東京ディズニーリゾート(ディズニーR)の開園時、走らないように注意を呼び掛けるキャストを無視して多くの入場者がお目当てのアトラクションなどを目指して一斉に走る「開園ダッシュ問題」。その対策としてディズニーRが、走った入場者を強制退園させる措置を講じているという情報が注目されている。ディズニーRを運営するオリエンタルランドは「東京ディズニーリゾートでは、従来からパーク内の禁止行為として、『パーク内で走る等の危険行為』はご遠慮いただくようゲストの皆様にお願いしております。個別のゲスト対応についてはお答えしておりません」と説明する。転倒や接触による負傷者が出る危険もあり、取り締まりの強化を歓迎する声もみられる。
1983年の開業から今年で43年目を迎える東京ディズニーランド、2001年の開業から25年目を迎える東京ディズニーシーの人気は衰えない。入場料は実質的に値上がりしているが、2023年度の東京ディズニーリゾート来園者数は前期比24.5%増の約2751万人であり、ゲスト1人当たり売上高は過去最高となる1万6644円。オリエンタルランドの24年3月期決算は売上高が前年比28.0%増の6184億円、純利益は同48.9%増の1202億円とともに過去最高を更新した。
「ディズニーRの課題は集客ではなく、いかにパーク内の混雑を解消するかだった。それゆえに強気の価格設定をやってこれた」(テーマパーク経営に詳しい大学教員)
ディズニーRといえば、入場料などの高額化と複雑化が話題となってきた。2001年に5500円だった「1デーパスポート」の価格は年々値上がりし、21年3月に価格変動制が導入された時点で大人料金は休日が8700円、平日が8200円。現在では7900円、8400円、8900円、9400円、9900円、1万900円と6段階の価格変動制となっており、最高価格は繁忙期の週末やクリスマス、年末年始などに適用される。2カ月前からの販売となっており、主に公式サイトか東京ディズニーリゾート・アプリから購入する。
パーク入園後にスマートフォンの東京ディズニーリゾート・アプリの「スタンバイパス」(無料)で利用したい施設・時間帯を選択し、パスを取得することができる。同時に複数のアトラクションのスタンバイパスを取得することはできず、先着予約となっている。無料の手段としては、「東京ディズニーリゾート40周年記念プライオリティパス」もある。公式アプリ上から取得し、そこから利用したい施設を選択し、指定された時間のパスを取得することで、短い待ち時間で施設を利用できる。ただ、自分で利用時間を選ぶことはできず、数に限りがあるので希望のアトラクションを利用できない可能性がある。他の施設を取得する場合、取得から120分後もしくは取得した同パスのご利用開始時刻のいずれか早いほうの時間を過ぎると取得することができる。同じ施設を再び取得する場合、取得した同パスの利用後、もしくは利用終了時刻以降となる。
有料の「ディズニー・プレミアアクセス(DPA)」は、短い待ち時間で希望する施設を利用することが可能であり、こちらもパーク入園後にアプリ上で使用する施設と時間を選択するという流れ。発行数に限りがあるため、売り切れとなる場合がある。
開園ダッシュする人の目的
こうした事前予約といえるシステムがあるにもかかわらず「開園ダッシュ問題」がなくならない理由は、パーク内に入場するための1デーパスポートなどのパークチケットさえ持っていればアトラクションの利用が可能だからだ(一部エリアなどを除く)。つまり行列に並ぶ覚悟があれば、パークチケットのみでアトラクションを体験することは可能。
「開園ダッシュはディズニーRではお馴染みの光景になっていますが、走る目的は、待ち時間なしですぐにお目当てのアトラクションを利用するためか、パレードやショーの席取りのためです。危険な行為であることはいうまでもありませんが、スタンバイパスやDPAなどで事前にスマホから予約しないとアトラクションに乗れないという運用にしない限りは、なくならないかもしれません。
ちなみにチケットの複雑化が批判されがちですが、冬は寒いなか、夏は暑い中で何時間も行列で待つほかなかった以前に比べれば、よくなったといえるのではないでしょうか。入場者は予約の時間まで他の場所を見たり、買い物や食事をできますし、ディズニーRも客がそういったかたちで空いた時間にいろいろとお金を使ってくれるほうが、売上にもつながり、両者にとってメリットがあります」(前出・大学教員)
(文=Business Journal編集部)