ここからPGMの敵対的TOBの前哨戦となる、アコーディアとオリンピアの壮絶な株主総会委任状争奪戦が始まった。その結果、株主総会でオリンピア提案の役員候補は全員否認され、アコーディア提案の役員候補が全員役員に選任された。これで一件落着とアコーディアが喜んだのも束の間。事態は敵対的TOBへ向かった。
●事前通告のない敵対的TOB宣言
それは5カ月後の11月15日のこと。PGMが突如、アコーディアに対するTOB実施を発表した。TOB期間は11月16日から翌年1月17日まで。同社はこの期間中にアコーディア株を上限50.1%、下限20.0%で取得し、TOB完了後はアコーディアとの経営統合を目指すとした。買い付け価格は1株当たり8万1000円で、発表同日のアコーディア株終値5万3200円に52.3%を上乗せしたプレミア価格だった。
まさに、事前通告のない敵対的TOB宣言だったが、このTOBに介入してきたのが、前出のレノ・グループだった。TOB終盤の13年1月7日、関東財務局長に提出された「大量保有報告書」(以下、報告書)によると、1月4日時点でのレノのアコーディア株保有割合は13.75%と、いつの間にかレノがPGMより先に筆頭株主になっていたのである。
水面下でターゲットの株を買い占め、筆頭株主になったところでターゲットに要求を突きつけ、買い占め株の買い取りを迫るのが旧村上ファンドの常套手段。今回もTOB実施と同時に水面下でアコーディア株を買い集め、株主還元の強化を要求するなど、往年の旧村上ファンドを彷彿とさせる行動を見せている。
アコーディアの株価はTOB実施直後7万円台半ばまで下げ、その後は横ばいで推移していた。ところが12月下旬から急に騰勢を強め、東証の13年大納会では終値ベースで8万400円につけ、TOB価格との差を縮めたが、これは「レノの猛烈な買い占めが原因」(証券アナリスト)と推測された。報告書により、レノが取得したアコーディア株13.75%のうち、12月25日から1月4日の5営業日だけで8.78%を取得していたことが明らかになったからだ。
レノの買い占めが明らかになった翌日の1月8日、アコーディアの株価は一時8万2800円とTOB価格を大きく上回った(同日の終値は8万0800円)。1月15日になると、報告書で1月11日までにレノは18.12%まで買い占めていたことが判明。1月4日以降の1週間で保有割合を4.37ポイントも積み上げていたのだ。そして保有割合18%超えが確実になった1月13日、レノはアコーディア宛に「TOB完了時点でPGMとの経営統合交渉を開始すること、PBR(株価純資産倍率)1倍を保てるまでの自社株取得を行うこと」を骨子とする要求書を送り、レノが指定した回答期限前日の1月16日に、2点とも「基本的に了承」の回答を引き出している。
しかしレノの介入が、TOBを不成立に導いた。TOB最終日の1月17日正午過ぎ、「アコーディアが自己株取得強化の原資として、10コースを150億円程度で売却検討」との情報が市場に流れ、アコーディアの株価が一時8万4000円まで跳ね上がった。その結果、PGMのアコーディア株取得割合は17.0%で終わってしまった。目標としたTOB下限の取得割合20.0%をも大きく下回る大敗により、PGMの経営統合の野望が潰れた。
●斜陽業界での生き残りをかけたスキームか
アコーディアが打ち出したスキームはこうした泥仕合の産物であり、同時に「斜陽業界での生き残りをかけたスキーム」(証券アナリスト)であるともいえる。
ゴルフ業界を取り巻く環境は厳しい。日本生産性本部の調査によると、ゴルフ人口(ゴルフ場利用者の延べ人数)は1992年の1480万人をピークに減り続け、12年は790万人とピーク時のほぼ半分になっている。急速な市場縮小に加え、近年は「ゴルフ人口の高齢化」にも悩まされている。
例えば、12年のゴルフ人口の年代構成を見ると、50代以上が全体の約60%を占めている。そのうち60代が最多の約23%、70代が約19%、50代が約18%になっている。業界では「70代になるとプレー回数が激減する」といわれているが、ゴルフ人口中核の団塊の世代が70代に近づいており、業界では「減少加速」に頭を抱えている。