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すかいらーく「2030年に太陽光2000施設」の現実味…PPA調達と屋根活用の現在地

2026.10.11 06:00 2026.10.10 23:14 企業
文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=佐伯俊也/エネルギー政策研究家

すかいらーく「2030年に太陽光2000施設」の現実味…PPA調達と屋根活用の現在地の画像1

●この記事のポイント
すかいらーくHDは、東北84店・関西85店・関東205店で太陽光由来の電力をPPA(電力購入契約)で調達している。2025年12月にはバーミヤン3店で、自店の屋根を使うオンサイト発電も始めた。2030年に太陽光導入2,000施設を掲げる同社の動きから、ロードサイド店舗の屋根と駐車場の新たな役割、EV充電の可能性と課題を読み解く。

 ガストやバーミヤンを展開するすかいらーくホールディングス(HD)が、店舗で使う電気の調達先を少しずつ組み替えている。2026年4月には、関東エリアの205店舗に向けて、屋根上太陽光の電力を約20年間受け取る契約がスタートした。

 この種のニュースは、たいてい「脱炭素」「ESG」の一言で片づけられる。それ自体は間違いではない。ただ、契約の中身を一件ずつ並べてみると、別の論点も見えてくる。郊外の幹線道路沿いに建つ店舗の「屋根」と「駐車場」を、この先何に使うのか、という論点だ。

●目次

先に動いたのは「店の屋根」ではなく「遠くの発電所」

 まず事実関係を整理しておきたい。すかいらーくHDの再エネ調達は、自店の屋根にパネルを載せるところから始まったわけではない。

 2024年11月、東北電力のオフサイト型コーポレートPPA(電力購入契約)を導入し、宮城・福島の低圧太陽光30地点から東北の84店舗へ、20年間電力を受け取る仕組みをつくった。2025年4月には関西電力と組み、約1,390kWの設備から関西の85店舗へ。同年7月の追加契約分を合わせると、関西では約2,770kWの設備から物流拠点と118店舗へ供給する体制になっている。

 オフサイトPPAは、店舗の敷地外にある発電所の電気を、送配電網を通じて長期契約で買う方式だ。自社で設備投資を抱えずに済むかわりに、送配電網の利用料はかかるし、停電時に店で使える電源になるわけでもない。

 冒頭の関東205店舗の契約も、仕組みはこのオフサイト型である。発電するのは関東3カ所の屋根上設備(合計定格出力4,890kW)で、東北電力が小売電気事業者として供給する。屋根上設備を使ったPPAはグループとして初めてだという。

 自店の屋根を使う「オンサイトPPA」は、2025年12月に鈴与商事と組んで始めたばかりだ。対象はバーミヤンの甲府下飯田店、三郷戸ヶ崎店、宇都宮徳次郎店の3店舗。3店合計の設置容量は39kW、年間の想定発電量は約4万6,000kWhで、そのうち約4万3,500kWhを店内で使う想定になっている。

 この小さな数字が、実は多くを語っている。

自家消費率94%が意味すること

 想定自家消費量を発電量で割ると、約94%。屋根でつくった電気は、ほぼ全量が店内の空調や厨房機器で使われる計算だ。

 太陽光の発電量が最も多いのは正午前後。ファミレスの昼のピークと重なる。日中に客席を冷やし、厨房を回し続ける飲食店は、「昼につくった電気を昼に使う」条件がそろった業態といえる。

 裏を返せば、少なくとも現行の規模では「余る電気」はほとんど出ない。1店あたり約13kWという容量では、急速充電器1基(公共用ではすでに9割が50kW以上の出力)すら賄えない。屋根の太陽光とEV充電を直結させる構想には、現時点で数字の裏づけがない。そう見ておくのが妥当だろう。

「店舗の屋根は面積が限られるので、太陽光で賄えるのは使用電力の一部です。オンサイトの価値は、その一部の単価を20年近く固定できる点にある。燃料価格や市場価格の変動にさらされる部分を減らせるわけです。利幅の薄い外食ほど、この“読める費用”の意味は大きいと思います」(エネルギー政策研究家・佐伯俊也氏)

2030年に「2,000施設」というKPI

 それでも屋根に注目する理由は、同社自身が掲げる目標にある。2026年1月、すかいらーくHDは環境大臣に提出した「エコファーストの約束」で、CO2排出量を2030年に50.4%削減し、2050年に実質ゼロとする方針を示した。そのうえで、店舗や工場で太陽光を導入した施設数をKPIに据え、2030年に累計2,000施設を目指すとしている。

 グループの店舗数は約3,100。2,000施設の多くが店舗になれば、全店の過半の屋根にパネルが載る計算だ。オンサイトの実績が3店舗にとどまる現状との距離は大きく、残り4年余りでどう埋めるのかが今後の焦点になる。

 障壁としてよく挙がるのが、物件の所有形態である。賃借店舗では、屋根に設備を載せるのに家主の同意が要る。20年前後のPPA契約期間と、賃貸借契約の残り期間がかみ合わないこともある。築年数によっては、屋根の耐荷重の確認や補強も必要になる。

「ロードサイドの飲食店は、借地や建て貸しの物件が少なくありません。オーナーから見れば、屋根の上の設備は“契約が終わったとき誰が撤去するのか”という話になる。数百店単位で進めるなら、PPA事業者、オーナー、テナントの三者で使える標準的な契約の型をつくれるかどうか。そこが分かれ目になるはずです」(不動産コンサルタント・秋田智樹氏)

駐車場とEV充電——論点は「電気」より「時間」

 では、もう一つのアセットである駐車場はどうか。

 市場の現状から確認しておく。経済産業省の資料によると、2025年の国内EV販売は約6.3万台で、新車販売に占める比率は約2%にとどまる。充電器は2026年3月時点で約10.6万口まで増え、政府は2030年に30万口という目標を掲げる。公共用の急速充電器のうち商業施設に置かれたものは1,131口で、1年で219口増えた。2025年度補正予算の執行では、コンビニや商業施設などへの150kW以上の高出力充電器を後押しする補助区分も新設されている。

 すかいらーくとEV充電の縁は意外に古い。2012年には、ガスト9店舗に設置していた充電設備を来店客に無料で開放したことがある。ただし、現在のグループとしてのEV充電の方針は公表されていない。ここから先は、業界全体を見渡したうえでの考察として読んでほしい。

 急速充電は、一般に30分前後の継ぎ足しで使われることが多い。コンビニの立ち寄りよりは長く、ファミレスで一食とる時間に近い。ドリンクバーや軽食で30分から1時間を過ごせる空間は、充電待ちとの相性がいい。

 とはいえ、EV比率が2%の市場で、充電が来店動機の主役になる段階ではない。投資対効果を考えれば、当面はインターチェンジ周辺や幹線道路沿いなど、経路充電の需要が見込める立地に絞った展開になるとみられる。充電待ちの客が長く席を占めれば、ピーク時の回転率が落ちるという副作用もある。

「充電器は置けば使われるものではありません。稼働率が高い場所の条件は、幹線道路から入りやすいこと、営業時間外も使えること、待ち時間を過ごせる場所があること。ファミレスは3つ目が強い一方、2つ目が課題になりやすい。設備投資と運営を充電事業者に任せ、店は場所と滞在価値を提供する。そんな分担が現実的でしょう」(佐伯氏)

他業態と並べて見える、ファミレスの位置

 屋根、駐車場、滞在空間の3つで並べると、業態ごとの違いがはっきりする。

 物流倉庫は屋根面積で圧倒するが、一般の客は来ない。スーパーやドラッグストアは駐車場が広いものの、滞在時間は短い。コンビニは急速充電器の設置が進む一方、座って過ごす場所は限られる。

 ファミレスは、どれか一つが突出しているわけではない。そのかわり3つがそろっている。全国約3,100店、年間約3億人が来店するというネットワークの厚みも、ほかの外食チェーンにはない資産だ。

「本業の外」を見るための物差し

 すかいらーくの取り組みは、現時点では「電力調達の脱炭素化と、電気代の長期的な安定化」と読むのが正確だろう。屋根や駐車場を新たな収益源に変えるような事業転換は、計画としてはまだ示されていない。

 それでも、ロードサイド店舗の屋根と駐車場に、食事以外の役割を持たせる余地はある。今後を見るうえでの物差しは三つだ。オンサイト導入店舗がどのペースで増えるか。賃借物件でも使える契約スキームが固まるか。そして、EV充電を含む駐車場の使い方について、同社が具体的な方針を出すかどうか。

 人口減少と人手不足が続くなか、店舗という固定資産の使い道を問い直す作業は、外食に限らず店舗ビジネス全体に突きつけられている。すかいらーくの屋根の上で起きている変化は、その行方を占う一つの手がかりになる。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=佐伯俊也/エネルギー政策研究家)

【主な参照データ・出典】
東北電力・すかいらーくHD「オフサイト型コーポレートPPAサービス」発表(2024年、東北84店舗)
関西電力「すかいらーくホールディングスとのコーポレートPPA実施」(2025年3月31日、2025年7月1日)
鈴与商事・すかいらーくHD「低圧受電店舗でオンサイトPPAを初導入」(2025年12月9日)
すかいらーくHD・東北電力 関東205店舗向け屋根上太陽光オフサイトPPA契約発表(2026年3月25日)
すかいらーくHD「エコファーストの約束」(2026年1月14日、環境省掲載)
経済産業省「最近の自動車政策の動向と充電インフラ」(2026年6月2日)
2012年のガスト店舗EV充電設備無料開放(オリコン、2012年5月24日)

BusinessJournal編集部

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公開:2026.10.11 06:00