なぜ東京23区で狭小戸建て住宅が人気&増加?価格はマンションの半分でも床面積は広い、仕事と育児両立

●この記事のポイント
・東京23区で狭小戸建て住宅が人気
・価格は新築マンションの半分の水準、5000~6000万円ほどで、土地面積は30~50平方メートルほど
・共働き世帯においては、駅近で、好立地に住むことができるため、仕事と育児・家事の両立もしやすい
不動産経済研究所の調査によれば、今年1~6月に首都圏で発売された新築マンションの平均価格は8958万円、前年同期比16.7%増という大幅な値上がりとなり、東京23区に限れば1億3064万円と1億円を超えるなど、住宅価格の高騰が続いている。そうしたなか、東京23区で狭小戸建て住宅が人気を集め、増加しつつある。価格は新築マンションの半分の水準、5000~6000万円ほどで、土地面積は30~50平方メートルほど、3階建てであることが多いのが特徴だ。土地面積は“狭小”ではあるものの、床面積ベースでは一般的な新築マンションと同程度とされ、居住空間としてはそれなりの広さが確保されていると評価されている。具体的にどのような特徴や利点があるのか。また、購入時の検討ポイントや注意点などは何か。住宅メーカーへの取材をもとに追ってみたい。
●目次
土地を効率よく活用することで、土地の分の費用を抑制
まず、狭小戸建て住宅の特徴について、「コンパクト住宅」を年間5000棟超供給する大手住宅メーカー・オープンハウスグループは次のように説明する。
「狭小戸建てといわれることが多いのですが、弊社では『コンパクト住宅』という言い方をしております。ご購入いただいたお客様への配慮の意味合いも含めてです。コンパクト住宅は、土地は小さいかもしれませんが、住宅内の階段の設計を工夫したり、スペースパフォーマンス(スペパ)を意識した、3階建ての家づくりを行うことで、コンパクトながらも住みやすい住環境となっております。
また、若い共働き世代に便利な職住近接な環境のため、都心で、駅に近く、好立地に、お客様の手の届く価格で住宅を提供すべく、企業努力を継続しております。例えば、弊社では土地を効率よくシミュレーションして分割し、地価が高い都心において、土地を効率よく活用することで、土地の分の費用を抑え、そこに自社グループで最適な建築を施すことで、中間マージンのない製販一体のビジネスモデルと、徹底したコストの追求(モデルルームをもたずにショールームで集約するなど)により、価格を抑えた住宅供給を可能にしております」
床面積は平均的な新築マンションと比較すると、どのような広さなのか。
「オープンハウスグループの1都3県でのボリュームゾーンは、土地面積50平方メートル、延べ床面積80平方メートルの物件住宅です。マンションは価格高騰により小型化が進み、家族世帯でも60平方メートル台といった手狭な規模が多い中、相対的な広さやお手ごろ感で一戸建てを選ぶ人も増えています」
価格帯はどうなっているのか。参考値として同社の2025年9月期第2四半期の平均契約単価は、約4900万円となっている。
メリットとデメリット
狭小戸建て住宅を購入するメリットとしては、価格だけではないという。
「共働き世帯においては、駅近で、好立地に住むことができるため、仕事と育児・家事の両立もしやすく、タイムパフォーマンス(タイパ)が良いです。コンパクト住宅を購入した後、ライフスタイルや家族構成の変化が生じ売却を必要とする際も、好立地の物件であることから、次の買い手がつきやすいです。住宅価格が高騰するなか、都心に手の届く価格で住むことができます。マンション等と比較すると、月々の管理費の負担など、維持費を抑えやすく、人生の資金計画が立てやすいです。自分好みのオプションを検討することもできます。注文住宅・セミオーダー住宅の場合、非常に柔軟な間取り設計や、オプション追加まで可能です。特に単身でコンパクト住宅を購入されたお客様には、趣味部屋をつくることができる点も人気です。
戸建ては周囲を気にせず、ペットを飼うことができます。コンパクト住宅でもスペパによる工夫を行うことで、居住環境を広く活用し、快適に過ごすことができます。戸建てであるため、お子様が遊ぶときなどに出る音などから階下とトラブルになるなどといった事態を防ぎやすく、ある程度、近隣を気にせず生活できます。
夫婦ともに在宅勤務している場合は、3階建て住宅は、住居スペースの階が分かれるため、空間を縦にしっかり分けることができ、同時にオンラインミーティングを実施することなどが容易です。書斎をつくることも可能です。同じ価格帯のマンションと比較しても、戸建ては広いスペースを確保でき、耐震や断熱といった性能について、ご自身で決定することができます」
一方、留意すべきデメリットもある。
「人によっては狭いと感じる方もいらっしゃるかもしれません。荷物が多い方には、収納スペースが少ないと感じるかもしれません。年齢を重ねると、3階建ては階段の上り下りがつらく感じるかもしれません。防犯対策やプライバシーの管理について、ご自身で行う必要があり、太陽光パネルを設置することに適さない戸建てもあります」
設計の工夫を施すことで住環境を広く
そして狭小戸建て住宅には、大きな社会的意義があると同社はいう。
「弊社は企業理念に『お客様のニーズを徹底的に追求し、価値ある不動産を届けます』と掲げ、 創業当初から『都心部で手の届く価格の住宅を提供する』ことを住宅事業のミッションとして取り組んできました。共働きの世帯が増加し、女性の社会進出がさけばれるなか、学童や保育園が発達している都心や駅近接の職住近接な好立地環境を望む声は年々高まります。
地価が高い東京都をはじめとする都心においては、土地にかかる費用を抑えるため、限られた土地において、コンパクトに建物を建てることが、物件価格全体を下げることに大きなインパクトがあります。価格を抑えるための企業努力としては、主に以下3点がございます。
・製販一体
土地の仕入れから、設計、建築、そして販売まで、グループ内で一貫した製販一体型のビジネスモデルで中間マージンをカットし、効率化により最適なリソース配分を施し事業の回転率を高くし、スケールメリットを活かして原材料費を抑えることで低価格を実現しています。実際に販売に携わる営業部門からお客様のニーズを迅速にグループ内で共有し、市場の要求に迅速に対応する体制を整え、手の届く価格で良質な住宅を提供するために企業努力を続けています。
・住宅メーカーが手を出しにくいような変形地などの土地を安く仕入れる
・高い企画力による、土地の最適活用に適した区割り・設計
1つの土地を2つ以上に分割する棟数現場、旗竿地にも建物を建てることができる設計と施工やロジスティックの知見を有しています。コンパクト住宅内において、階段の設計、見通しのいいアイランドキッチン、上げ天井、デッドスペースの有効活用など、あらゆる設計の工夫を施すことで、住環境を広くし快適な住み心地を提供します。例えば階段の工夫などについては、木材に関しては円安要因もあってコスト高になっていく傾向にあるものの、間取りや構造上、強い窓配置などの工夫で使用する材積(製材品の体積)を見直すことや、国産材と外国材をうまく価格変動に応じで柔軟に組み合わせることでトータルコストを抑えています」
(文=BUSINESS JOURNAL編集部)











