三井住友銀行員が語る「エリート銀行員のトンデモ実態と“癖”」
の著書『ザ・ラストバンカー』(講談社)
そんな三大メガバンクの一角を占める三井住友フィナンシャルグループ(FG)は、行員数では3社中第2位。総資産・時価総額ベースでは、世界第14位(2011年時点)を誇る名門である。そんな三井住友FGの中核である三井住友銀行は、インターネットバンキングを先駆けて行うなど、斬新な経営の展開でも知られる。そんな同行の内情について、現役行員、関係者に赤裸々に語ってもらった。
ビジネスライクな対応がトラブルに
三大メガバンクの顧客への対応は、最も官僚的なのがみずほ銀行、庶民的なのが三菱東京UFJ銀行、ビジネスライクで都会的な対応が三井住友銀行といわれる。
「いろいろ批判はあるが、お客様からみて、きちっと手堅く仕事をこなすのがみずほ。それにサービス業的要素を加えたのが、三菱東京UFJではないか。うちはどういうわけかエリート風を吹かせた人間が多く、そのためかビジネスライクな対応をしているが、時と場合によってはそれがトラブルを引き起こす」(三井住友銀行現役行員・A氏)
A氏によれば、「どうしても地域によってはユニークなお客様、と申しますか、扱いにくいお客様もいらっしゃるので、フレンドリーな応対をしたほうがいいケースもあります」という。
とある“ユニークな客層”が多いことで知られる支店での話だが、この支店での窓口業務担当者は、実は最近ではパート行員の比率が高くなっている。正行員は資産運用相談や投資信託販売、年金保険仲介といった「利益率の高い」仕事に駆り出されるからだ。
そのため新規の預金口座開設など、「番号札で呼び出しを待つような顧客」への対応は、利益性を追求しなくてもいいパート行員の比率が高い。
勘違い“エリート”行員
もっとも、このパート行員の多くは、元銀行員である。パートとはいえメガバンクに勤めていることで、時折、「自分はエリート」と勘違いする者もおり、特に「元地銀行員や元信金職員に、その傾向が強い」(A氏)という。そうした“勘違い”でエリート風を吹かせたパート行員が事件の発端だ。
「顧客が新規で預金口座を開設した際、銀行側の不手際で、ある書類を顧客に手渡すことを失念してしまいました。そのため担当の女性行員がFAXでその顧客に書類を送付したのですが、顧客からは『FAXが白紙で届く』と何度もクレームの電話が入ってくる。その女性行員は、FAXの調子がよくなかったことが原因だと説明しているが、1時間以上も電話でのやり取りが続き、さすがに顧客がキレた。周囲の行員もちょっとマズいなと思ったとき、その女性行員が発した言葉に、一同が凍りついた。