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CIC、フィンテック普及を後押し…信用情報の分析データ提供サービス

文=Business Journal編集部
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CICの公式サイトより

 デジタル通貨や仮想通貨の普及で決済手段が増える中で、クレジット決済において自分の支払い能力はいかほどなのか。その現状をモニタリングできる手段が実用化した。信用情報機関シー・アイ・シー(以下、CIC)は2024年11月に消費者向けに「クレジット・ガイダンス」の提供を開始し、25年4月にはクレジット会社への提供も開始する。

 CICは割賦販売法および貸金業法に基づく指定信用情報機関として指定を受けた唯一の指定信用情報機関で、クレジット会社の共同出資を受けて1984年に創立された。

 クレジット・ガイダンスとは、CIC が保有する信用情報を分析のうえ算出した指数とその算出理由を「クレジット・ガイダンス情報」として加盟企業と消費者に提供するサービスである。指数は、信用情報のうち属性(年齢・性別・勤務先・居住地など)に関する項目を除外した客観的な取引事実(支払状況、残高など)に基づいて算出した信用状態を表す指標 で、200~800の3ケタの数値で示される。算出理由は「未入金がないため、指数にプラスの影響を与えています」「支払いの遅れが、指数にマイナスの影響を与えています」など指数の算出に際して、特に影響を与えた理由を最大で4つ示す。

 一方、信用情報は契約単位に登録される。例えばクレジットカードを5枚持っている消費者には5件の信用情報が登録され、それぞれに契約者の属性情報、契約内容、債務残高、支払状況などが登録される。 信用状態を把握するためには、与信事業者や消費者が登録されている全ての信用情報を読み込む必要があるが、信用情報を数値化したクレジット・ガイダンスであれば信用状況を容易に把握しやすい。

 CICによると、クレジット・ガイダンスの提供によって、加盟企業には「適正なクレジット契約の実現」「与信判断の標準化・自動化」「DX の推進」、消費者には「信用状態の把握・改善」「金融リテラシーの向上」「多重債務・自己破産の未然防止」という利点があるという。提供を開始した背景について、CICは、次のように説明する。

「当社の創立から40周年を迎えた現時点で信用情報の保有件数は8億件を超え、割販市場の100%、貸金市場の約90%をカバーする高い網羅性を備えている。信用情報は照会依頼のあった加盟企業、開示請求のあった消費者本人に提供しているが、情報が客観的な取引事実であるため、そこから信用力を読み取るのは、加盟事業者はもちろん、消費者にとっても大変難しい。新たな付加価値が創出できないか検討を重ねた結果、信用状態を指数としてひと目で把握できるサービスとして、クレジット・ガイダンスを提供することになった」

クレジット・ガイダンスの提供を通じて消費者の行動変容を促す

 信用情報に数値化という付加価値を付けたのがクレジット・ガイダンスで、利用する情報項目は支払状況、残高、契約数、契約期間、申込件数である。属性に関する項目は指数に影響しない仕組みだが、その理由は何だろうか。

「当社は、クレジット・ガイダンスの提供を通じて消費者の行動変容を促していきたいと 考えている。年齢や性別などの属性項目は、自分自身で変えられないものであり、指数の算出では用いないことにした」(CIC)

 CICの加盟企業は837社で、加盟業種は、信販会社、百貨店、流通系クレジット会社、銀行系クレジット会社、家電メーカー系クレジット会社、自動車メーカー系クレジット会社、リース会社、保険会社、保証会社、銀行、消費者金融会社、携帯電話会社など。照会件数は23年度に約2億6600件に達した。

 クレジット・ガイダンスの提供を通じて、CICは加盟企業に対してフィンテックの普及につながるのではないかと見通している。

「与信モデルの構築は開発コストをはじめとして、多くのコスト負担を伴うため、事業化に踏み切れない新興企業は多いと想定される。当社が提供する指数を活用して、与信プロセスの標準化・自動化を通じた与信モデルの低コスト化が可能であり、フィンテック誕生の後押しになることを期待できると考えている」

 一方の消費者はCICの情報開示制度を利用する時に「クレジット・ガイダンス情報」の開示を希望すれば、インターネットや郵送で、自分の信用情報と併せて指数・算出理由を確認できる。

政府もキャッシュレス決済を推進

 経済産業省の算出によると、国内のキャッシュレス決済比率は23年には39.3%(126.7兆円)となった。内訳は、クレジットカードが83.5%(105.7兆円)、デビットカードが2.9%(3.7兆円)、電子マネーが5.1%(6.4兆円)、コード決済が8.6%(10.9兆円)だった。経産省は「キャッシュレス決済比率を2025年までに4割程度にするという政府目標の達成に向け、関係省庁と連携しつつ、キャッシュレス決済の推進に取り組んでいる」と表明している。

 この政策に対して、過剰与信を問題視する日本弁護士連合会は19年に「クレジット過剰与信規制の緩和に反対する意見書」を内閣府特命担当大臣、消費者庁長官、経済産業省産業構造審議会商務流通情報分科会割賦販売小委員会委員長宛てに提出した。意見書は「少額与信であれば多重債務に至るおそれが低いとは言い難い」と述べたうえで、次のように強調した。

「キャッシュレス決済を推進する政策方針を掲げている今日においては,少額与信のクレジットカード等の交付・付与を行う場合であっても,セーフティネットとしての指定信用情報機関の利用義務を堅持する必要性が高い」

 消費者の属性を除いた限定的な情報とはいえ、クレジット・ガイダンスの活用による与信の精度向上が、CIC加盟企業にも消費者にも問われている。

(文=Business Journal編集部)

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