その一方で、ゴルフ場の数が増えている。日本ゴルフ場事業協会の調査によると、12年度現在の全国ゴルフ場数は2405コース。ピーク時(02年度)の2460コースより減っているものの、ゴルフ人口ピーク時の92年度の2028コースと比べると18.6%も増えている。業界関係者は「減る一方のプレー客を、乱立したゴルフ場が奪い合っている。ゴルフ場数は明らかに過剰。これから本格的なゴルフ場淘汰が始まる」と予想する。
このためか、株式市場では「アコーディアが打ち出したスキームは、淘汰時代に向けた生き残り策」との見方が強いが、このスキームで同社の業績はどう変わるのだろうか。
同社の14年3月期業績見通しは次の通りだ。営業収益(売上高)は前期比3.6%増の942億円、営業利益は同12.8%増の150億円、最終利益は同4.6%増の63億円。次に営業収益内訳を見ると、ゴルフ場運営収益が615億円の見通しで、収益全体の65.3%を占めている。一方、スキームにより、保有ゴルフ場133コースの67.7%に当たる90コースを売却した場合、90コース分のゴルフ場運営収益はSPCの売上になり、アコーディアはSPCからの運営受託収益しか得られなくなる。
すると、単純計算で90コース売却後のゴルフ場運営収益は199億円に激減し、全体の営業収益は526億円に減少する見通しになる。つまり、942億円を見込んでいた年商が一挙に44%も減ってしまうのだ。そうなると当然、営業利益や最終利益のマイナス影響も予想される。
これは仮定の話だが、スキーム打ち出し後の15年3月期業績は、これに似た結果が予想される。「その状況でTOB攻防中に公約した高配当を守れるか」と心配する市場関係者もいる。
●現状で選択できる最善のスキーム?
しかし、アコーディア関係者は「ゴルフ場運営収益が減る代わりに、人件費などの営業経費も減少する。したがって、SPCからの運営受託収益は、ゴルフ場運営収益より額が少なくても営業利益率はかえって高くなる。しかも経常利益段階で、25%超の出資を予定しているファンドからの分配金も入ってくるので、最終利益率も高くなる」と懸念を払拭する。そして「当社の試算では、投資効率を示すROE(自己資本利益率)は13年3月期実績の6.6%から約10%へ大幅に改善する見通し」と強調する。同社のもくろみでは「TOB攻防戦で株主に約束した高収益を保持するため、現状で選択できる最善のスキーム」ということらしい。
そうなると、最後にどうしても気になるのが「レノのその後」だ。
市場関係者によると、TOB終了後のレノは鳴りを潜めたまま。しかし、水面下では依然アコーディア株の買い占めを続け、関東財務局提出変更報告書(13年12月4日)によれば現在は保有割合が23.97%に達している。このため「TOB介入の目的についてさまざまな憶測が市場で流れているが、当事者が沈黙し続けているので真偽は不明」(市場関係者)という状況だ。
だが、別の市場関係者は「今は買い占めた株の売り抜け時を探っている最中。高値で株を買い取らせるため、6月下旬の株主総会で無理難題を仕掛けてくる可能性が高い」と推察する。
ゴルフ場業界関係者は自社の生き残り策を探る上でも、スキームの成り行きと6月の株主総会から目を離せない様子だ。
(文=福井晋/フリーライター)