リリースに記載された流動化スキームを解読してみると、ざっと以下のようになる。
売却対象は保有133コースのうち90コース。正確には、各コースはアコーディアのゴルフ場保有子会社が保有しているので、保有子会社株の売却になる。売却価格は1117億円以上で、それ以下なら売らない。売却先は実質シンガポールの投資家。まずシンガポールに信託会社を設立し、その信託会社の株をシンガポールで上場させ、投資家から資金を集める。実際に90コースの保有会社を買うのは、信託会社の100%出資で日本に合同会社形態で設立するSPC(特別目的会社)となる。アコーディアもこのシンガポールの信託会社の株を25%保有し、信託会社から配当を受け取る。
●9割配当は2期で反故
アコーディアは大和証券系の投資会社・大和PIパートナーズ引き受けで発行する新株予約権付きローンで200億円を調達、売却代金約1100億円との合計1300億円強のうち、450億円を自己株取得に使う。自己株取得は公開買い付けで実施し、買い付け単価は1400円。発行済みの約3割を上限にする。大規模な自己株買いで1株当たりの株主価値も上がるので株主利益に寄与する、というロジックである。
確かに3割も自己株買いをやれば、普通はEPS(1株当たりの当期純利益)やBPS(1株当たりの純資産)は飛躍的に高まる。大和PIがすべての新株予約権を権利行使すれば保有割合は11%程度になり、EPSやBPSの計算に使う株数は、自己株取得で3割減る分と大和PIの権利行使で増える分を相殺すると、アセットライト実施前の82.5%になる。少なくともEPSやBPSを計算する際の分母は17.5%も小さくなる。
だが、リリースにも、同時に公表された説明資料にも、流動化をしたら新アコーディアのバランスシートや業績がどうなるのか、といった肝心要の数字の記載がほとんどない。従って、EPSやBPSがどうなるのかもわからない。
機関投資家と一部経済メディアを対象に開催された説明会でも、EPSやBPSが上がるのか下がるのかにすら言及せず、唯一言及したのがROE(株主資本利益率)。現在約6%のROEが10%以上になる、という点のみだ。ROEは当期純利益を純資産で割って算出するので、当期純利益が減っても純資産がそれ以上の割合で減ると、減益なのにROEだけは上がるという現象が起きる。きちんと実額を示してくれなければ、ROEが健全に上昇するのかどうかわからない。