投資家のソニーの経営陣に対する不信感は強い。東京・港区のホテルで6月27日に開かれた株主総会では開会から30分過ぎに、「株価の1000円を割れは株主にとって屈辱。企業価値の毀損は(前CEO)のハワード・ストリンガー氏と(副会長の)中鉢良治氏が進めた『賞味期限切れ』の戦略が原因だ。二人の取締役の選任に反対する」と、最初に質問に立った株主が鋭く批判すると、会場は割れんばかりの拍手に包まれた。
ストリンガー氏は冒頭、「巨額の損失を出しご迷惑をかけた」と述べたが、「超円高、大震災、タイ洪水など環境が非常に厳しかった」と続けたため、最初の質問に立った株主から、「資質のある経営者は外部環境を(業績悪化の)理由にしない」と手厳しく反論された。結局、ストリンガー氏は自分の経営責任を認めることなくCEOの座を下りた。
また、総会ではストリンガー氏の高額報酬に強い疑問の声があがった。前年の8億8200万円はどだい無理といわれてきたが、驚くべきことに4億6650万円。4億円台を大幅に突破した。これは12年3月期の経営者報酬ランキングの9位(前年は2位)にあたる。
ストリンガー氏は05年6月に最高経営責任者(CEO)に就いて以来、7年間、ソニー・グループを率いてきた。そして最後の4年間は赤字を垂れ流した。にもかかわらず、高額報酬を得ていた。同氏は取締役に再任されたが、株主の賛成率は66%にとどまった。
高額報酬だけでなく取締役選任に関しても株主から「ノー」を突きつけられた事実は重い。だが、ソニーと、その社長のカズには、この事実の重みが判っていない。
ストリンガー氏に対して、何もいえないソニーの新社長に対する社内外の期待は急速に萎んでいる。「平井さんはアンシャンレジーム(ストリンガー時代の旧体制)の中でしか生きられない人」と若手の幹部社員は酷評する。
「平井クンのホームグランドだったゲーム世界は、最初は赤字で、その後(利益を出して)回収していくビジネスモデルだ。ソニー本体から切り離された別会社で自由度が高く、責任も軽かった。本体で本物のエレクトロニクスの仕事はやったことがなく、その経験の無さが今、大きなネックになっている」(ソニーグループの元役員)
パナソニックの浦賀一宏・新社長がアナリストの間で高い評価を得ているのに、カズはまったく存在感がない。
そのパナソニックの12年4~6月期連結決算の営業利益は386億円。前年同期の6.9倍となり、最終利益は128億円と6四半期ぶりに黒字転換した。
「コア事業がなければ高収益企業になれない、とは考えていない」(浦賀社長)
白物家電の小さな売り上げを積み重ねて黒字転換を果たした。
ソニーの4~6月期決算はどうかというと、最終赤字は246億円で赤字額は前年同期の155億円から91億円も増えた。税引き後利益の赤字は6四半期連続である。売上高は前年同期比1.4%増の1兆5151億円。本業のもうけを示す営業利益はパソコンの価格下落などで同77.2%減の62億円。かろうじて営業黒字を確保した状態だ。