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グローバル投資家から“選ばれない国”を変える──志水雄一郎氏が「GRIC2025」を通じて描く日本再生の道

2025.10.30 2025.10.30 11:52 企業

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「日本は、世界の投資家から見れば“投資する意味がない国”になっている」

 衝撃的な言葉を放つのは、フォースタートアップス株式会社 代表取締役社長である志水雄一郎氏。

 日本経済の停滞、新産業の不在、そして起業家が育ちにくい構造。こうした課題を目の当たりにしながら、志水氏が立ち上げたのがスタートアップカンファレンス「GRIC」です。

 今回は、GRICがスタートしたきっかけや、これまでのGRICやGRIC2025、さらに未来に続く日本のスタートアップに込めた想いを志水氏に語っていただきました。

日本には新たな産業が生まれづらい?その構造的な理由とは

——フォースタートアップスがスタートアップカンファレンスであるGRICの開催に至った経緯やきっかけを教えてください。

志水氏 GRIC開催の理由を知ってもらうためには、まず日本経済や日本のスタートアップが抱える課題からお話ししたほうがわかりやすいかもしれません。

 日本は現在、OECD加盟国の中でも賃金水準は加盟国平均を下回っています。よく経済を語る際に「ビッグマック指数」というキーワードを耳にすると思いますが、その指数も調査対象国で下位に位置しています。つまり、日本人は低い生活水準の中で暮らしているのです。

 同じ時代に、海の向こうでは日本の2〜3倍の平均年収で働く国があるにもかかわらず、日本人は世界の一次情報を十分に得られず、自国の衰退に危機感を抱けていません。

 こうしているうちに、日本は少子高齢化と生産人口の減少が進み、一人当たりの生産性も低下しています。外貨を獲得できるような新産業も育っていません。

 実は、アメリカも日本も、自動車産業やメーカーなど既存産業の株価指数の成長率に大きな差はありません。にもかかわらず、アメリカの株価指数が伸びているのはGAFAMをはじめとした新産業の成長が寄与しているためです。

 つまり、日本が自国の衰退を食い止めて成長していくためには、現在のアメリカやかつてのトヨタやソニーが誕生した頃の日本のように、新産業の誕生が必要になります。しかし、実は現在の日本には新産業が誕生しづらい構造的な課題があるのです。

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——日本に新産業が誕生しない原因はどのようなものでしょうか?

志水氏 おもに、2つあると考えています。

 まず、「日本人が起業家をブライトキャリアと捉えていない」ことです。

 課題を特定し、自らでミッションやビジョンを語り、仲間を集めて事業を興し、社会システムの発展に貢献する。資産を形成したら、基金をつくるなどして世の中に寄付していく。これほど素晴らしいブライトキャリアはありません。

 しかし、日本では優秀な子どもに対して「大企業に入りなさい」と話す親は多くても、「起業の道を選びなさい」と話す親は少ないと思います。

 世界大学ランキングにランクインしている大学では、上位にいけばいくほど、卒業生の起業率が高い傾向にあります。一方、日本では国内上位の大学であっても、卒業生の起業率はそう高くありません。

 もうひとつが「日本の人材ビジネスが十分にその役割を発揮しきれていない」ことです。

 大手の人材紹介会社などは、優秀な人材から応募があった場合、多くは大企業やコンサルティングファームを紹介します。たとえ、将来的に数兆円規模の価値や雇用を生み出す可能性を秘めた人であっても、“雇われる”キャリアを勧めるケースが少なくありません。

 私は、本来の人材ビジネスは、国全体の競争力やイノベーション産業の構造を見据えたうえで、企業や人材の在り方をどう考えるか、海外人材をどのように取り入れていくか、といった観点から逆算して展開されていくこと望ましいと考えています。

 しかし現状では、案件数や予算規模の大きな企業への人材紹介に比重が置かれているように見受けられます。

 人材ビジネスは、人が働き、収入を得るという社会の根幹に関わる意義深い仕事です。一方で、世界で進む“イノベーション至上主義”の潮流とは、少し距離があるようにも感じられます。

 これらは、世界にある一次情報を日本人が把握していないことから起こる現象です。

日本のスタートアップカンファレンスにグローバル投資家は興味なし!?

——志水さんはもともとDODAの生みの親でありHR産業に深く関わっていましたよね。こういった課題や日本のスタートアップに対する気づきを得たきっかけはあったのでしょうか?

志水氏 10年ほど前、当時ガンホー・オンライン・エンターテイメントの会長であり、私の中高のクラスメイトだった孫泰造さんが、ヨーロッパ最大規模のスタートアップカンファレンスであるSLUSH(スラッシュ)に登壇した際の話を聞きました。

 彼は、「世界ではスタートアップの経営者が登壇ステージに上がると、ロックスターのようにフィーチャーされている」と興奮していたんです。実際、スタートアップへの資金調達市場が日本では年間1兆円程度なのに対し、アメリカなどではスタートアップへの資金調達市場は最盛期は50兆円ほどまでに上りました。

 このように、日本は調達市場が小さい上に、スタートアップカンファレンスも非常にクローズドでドメスティックなイベントが多かったのですよね。これでは、ユニコーン、デカコーンの誕生につながるような大きな資金調達は難しくなります。

 そこで、日本でも、世界の有力なVCにスタートアップが出資してもらえる機会をつくるため「SLUSH ASIA」というスタートアップカンファレンスを開催し、私もサポートに入りました。

 カンファレンス自体は何年か継続したものの、最初は有力VCがまったく参加してくれなかったのです。つまり、世界のVCは「日本に投資する意味がない」と感じていたのですよね。その状況を理解していないのは日本人だけです。

「スタートアップを民主化する」ために生まれたGRIC

——そういった、実際に世界から目を向けられない日本のスタートアップの現状を目の当たりにしたことが、GRICの開催につながるのですね。

志水氏 そうですね。GRIC開催でもっとも大事にしたことは「スタートアップを民主化すること」です。とにかく、世界に対して開かれた、オープンなスタートアップカンファレンスにすることにこだわりました。ピッチコンテストも審査員の約3割が海外の投資家です。

 開かれたカンファレンスになることで、世界でユニコーン、デカコーンをつくった投資家が日本のチームに対して知見を提供してくれたり、同じ領域で活躍する経営者とコミュニケーションをとって学んだりという機会を多く設ける必要があると感じたこともGRICのオープン化の理由のひとつです。

 もちろん、ユニコーン、デカコーンにスケールできるような大きな資金調達ができる場にすることも、世界に対してオープンなカンファレンスにした狙いです。

 また、オープンにすることで、「スタートアップと距離がある領域をつなぐ」ことも意識しています。

 スタートアップ同士のコミュニケーションで生まれる気づきも大切なのですが、そこに大企業や官公庁など、やや性質の違うものが掛け算される場をつくりたいと感じていたためです。私としては、米国のように、エンタメやスポーツに関わる方々が自身の得意分野で、スタートアップイノベーションに投資するという流れもつくりたいと思っています。

 実際、今回開催されるGRIC2025でも株式会社BMSGのCEOであるSKY-HIさんや、俳優のMEGUMIさんが登壇します。

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——GRICをスタートするにあたって、注目していた業界などはあるのでしょうか?

志水氏 スタートアップと聞くと、どうしてもITやディープテックなどの領域をイメージしがちですが、それ以外の領域のスタートアップをフィーチャーできる場でもありたいと考えています。

 実際、おにぎりやコーヒーなど、日本ではそこまで知名度は高くないものの、グローバルでは有名なユニコーン企業になっている企業もあります。このような非IT・ディープテック領域の企業が、GRICという場で日本の強みを活かしてイノベーションを生み出すきっかけを掴んでほしいですね。

——実際に、GRICでグローバルでの調達や取り組みが成功した例はありますか?

志水氏 知的障害などを持つ方々の才能に着目してIP化し、アパレルなどにアウトプットして販売する事業を行う、へラルボニーという岩手県のスタートアップが、フランスのLVMHという企業の支援を受けてフランス進出を果たしています。

 また、ゲノム大規模構築技術を展開するLogomixというスタートアップは、GRIC2023のピッチコンテストで最優秀賞を受賞したことをきっかけに、28億円を調達し米国での事業を加速させています。

GRICが世の中に与える影響とは

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——GRICを継続して開催する中で、カンファレンスの内外で変化は感じますか?

志水氏 近年になればなるほど、明確に政府との連携は高まっていますね。これは、政府が2022年にスタートアップ育成5か年計画を国策として策定したことも大きな要因になっています。

 昨年のGRIC2024では就任3日目の石破前総理大臣からもメッセージをいただきました。

 また、当社とジェトロで国内のスタートアップカンファレンスを一定期間に集め、「JAPAN INNOVATION WEEK」として海外に発信したイベントでも、内閣府、経済産業省にも協力いただきました。

 今まではオープンな中でも、ビジネスパーソンだけでクローズドになっていた部分があったように思いますが、政府など“官”の視点からもイノベーションの場のひとつであると認識されはじめていると感じます。

——実際に、民間で行われているスタートアップカンファレンスが行政に影響を与えていると思うことはありますか?

志水氏 東京都の「SusHi Tech Tokyo」や名古屋市の「TechGALA Japan」など、各自治体がスタートアップカンファレンスを開催するケースも増えていますね。

 ただ、これはしかるべき変化ではないでしょうか。

 政府が国家戦略としているスタートアップ育成5か年計画では、10兆円というスタートアップへの投資額を目標としています。これだけの目標は、民間の行動だけでは達成できません。日本のためにグローバル規模で投資を集められる責任者を置き、官民一体となって進めていける部分が拡大していけばよいですね。

——GRICは、日本のスタートアップにどのような変化をもたらすと感じていますか?

志水氏 多くの人が「起業家がブライトキャリアであることを知り、起業をする人が増える」と考えています。

 これは、GRICがオープンなスタートアップカンファレンスであることに起因しています。

 ピッチで真剣に自分自身の挑戦を語る真剣な表情に、人は心を震わせるのだと思っています。それはやはり、彼らが自分たちの未来を変えてくれる可能性がある存在だからですよね。

 そして、そのアントレプレナーシップは先天的に備わっているものではなく、環境や経験などで後天的に備わるものです。GRICのピッチなどを見ると、「すごい」と感じる一方、ステージに立っている起業家と自分に大きな違いがないことに気がつくはずです。

 私が好きな言葉に、ガンジーの「Be the Change You Wish to See in the World(あなたが見たいと思う世界の変化に、あなた自身がなりなさい)」という言葉があるのですが、課題を見つけたら自分が成長して、変化を起こすことが必要です。それができないことに、生まれながらの差が影響しているわけではありません。

 誰もが、ザッカーバーグにもイーロン・マスクにもなれる。何にでもなれる可能性を持っているのです。

 多くの人がこの気づきを得るために、起業家を皆で応援するために、ひいては日本が幸せになるために。オープンであることなどのGRICの持つ仕組みは、絶対的に必要な要素であると思っています。

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「日本ではやっと皆がイノベーションを語りはじめている。灯りはじめた火を大きな炎にするために、GRICを通じてここから燃やし続けないといけない」

 そう語る志水氏。

 GRICは、単なるスタートアップの祭典ではありません。志水氏が描くのは、挑戦する人が応援され、誰もがイノベーションの担い手になれる社会です。

 小さな火種がやがて日本を押し上げる力へ——GRICの挑戦は、今年もその先も続きます。

「GRIC2025」の詳細はこちら
【公式】GRIC2025 (GROWTH INDUSTRY CONFERENCE)

※本稿はPR記事です。

BusinessJournal編集部

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