スシローなど外食各社、食べ残し回収で再生エネ発電…CO2排出削減・コスト削減・食品ロス削減

●この記事のポイント
・JFEエンジニアリング、大手外食チェーン企業と連携し「フードロス発電」サイクルを構築
・店舗から食べ残しなどの食品廃棄物を回収し、バイオガス発電所で発電して送配電会社に電力を売却し、JFEエンジの電力販売子会社がそれを買い戻して提携する飲食店に販売するという「フードロス発電」サイクルを構築する
・外食企業は食品廃棄物の焼却処分費用より低い費用でJFEエンジに回収してもらうのに加え、再生可能エネルギー由来の電力を調達
飲食店から出る食べ残しを回収して、再生可能エネルギーであるバイオガス発電で電力を生み出す――。そんな取り組みが進んでいる。JFEエンジニアリング(以下、JFEエンジ)は、あきんどスシロー、「ロイヤルホスト」を運営するロイヤルホールディングス(HD)、「焼肉きんぐ」を運営する物語コーポレーションなど大手外食チェーン企業と連携。店舗から食べ残しなどの食品廃棄物を回収し、バイオガス発電所で発電して送配電会社に電力を売却し、JFEエンジの電力販売子会社がそれを買い戻して提携する飲食店に販売するという「フードロス発電」サイクルを構築する。農林水産省の調査によれば、国内の外食産業では年間約100万トンの食品廃棄物が発生しており、大半がリサイクルされず廃棄されているが、今回のサイクルでは外食企業は食品廃棄物の焼却処分費用より低い費用でJFEエンジに回収してもらうのに加え、再生可能エネルギー由来の電力を調達することで温暖化ガス排出削減を実現できる。具体的にはどのようなスキームなのか。また、JFEエンジ、外食チェーンにとって、どのようなメリットがあるのかを追ってみたい。
●目次
循環型経済を実現する構造
まず、全体スキームについて整理してみたい。JFEエンジは次のように説明する。
「弊社では、各外食店舗や関連小売店から発生する食べ残し(廃棄される食品)を、地域の物流ネットワークを通じて集約します。収集された食品廃棄物は、環境に配慮した無臭・無害な形態で運搬され、弊社の全国6カ所のバイオガスプラントにて嫌気性消化(アナエロビック・ディジェスチョン)が行われます。このプロセスで有機物は微生物の働きにより分解され、メタンガスが生成され、同時に処理後の消化残渣は堆肥や飼料などとして再利用される仕組みです。生成したバイオガスは、ガスエンジンにより電力(および熱エネルギー)へと変換され、電力はFIT制度の特定卸供給にて電力会社アーバンエナジーへ卸します。事業全体として、廃棄物処理とエネルギー供給の両面で循環型経済を実現する構造となっております」
同事業を開始するに至った背景・理由は何なのか。
「本事業は、以下のような社会的・経済的背景を受けてスタートいたしました。
・食べ残し問題の深刻化と環境負荷削減の必要性
近年、食品ロスや過剰廃棄が環境や資源の観点から大きな課題となっております。従来の廃棄物処理方法では、温室効果ガスの排出や処理費用が増大することが懸念され、これを一挙に解決するソリューションが求められていました。
・再生可能エネルギーへのニーズの高まり
脱炭素社会の実現に向け、再生可能エネルギーの供給源として多角的なアプローチが必要とされるなか、食材廃棄物というリソースを有効活用することで、環境負荷を低減しつつエネルギー自給率向上にも寄与できると判断いたしました。
・持続可能な社会への企業責任
外食チェーンや関連業界において、CSR(企業の社会的責任)の一環として環境改善に取り組む動きが強まるなか、弊社としてもパートナーとともに循環型ビジネスモデルを構築することで、双方にメリットが生じると考え、この事業に踏み切りました」
太陽光発電との比較
発電ではJFEエンジのバイオガス発電が使われるが、どのような技術なのか。太陽光発電など他の再生可能エネルギー発電と比較して、コストや発電効率などの面で、どのような特徴があるのか。
「技術概要としては、弊社の発電技術は、最新の嫌気性発酵技術をベースに、専用タンク内で微生物を最適環境下に維持することで、有機物を効率的に分解・発酵させ、メタンを高濃度で生成します。その後、このバイオガスをガスエンジンにより発電する仕組みです。
太陽光発電との比較としては、以下のようになっております。
・運転時間と安定性
バイオガスプラントは24時間連続運転が可能であり、天候や季節に左右されず安定した発電が実現できます。対して、太陽光発電は日照条件や天候に依存するため発電量が変動します。
・設置コスト・土地利用
初期設備投資や設置スペースについても、食材廃棄物を有効利用するため、必ずしも広大な土地が必要とならず、既存の廃棄物処理拠点や都市部近郊での設置が可能です。
・経済性
廃棄物回収自体がコスト削減(従来の廃棄処分費用の削減)につながる点や、FIT制度による安定収入が期待でき、総合的な事業収益性の向上が見込まれます」
外食チェーン側のメリット
外食チェーン側としては、食べ残し回収や電力買い戻しなどのコストがかかるが、どのようなメリットが見込めるのか。
「食べ残し回収や電力買い戻しといった直接的なコストが発生する場合でも、外食チェーン側には以下のメリットがございます。
・コスト削減効果
食材廃棄物の処理費用が焼却処理に比べ削減されるとともに、回収後の廃棄物がエネルギーに変換されることで付加価値を生むため、従来の廃棄物処理にかかる経費を電力費と一部相殺できます(※現状の電力費用次第で、相殺できないこともあります)。
・環境・イメージ向上
自社の廃棄物がエネルギーに変換される循環型システムにより、環境配慮型経営の一環として企業イメージの向上につながります。これにより、消費者からの信頼度やブランド価値の向上も期待されます。
・規制対応と補助金の活用可能性
官公庁や自治体の環境政策に合致する取り組みとして、各種補助金や優遇制度の対象となる可能性があり、長期的なコストメリットがあると考えております」
最後に、同事業の今後の展開・拡大計画について聞いた。
「弊社は、全国6カ所のバイオガス発電事業を基に、今後以下のようなステップで事業拡大を検討しております。
・提携店舗の拡大
初期導入店舗での実績を踏まえ、より多くの外食チェーンおよび小売店舗との連携を全国規模で推進していきます。
・プラント効率の向上
受け入れる廃棄物の品目や量の増加により、運転効率や発電効率のさらなる最適化を図ります。
・技術革新とコストダウン
発酵プロセスの最適化や自動運転システムの導入により、運転コストのさらなる削減および発電効率のアップを追求してまいります。
・サーキュラーエコノミーの推進
加えて、発電後の副産物である消化残渣の有効活用(堆肥や飼料への転換など)により、地域の農業や環境保全とも連携するビジネスモデルの構築を目指しています」
(文=BUSINESS JOURNAL編集部)











