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製氷機トップのホシザキ、異例のトップ人事の怪 突然の社長降格で創業家会長が復帰

文=編集部
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製氷機トップのホシザキ、異例のトップ人事の怪 突然の社長降格で創業家会長が復帰の画像1「Thinkstock」より
 業務用製氷機のトップメーカーであるホシザキ電機(愛知県豊明市、東証1部上場)で、不可解なトップ交代があった。鈴木幸彦社長が6月13日付で代表権のない取締役に降格し、創業者一族の坂本精志会長が社長を兼務する。坂本氏が社長に復帰するのは3年ぶりだ。社長交代の理由について同社は、「重要な経営判断において迅速な意思決定を行うに当たり(代表取締役2名という)現体制に課題がある」とコメントしているが、具体的にどのような課題があったのかについては明らかにしていない。

 坂本氏はホシザキ電機“中興の祖”といわれる人物。慶應義塾大学工学部機械科を卒業し、父親の薫俊氏が創立した星崎電機(現・ホシザキ)に入社。当時のホシザキは飲料自動販売機を製造していた。

 坂本氏は米国での見本市に出かけた折、現地人から「日本人は金持ちになる。金に余裕ができると氷を使うようになる。これからは製氷機が売れるぞ」とアドバイスされた。

 帰国後、父親の反対を押し切り製氷機の開発に取り組み、1965年に製氷機の販売を開始した。営業部隊の子会社、坂本商事を設立し、人海作戦で売り込みを図った。今日では、業務用全自動製氷機(市場シェア70%)、業務用冷蔵庫(同50%)、業務用食器洗浄機(同16%)、ビールサーバー(同75%)などで圧倒的なシェアを握る。

 坂本氏は2005年に本体のホシザキ社長に就任し、創業60周年を目前にした08年2月、東京と名古屋で株式を上場した。11年2月には会長へ退き、後任社長に坂本商事時代(05年にホシザキ電機が合併)の部下だった鈴木氏を指名した。

減益見通しに苛立つオーナー

 鈴木氏の社長在任中の実績を見てみると、13年12月期の売上高は2055億円と初の2000億円台に乗せ、最終損益も157億円と社長を引き継いだ時から2倍に増やした。とはいっても、14年12月期の売上高は前期比5.6%増の2170億円と増収だが、最終利益は127億円と減益になる見込みだ。15年同期の最終利益の予想は134億円。2年連続で13年同期を下回りそうだ。

 13年12月期の増益は円安効果の賜物だった。円安効果が消えても利益を上げるために新分野に注力している。各販社に「ホテル課」を設けて、新設が増えるホテル市場の営業を強化した。米国マクドナルドからも製氷機の認証を取得し、取引を開始した。しかし、今後2年間、13年12月期の最終利益を下回る見通しで、「そのことに苛立ったオーナーの坂本氏が、増益達成までのスピードを上げるために社長に復帰したのではないか」と証券アナリストは見ている。

 ホシザキといえば、株式市場では海外投資ファンド、セレクト・バンテイジが仕掛けた投機の犠牲になったことで知られる。セレクトは12年4月12日から24日にかけて、大量の買い注文を出しながら成立直前に注文を取り消す「見せ玉」の手法で、ホシザキと酉島製作所の株価を不正につり上げ、安い価格で取得していた持ち株を売り抜けていた。証券取引等監視委員会は不正な利益を得たとして今年2月、課徴金命令を出すよう金融庁に勧告した。

 そのホシザキでは今回、最近の上場企業では珍しく若返りに逆行するトップ人事が行われたが、一体、何があったのか。今後、社内外に波紋を広げそうだ。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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