BSテレビ・ラジオ、インターネットの通信学習がメインのため、通学の必要がなく全国どこに住んでいても在籍できる放送大学。国から認可された正規の大学でありながら、学力を審査する入試もなく、高校卒業や満18歳以上といった一定の条件を満たせば誰でも入学可能であり、卒業すれば学士の学位が取得可能。年間の授業料は20万円ほどと、他の国公立大学・私立大学と比較すると破格の安さとなっている。そんな放送大学をめぐって少し前に、SNS上に投稿された「放送大学を馬鹿にするツイート、定期的に回ってくるけど、講師陣見たら『は?』ってなるぞ。お名前や経歴見てビビるよ」「放送大学は講義レベルめちゃ高い」「教養課程のレベルは日本では放送大学より上なところはほとんどない」といった内容が一部で話題となっていた。放送大学とは、どのような大学なのか。また、入学によってどのようなメリットを受けることができるのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。
放送大学学園法に基づき1983年に設置、85年に授業が開始された放送大学は、学校法人の放送大学学園が運営する私立大学。大学と大学院(修士課程・博士後期課程)からなり、大学は教養学部の一学部のみで、大学卒業を目指す全科履修生(最長10年間在籍可能)、特定の科目のみを学びたい人向けの選科履修生(1年間・2学期間在学)と科目履修生(6カ月間・1学期間在学)、特別聴講学生がある。2024年度の大学の年間入学生数は計約3万8000人に上り、私学の雄・早稲田大学(約9000人)を大きく上回っている。
教養学部の在学生の年齢としては50代がもっとも多く、次いで40代となっているが、10代(2847人)や70代(9448人)もおり、働きながら学ぶ人が多い(24年度第2学期時点)。コースは「生活と福祉コース」「心理と教育コース」「社会と産業コース」「人間と文化コース」「情報コース」「自然と環境コース」の6つからなり、科目数は約300に上る。たとえば「社会と産業コース」には「環境を可視化する技術と応用」「西洋政治思想の文脈」「社会政策の国際動向と日本の位置」「企業経営の国際展開」といった科目や、「自然と環境コース」には「量子物理学」「エントロピーからはじめる熱力学」「感染症と生体防御」「線型代数学」といった科目があり、専門的な内容が並ぶ。教員の選定にも力を入れており、公式サイトでは「約300の各分野でトップクラスの教員が約2,000人揃っています。 様々な専門分野を持つ放送大学専任教員だけでなく、他大学からも数多くの客員教員を招き、日本における第一線の研究者による授業を提供しています」と説明されている。
放送大学の大きな特徴の一つが授業料の安さだ。国立大学の学納金は年間53万5800円(標準額)、私立大学は入学金を除いても年間100万円を超えるのが一般的だが、放送大学の入学料は2万4000円(全科履修生の場合)、1単位当たり6000円となっており、1・2学期の合計の目安が年間20万円ほどとなっている。
講義内容のレベルは間違いなく高い
放送大学に入学するメリットは何か。大学ジャーナリストの石渡嶺司氏はいう。
「メリットは幅の広さです。教養学部のみですが6コース・約300科目あり、自由に選択できます。1科目だけ受講することもできますし、全科履修生として卒業すれば大卒資格を得ることができます。単位互換制度も全国の大学と締結しており、国立大の東北大学、九州大学などの授業を履修、単位取得することもできます。デメリットは通信制大学全般にいえることですが、卒業の難しさです。全科履修生の場合、学習計画は本人次第です。ペースがつかめず、卒業が先送りになるリスクは一般大学よりも高いといえるでしょう。放送大学の場合、入学時期は年2回あります。全科履修生の4月入学は例年7000~8000人で、これに対して3月卒業者は3000~4000人ほど。つまり単純計算した際の卒業率は50%前後となります」
では、放送大学の講義内容のレベルは非常に高いといえるのか。
「教員ないし講義内容のレベルが高いか低いか、でいえば、間違いなく高いでしょう。放送大学は放送授業が基本です。しかも、その授業はBS放送やラジオでも流れており、学生でなくても視聴することができます。レベルの低い授業であれば、大学内外から出るクレームの多さは一般大学よりも大きいことが想定できます。そのため、講義内容はレベルが高く、教員も研究実績のある方が多い印象があります」
(文=Business Journal編集部、協力=石渡嶺司/大学ジャーナリスト)