なぜ物流会社のヤマトGが企業のEV導入をトータルで支援するサービスを開始?脱炭素と経済性を両立

●この記事のポイント
・ヤマトHD傘下のヤマトオートワークスは、車両を使用する事業者の脱炭素化をトータルで支援するサービスを開始
・GHG削減計画の立案、EV・充電器の導入・運用支援、メンテナンス、エネルギーマネジメント、再生可能エネルギー供給までワンストップで提供
・導入企業の脱炭素化と経済性の両立を図る
ヤマトホールディングス(HD)傘下の車両・施設一括管理会社であるヤマトオートワークスは、車両を使用する事業者が脱炭素化をトータルで支援するサービス「EVライフサイクルサービス」を2024年10月から始めた。GHG削減計画の立案、EV・充電器の導入・ 運用支援、メンテナンス、エネルギーマネジメント、再生可能エネルギー供給までワンストップで提供する。同社が、なぜこのようなサービスを提供するのか。また、導入によってどのような効果が見込めるのか。ヤマトオートワークスに取材した。
●目次
ヤマトグループ、EVの保有台数を2万3500台まで増やす計画
ヤマトグループは脱炭素化に積極的な姿勢で知られている。すでに約4300台のEVを保有し、太陽光パネルや蓄電池を設置する事業所を増やしている。2027年3月期までに800億円を環境対策に投資する計画であり、2030年度にはEVを2万3500台まで、太陽光発電設備を810基まで増やし、GHGの排出量を2020年度比で48%削減する予定だ。そのヤマトグループはEV導入・運用のノウハウを外販にも活用する。昨年10月に開始した「EVライフサイクルサービス」の内容は以下のとおり多岐にわたる。
・GHG削減計画の立案
車両を使用する事業者の脱炭素目標達成に向け、EV導入や再エネの活用など、最適なGHG削減計画を立案。
・EV・充電器の導入・運用支援
芙蓉リース・ヤマトリースと連携し、EV・充電器のリース提供と各種補助金の活用を支援。また、導入台数に応じた最適な充電器の設置レイアウトを提案。
・EV・充電器の点検、メンテナンス
ヤマトオートワークスの全国72の整備拠点において、事業者のEV稼働を止めることなく、車両の法定点検、メンテナンス、充電器の定期点検を行う。
・エネルギーマネジメントシステムの提供※
ヤマトグループが開発したエネルギーマネジメントシステムを用いて、電力使用量の可視化や充電による待機時間の削減、電力使用ピークの緩和、太陽光発電設備・蓄電池との連動を支援。
・再エネの供給
ヤマトグループが保有する太陽光発電設備由来の電力を含む、再エネを供給。※
※ 2025年度末までにサービス提供開始予定
・EV入替・廃棄
車両の再販やバッテリーリサイクルに対応。
同サービスを開始するに至った背景・理由について、ヤマトオートワークス経営戦略部NEVフリート推進課は次のように説明する。
「ヤマトグループは公共の道路を使わせていただき、全国で多くの車両を運行しております。世界的に脱炭素の潮流が強まっており、ヤマトグループは2050年度のGHG自社排出実質ゼロを目指しています。2030年度までにEVを集配車両の約6割にあたる2万3500台まで、太陽光発電設備を810基まで増やし、再生可能エネルギーの使用率を70%まで上げることに取り組んでおります。また、ヤマトオートワークスで培った車両のメンテナンスや管理のノウハウ、知見を生かし、脱炭素化に課題を抱えている企業様をご支援したいという思いでEVライフサイクルサービスを開始しました」
使用者目線でお客様の商用車の電動化を支援
企業などから多くの引き合いが寄せられているというが、サービスの提供にあたっては、これまでヤマトグループが培ってきたEV導入・運用のノウハウを活用するという。
「ヤマトグループは2025年3月時点で約4300台のEVを保有しており、EV使用者としての経験も豊富です。EVを初めて導入・使用する方々の目線で商用車の電動化を支援することができる点はヤマトグループの強みです。また、多くのEVを車両メーカー様と共同で開発・導入した経験から、お客様のビジネスモデルや脱炭素計画に適したEV導入をご提案できると考えています」
導入企業側には意外なプラスの効果も出ているという。
「GHG排出量の削減だけでなく、補助金の活用なども含めて試算を行い、コストメリットが出る計画をご提案することで、お客様は脱炭素化と経済性を両立させることができます。
EVライフサイクルサービスをご利用のお客様からは、『EVは内燃車と比べて振動や騒音が少ないのでドライバーの疲労感が軽減できた』という声や、『ドライバーが給油する手間が省けたので労働時間の短縮につながった』という声も寄せられております。実際にEVを運転されるお客様は『EVは航続距離が短い』といった懸念を持っておられますが、ご契約いただく前に試乗会などを通じて不安を取り除いていただく取り組みも行っております」
気になるのが導入・運用コストだ。
「GHG排出量の削減だけでなく、補助金の活用なども含めて試算を行い、コストメリットが出る計画をご提案することで、お客様は脱炭素化と経済性を両立させることができます。お客様によっては、EVに加えて充電器や太陽光発電設備が必要になりますが、『EVライフサイクルサービス』は、月額のサービス利用料のみで、初期費用はかからないため、安心してご利用いただけると考えております」
(文=BUSINESS JOURNAL編集部)