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日本が直面する仮想通貨を用いたマネーロンダリングと詐欺の課題

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仮想通貨は近年その利便性と匿名性の高さから、世界中で急速に普及している。ビットコインが10万ドルに迫る最高値をつけ、次に来る仮想通貨への注目が高まる中、暗号通貨はブロックチェーン技術を通じてセキュリティを提供し、透明性と改ざん防止の取引を保証する。さらに、ピアツーピア取引を可能にすることで、金融の自由を実現する。これは仲介者を必要とせずに行われるため、コストと遅延が少なくなる。その上、暗号通貨はグローバルなアクセス性を促進し、インターネット接続があればほぼ誰でも金融エコシステムに参加できる。しかし、その一方で、仮想通貨はマネーロンダリングや詐欺といった違法行為にも利用されるリスクが指摘されており、日本も例外ではないのだ。金融技術の進化に伴い、日本政府や金融機関、捜査当局はこれらの新しい課題に直面している。ここでは仮想通貨を用いたマネーロンダリングと詐欺が日本に及ぼす影響と、それに対する課題および取り組みについて詳しく述べていく。

仮想通貨の特徴と悪用される理由

仮想通貨はブロックチェーン技術に基づいて取引が記録されるデジタル資産である。その最大の特徴が、分散型ネットワークにより中央管理者が存在しない点と、高い匿名性を持つ点。これにより送金が迅速かつ低コストで行えるため、合法的な用途においては利便性が高い一方で、犯罪行為にも悪用されやすい側面がある。

マネーロンダリングにおいては、仮想通貨の匿名性が犯罪者にとって有利に働くこととなる。違法行為で得た収益を仮想通貨に変換することで、追跡が困難になるため、金融犯罪の温床となりやすいのだ。また、仮想通貨の市場規模が増大するにつれ、詐欺的な投資案件や詐取行為も増加しており、一般消費者が被害を受けるケースが後を絶たない。

海外では減少傾向にある中、日本では増加

世界的な傾向としては、仮想通貨を利用した違法活動の総額は減少しているという報告もある。2024年のChainalysisの報告によれば、世界全体で仮想通貨を用いた違法取引額は19.6%減少したという。

一方で、日本では仮想通貨を利用した詐欺の被害がより深刻化している。警察庁のデータによると2023年には19,038件の詐欺事件が報告され、その被害総額は4526億円に達した。特に投資詐欺や国際ロマンス詐欺に代表される、SNSやオンラインプラットフォームを利用した新しい詐欺手法が急増しているのが特徴的である。

投資詐欺では偽の有名人アカウントを使い、被害者を虚偽の投資スキームに誘導するケースが増加。一方の国際ロマンス詐欺は、主にオンライン上のSNSやマッチングアプリで恋愛感情を利用して被害者をだまし、金銭を詐取する手口である。犯人は偽のプロフィールや写真を使って信頼関係を築いた後、緊急の資金援助や贈り物を理由に送金を要求するというもので、近年は送金に仮想通貨が指定されるケースが急増している。

日本では2024年の最初の8か月間でこうした詐欺の件数と被害額は前年を大きく上回っており、仮想通貨市場の急速な成長が悪用されていることが伺える。

日本における現状と課題

日本は金融先進国でありながら、犯罪収益移転防止に関しては従来型の金融取引を対象とした規制が主流だった。しかし仮想通貨の急速な普及により、既存の法制度では対応しきれない部分が浮き彫りになってきている。特に仮想通貨を利用した国際送金の監視は難しく、海外の犯罪組織が日本の金融システムを利用するケースも増加しているのだ。

また、日本は規制が厳しい一方で、国内の取引所を通じて行われる取引は比較的透明性が高いとされている。しかし、海外の取引所や分散型取引所(DEX)を利用した取引では監視が行き届かないことが問題である。これにより、犯罪者は規制の緩い取引所を利用して資金を移動させ、最終的に日本国内に資金を還流させることが可能となっている。

その一方で、仮想通貨を利用した詐欺も大きな問題となっている。具体例としては仮想通貨を利用した投資詐欺やICO(Initial Coin Offering)を装った資金詐取が挙げられる。これらの詐欺は、特に投資初心者をターゲットに行われ、多くの消費者が被害を受けている。

また、仮想通貨ウォレットや取引所を標的にしたハッキング事件も後を絶たない。これにより、多額の仮想通貨が不正に取得され、追跡が困難なまま国境を越えて移動するケースが発生している。こうしたサイバー犯罪への対応は、日本だけでなく国際的な連携が求められる課題となっている。

日本政府と規制当局の取り組み

日本政府はこれらの課題に対応するため、さまざまな法整備や規制強化を進めている。例えば2017年には「改正資金決済法」が施行され、仮想通貨取引所の登録制が導入されることとなった。この法律では取引所に対して顧客確認(KYC)や取引記録の保存、マネーロンダリング防止措置の義務化が求められている。

また、2020年には「金融商品取引法」と「資金決済法」が再改正され、仮想通貨取引に対する規制がさらに強化されることとなった。これにより、仮想通貨取引所の内部管理体制の強化や、顧客資産の分別管理が義務付けられるようになった。

さらに、警察庁や金融庁が連携し、国際的な犯罪対策ネットワークにも積極的に参加している。特に国際刑事警察機構(Interpol)や金融活動作業部会(FATF)との協力を通じて、国際的なマネーロンダリングやテロ資金供与の監視体制を強化している。

課題解決に向けた提言

では、日本が仮想通貨を用いたマネーロンダリングや詐欺の課題に対処するためには、どのような取り組みに重点が置かれるべきなのだろうか?

まずは、技術革新の活用である。ブロックチェーン分析技術やAIを活用して、不正取引の早期発見と追跡を強化することが必要となる。たとえ匿名性の高い取引であっても、高度なデータ分析ツールを導入することで不審なパターンを特定することが可能になるとされている。

次に、国際的な連携強化も欠かせない。仮想通貨は国境を越えた取引が容易であるため、日本単独での対策には限界がある。FATFの指針に基づいた規制の調和や情報共有の強化を通じて、国際的な犯罪ネットワークに対抗する体制を構築していく必要がある。

また、消費者教育と意識向上にも努めなければならない。政府や取引所が協力して啓発キャンペーンや教育プログラムを実施することで、消費者のリテラシーを向上させることが期待される。これによって仮想通貨に関する知識を普及させ、少しでも一般消費者の詐欺被害を減らすことが重要である。

最後に、仮想通貨技術の進化に伴い、新たな犯罪手法が登場することも予想される。これに対応するため、規制当局には柔軟な法制度を構築し、継続的に見直すことが求められる。

仮想通貨はなにも、犯罪だけに使われるというわけではない。どのような業界であっても、ブロックチェーン技術が発展に寄与する可能性は多分に秘めているのだ。それだけに、日本には仮想通貨の普及とそのリスク管理の両立を図ることで、安全かつ持続可能な金融環境を構築していくことが求められる。

※本稿はインフォメーションです。

BusinessJournal編集部

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