家電や自動車に代表される日本企業のもの造りの開発戦略は、これまで製品寿命の短いサイクルで次々と新製品を開発して大量生産、売上高を伸ばすことで成長発展してきた。それに対してドイツなどヨ-ロッパのもの造りは、製品寿命の長い製品を時間をかけてじっくり開発し、価格の安さよりもブランド、デザイン、サ-ビスなど付加価値の高さをユ-ザ-にアピ-ルする開発戦略を取ってきた。
上図でいえば、欧州の優れたメ-カ-はブランド力や優れたデザインがものをいう第1象限の分野で競争してきたのに対して、日本メ-カ-は製品の短サイクルと価格の安さで勝負する第3象限の分野で競争してきた。
短過ぎるモデルチェンジサイクル
このことを端的に示すのが、主要製品のモデルチェンジである。日本車の平均モデルチェンジサイクルは4~6年であるのに対して、欧州車のそれは7~8年と長く、中には平均モデルチェンジが10年以上の車も数多くある。
また、家電製品の代表・薄型テレビについても、日本製品の平均モデルチェンジは1~2年であるのに対して、ヨ-ロッパのそれは日本より長く2~3年以上である。パソコンの平均モデルチェンジに至っては1年前後と短く、最近人気のケ-タイやスマ-トフォンではモデルチェンジが数カ月という短さである。
日本企業の製造業は、これまで欧州メ-カ-に比べてブランド力やデザイン力の不足を補うため、マイナ-チェンジを含めて製品のモデルチェンジを頻繁に繰り返す短寿命・低価格製品を大量生産することで成長してきた。こうした日本のもの造りの開発戦略が、世界的になんとか通用したのは20世紀末までである。短寿命・低価格製品は、製品の陳腐化(コモディティ化)が早い。
ノキアですらトップ転落
グロ-バル経済が本格化する21世紀に入ると、韓国のサムスンやLG、台湾のホンハイやエイサ-、中国のメーカーが台頭し、もの造りの主導権は新興国の主要メ-カ-に完全に奪われた。こうした世界的な流れに出遅れた日本企業が、短寿命・低価格製品の分野で復活できる可能性はきわめて低いと言わざるを得ない。世界競争は今後ますます激化して、栄枯盛衰のスピ-ドやサイクルは目まぐるしい。現在絶好調のサムスンでさえ、いつまで世界トップを維持できるかまったくわからない。つい最近まで携帯電話で世界トップシェアを誇っていたフィンランド企業のノキアでさえ、あっという間にトップの地位から転落したのだから。
今や環境保護意識の高い先進国のもの造りの流れは、はっきり変化した。消費者のニ-ズを反映して、商品の短サイクルや開発スピ-ドを競う短寿命化の傾向ではなく、「いいものを改善修理しながら末長く使っていこう」とする長寿命化の傾向にある。