに無償修理をお約束しています。保証期間内であれば弊社の規定に基づいて無償修理を行いますが、保証期間経過後にお申し出のあった不具合修理は原則として有料での修理となります」

「走行安全への影響はもちろん十分考えられます」

 アッパーマウントの破断というのは、よくあることなのか。中古車販売店経営者で自動車ライターの桑野将二郎氏はいう。

「アッパーマウントは、車種に関係なく消耗部品の一部と捉えるのが妥当かと思われます。ゴムや樹脂の部品は経年変化によって、乗っていなくても素材の劣化が進みます。アッパーマウントは、車両の上下運動を制御するショックアブソーバーの頭頂部をボディ側に取り付ける、ゴムと金属を組み合わせたような部品で、劣化してくるとゴム痩せによってガタつきが生じ、異音や振動が起こり、最終的に破断して砕けてしまうと、ショックアブソーバーの上部が外れてしまう可能性もあります。こうした症状は、走行距離の多い中古車にはよく見られることで、新車登録時から年数が経っている中古車は走行距離が少なくても素材の硬化などでヒビが入り、破断することもあります。

 話題となっているユーザの車両がどれくらいの年式でどれくらいの走行距離の中古車だったのかわかりませんが、日産リーフのアッパーマウントの不具合については同じような症例が当店の入庫車両でも過去にありましたし、珍しくはないのかもしれません。ただ、錆によってボルトが欠損したり、破断するという状態になる前に、ユーザが異変に気付いてディーラーなり整備工場に入庫するのが一般的だと思いますので、ユーザがどういう使用条件で、どれくらいの距離を乗られていたのかによって、問題性は変わってくるようにも考えられます」

 アッパーマウントの破断による走行への影響として、安全に問題が生じる可能性などは考えられるか。

「足回り部品のなかでも、ショックアブソーバーと車体をつなぐ支点となる重要な部品ですので、走行安全への影響はもちろん十分考えられます。破損状態に至るまでに、ハンドルを切った時や走行中凸凹を越えた際にガタガタと異音や振動が出ますので、ドライバーはすぐに異常を感じるはずです。その時点で修理対応をしておけば大きな問題にはつながりませんが、そのまま乗り続けるとアッパーマウントの破損だけでなく、他の箇所へも影響を及ぼして修理費用が余計に高くついてしまうケースもあります」(桑野氏)

海外ではユーザ自身がメンテナンス作業のひとつとして交換

 アッパーマウントの破断が発生した場合の修理費用は、一般的にユーザ側の費用負担となるものなのか。

「大前提として、新車購入後の保証期間内であれば、ディーラー側での負担も相談できるかもしれませんが、中古車の場合は基本的に所有者および使用者に、安全に道路上を走らせるために必要となるメンテナンスの義務がある、と捉えるべきかと思われます。ただ、中古車購入時に納車前点検で整備済みの車両を購入された場合は、もし走行安全性を損なう修理箇所があるとすれば、販売店側への負担を相談できる可能性はあります。その場合、購入時の契約内容に納車前点検整備に関する保証が付いているかどうかを確認しておくことが大事です。納車前整備という作業が、果たしてどこまでの内容なのかが明記されていないケースも多く、また中古車は販売店によって整備保証を付けている場合と、基本的に現状販売で保証を付けていない場合と、まちまちです。

 アッパーマウントの交換となりますと、部品代が8000円~1万数千円くらい、交換工賃が1~2万円程度かかってくると思いますが、車検制度のない海外ではユーザ自身がメンテナンス作業のひとつとして交換することも多いそうです。日本はボンネットを開けたことすらないユーザが多いため、車検整備に対する認識や、ディーラーや整備工場に求めるものが海外とは違うのだと思いますが、自分の運転する車両が安全走行できるように維持することについて、プロに任せっきりにするのではなく、ユーザ自身にも責任があるのだという認識をもう少し高めてもよいのではないでしょうか」(桑野氏)

(文=Business Journal編集部、協力=桑野将二郎/自動車ライター)

桑野将二郎/自動車ライター

桑野将二郎/自動車ライター

1968年、大阪府生まれ。愛車遍歴は120台以上、そのうち新車はたったの2台というUカー・ジャンキー。中古車情報誌「カーセンサー」の編集デスクを務めた後、現在はヴィンテージカー雑誌を中心に寄稿。70~80年代の希少車を眺めながら珈琲が飲めるマニアックなガレージカフェを大阪に構えつつ、自動車雑誌のライター兼カメラマンとして西日本を中心に活動する。
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