(ソル・メディア/山口誠志)
業績悪化の元凶と、ずっと言われ続けている薄型テレビは「作れば作るほど赤字になる」状態だ。テレビを含めたAV(音響・映像)関連事業は4~6月期も100億円の赤字だった。テレビ事業の来期(14年3月期)の黒字転換を、社長のカズは公約しているが、そのメドは立っていない。
業績の下方修正の発表を受けて、3日の東京株式市場のソニー株は売り一色。「さらに下方修正がある」との警戒感が強まったためだ。3日の終値は897円(前期比67円安)、安値は877円(同87円安)。下落率は一時、8%を超えた。6月4日に1980年8月以来32年ぶりに1000円(終値990)を割り込み、7月25日には863円まで下げた(この株価は過去10年来の記録的な安さだ)。今回の業績の下方修正で、株価が底割れ状態になるとの懸念が浮上している。
世界的なIT(情報技術)バブル時の00年3月1日に3万3900円(株式分割による調整後、1万6950円)の超最高値をつけている。リーマン・ショック後の高値は10年3月23日の3645円だ。00年の水準は望むべくもないが、2年前の高値と比べても株価は4分の1以下の水準だ。
発行済み株式数は約10億株なので、時価総額は8800億円と1兆円を大きく下回った。ピーク時には15兆円を突破していたのだから14兆円以上が失われたことになる。
液晶テレビ事業の止血(赤字を止めること)にメドをつけた上で、ソニーならではの製品を市場に問うことが株価上昇には不可欠だが、この両方とも兆しさえ見えてこない。
社長のカズは、就任間もない4月12日の経営方針説明会に登場して、「ソニー復活を象徴するような、世界中をあっといわせるような魅力的でイノベイティブな商品・サービスを市場に投入する」と宣言した。しかし、ソニーらしい商品になるはずたった新型録画機器「nasne(ナスネ)」は7月19日の発売直前に、機器の不具合で発売中止に追い込まれた。ソニー製のゲーム機とテレビ、スマートフォン(高機能携帯電話)、パソコンをつなぎ、録画した番組の視聴ができる商品。ソニーの子会社、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)が発売する予定だった。