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600店舗超え、ポーカーが爆発的人気に…若者が集まり新たなコミュニティも誕生

2025.11.21 2025.11.21 00:33 企業

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●この記事のポイント
・日本のポーカー市場が急成長し、600店超のアミューズメントカジノが誕生。若年層や女性プレイヤーも増え、カルチャーとして定着しつつある。
・「NEKOKAJI」オーナーの田上氏は、初心者でも入りやすい環境づくりを重視し、「NIPPON SERIES」で地方大会も拡大。合法・健全な業界発展を目指す。
・プレイヤー“さよきち”氏は「読み合い8割」と語り、ポーカーを人生や人間関係に通じる“知的競技”と捉える。新しい文化の担い手たちが登場している。

 かつて“危ない遊び”の代名詞だったポーカーが、いま日本で新たなカルチャーとして根を下ろしている。「NIPPON SERIES」を主催し、秋葉原で人気アミューズメントカジノ「NEKOKAJI」を運営する田上裕斗氏は、その変化を日々の現場で体感している。

●目次

コロナ禍を転機に、若年層・女性層が台頭

「ポーカーが“流行っている”といわれ始めたのは、コロナ禍の頃からですね。それまで“ギャンブルっぽい”“怖い”というイメージが強かったのが、今では“マインドスポーツ”という印象に変わりました」(田上氏)

 田上氏によると、ポーカー人気の火付け役はYouTubeだった。登録者数100万人を超えるポーカーYouTuber・横澤氏らの配信が、在宅時間の増えた若年層に刺さり、アプリ「m HOLD’EM」(サミー)などを通じて裾野が一気に広がった。

 実際、アミューズメントカジノの店舗数はコロナ前の約200店から、現在では全国600店舗以上にまで急増。主要都市だけでなく、地方都市にも続々と出店が進んでいる。

「今は20代後半から30代前半の男性が中心ですが、女性プレイヤーも徐々に増えています。特に“怖くない”“話しかけやすい”空間づくりが大事だと思っています」(同)

秋葉原から広がる“入りやすいポーカー文化”

「NEKOKAJI秋葉原」は、メイド服姿のスタッフが接客する“カジュアルなポーカースポット”だ。

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「NEKOKAJI」の店舗

「初心者でも入りやすく、スタッフと会話を楽しみながらプレイできる空間を目指しています。メイド喫茶文化に近い雰囲気が、秋葉原らしい親しみやすさにつながっていると思います」(同)

 プレイヤーの平均滞在時間は6時間前後。

「仕事終わりに立ち寄って、仲間と交流する“サードプレイス”になっている」と田上氏は語る。初心者講習は1回15〜30分ほどで無料。来店者の約3割が未経験者だという。

「『怖い場所』ではなく、『学べる場所』としてポーカーを体験してほしい。その思いが一番強いですね」(同)

「日本シリーズ」…地方へ広がる合法的トーナメント

 田上氏が代表理事を務める「NIPPON SERIES」は、サミーや森永製菓など上場企業が協賛する国内最大級のポーカー大会だ。

「合法的なスキームで全国展開している点が特徴です。これまで大会が行われてこなかった地方都市でも開催し、裾野を広げています」(同)

 2024年は福岡や富山でも初開催。地方の熱気が東京・大阪に負けない勢いで高まっているという。大会は「ポーカー=ギャンブル」から「頭脳スポーツ」への転換を象徴する存在でもある。

「大会を通じて、企業や自治体が関わりやすい環境を整えたい。スポンサー企業も徐々に増えており、今後は一層の健全化が求められます」(同)

市場規模は数百億円規模へ、IR法案が追い風

 国内アミューズメントポーカーの市場規模は、店舗売上・大会・関連イベントを合わせて数百億円規模に達するとみられる。参加者層の拡大、店舗の多様化、スポンサーの増加が相まって、「eスポーツに近い頭脳競技ビジネス」として成長している。大阪IR(統合型リゾート)の開業も追い風だ。

「カジノができることで、健全なギャンブルや知的競技への関心が高まると思います。
アミューズメントカジノも、より安全で透明性の高い運営が求められる時代になるでしょう」(同)

 田上氏は、台湾や欧州のように「一部合法化」が進めば市場はさらに拡大すると見ている。

「法制度の整備が進めば、一過性ではなく、文化として定着するはずです」(同)

プレイヤーが語る「読み8割」の世界

 一方、現場のプレイヤーとして活躍する「さよきち」氏は、ポーカーの魅力を“読み合い”と“自己対話”の深さに見出している。

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「最適解を選んでも勝てない──そこが他の競技と決定的に違う点です。不完全情報の中で最善を選び続ける、その緊張感がたまらないですね」(さよきち氏)

 彼女は“勝敗を分ける要素”について、こう語る。

「『運』『経験』『読み』の3つのうち、8割は“読み”。注意深く相手の心理や流れを見極める力が最も重要だと思います」(同)

「ポーカーって、人生にも人間関係にも似ているんです。ポーカーで丁寧な人は生き方も丁寧。相手の立場を考えられる人は、ハンドでも相手の立場を想像できる。そういう気づきがたくさんあるんです」(同)

 さよきち氏は、プレイヤーであると同時に、ポーカー講師・イベントディレクター・演出家としても活動する。近年はポーカー関連の仕事が増え、プレイヤーと業界の“橋渡し役”を担っている。

「ポーカーを職業として続けるのは簡単ではありませんが、経済的にも、精神的にも、やりがいのある最高の仕事だと思っています。誰かのロールモデルになれるようなプレイヤーでいたいですね」(同)

「ギャンブル」ではなく「学び」としてのポーカー

 ポーカーがここまで広がった背景には、「共通の趣味を通じたつながり」がある。経営者やクリエイター、学生など、異なる立場の人々が同じテーブルを囲み、自然に交流が生まれる。

「ポーカーの魅力は“勝ち負け”だけではなく、“人と出会えること”にあります。全く違う業界の人たちが会話し、つながる。その出会いの場をつくるのが、私たちの使命です」(同)

「NEKOKAJI」では、スタッフとプレイヤーが協力しながら初心者をサポートする文化が根づいている。初心者でも安心してプレイできる環境を整えることで、“観るポーカー”から“参加するポーカー”へと裾野が広がっている。

 世界ではWSOP(ワールドシリーズ・オブ・ポーカー)を筆頭に、賞金総額数百億円規模の大会が開催されている。日本でも、トーナメント文化が定着しつつあり、海外遠征で優勝する日本人も増えてきた。「日本人プレイヤーは我慢強く、トーナメントに強い。世界で結果を出せる土壌は整いつつあります」と田上氏は語る。

 ポーカーは、単なる遊びでも、ギャンブルでもない。不完全な情報の中で、最善を選び続ける“知の格闘技”だ。そこには、勝負のスリルだけでなく、人生やビジネスにも通じる思考法が詰まっている。

 田上氏らがつくる「学べる場」と、さよきち氏らが体現する「生き方としてのポーカー」。その両輪が、いま新しいカルチャーを形づくりつつある。

「日本のポーカー界は、これからが本番です。舵を取る人間たち次第で、この業界の未来は変わると思っています」(さよきち氏)

 この言葉にあるように、ポーカーの市場は成長段階にある。今後、どのように発展していくのか注視したい。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部)