ユニチカは7月17日、三菱東京UFJ銀行など主力3行を除く43の取引金融機関との間で、債務約1612億円の返済期限を2017年9月末日まで延期することで合意したと発表した。これで15年3月期に見込まれていた約160億円の債務超過を、とりあえず回避できることになった。
ユニチカは15年3月期、不採算事業撤退などのリストラ費用として440億円の特別損失を計上しなければならず、これに伴い約160億円の債務超過が確実となったため、主力3行と投資ファンド、ジャパン・インダストリアル・ソリューションズに総額375億円の第三者割当増資を要請。その条件が43取引金融機関の返済期限延期になっていたのだ。割当増資で調達した375億円のうち、275億円を借入金の返済に充て、残り100億円を成長に向けた設備投資などに振り向ける。
今回の返済延期合意で債務超過回避と、7月中の第三者割当増資実施により、ユニチカは当面の経営危機から脱したと一般には見られている。だが業界内では「これでついにユニチカは崖っぷちに立たされた。同社の終着駅は第二のカネボウ。それも時間の問題。金融機関の支援を受けても、自力で経営再建できる可能性が極めて低い」(業界関係者)との見方が支配的だ。
●同工異曲の中期経営計画
そうした見方を裏付けるかのように、ユニチカが6月13日に発表した「新中期経営計画」(14―17年度)の中身に、早くも疑問が寄せられている。新中計では成長戦略として「フィルム、不織布事業におけるアジア地域での能力増強と差別化品の拡販」「樹脂事業における新素材・新用途向け拡販と、中央研究所開発素材の積極的な製品化」を挙げ、事業ポートフォリオ改革として「産業繊維事業の構造改革」と「低採算・ノンコア事業の縮小・撤退」を挙げている。
これらを骨子に17年度に売上高1460億円(13年度比10.3%減)、営業利益140億円(同1.06倍増)、最終利益104億円(17.3倍増)と、財務改善を意識したのか減収増益目標を掲げ、有利子負債を13年度の1646億円から17年度に1150億円へと約500億円圧縮するとしている。また、繊維事業の売上高比率を42%(13年度)から35%(17年度)へ縮小する目標も掲げている。
この新中計を見た証券アナリストは「表現こそ違え、中身は前々回の中計とほぼ瓜二つ。計画のずさんさに唖然とした」と厳しい。前々回の中計とは、同社が09年3月に発表した「改革11」(09―11年度)。売上高を2120億円から2090億円へ、営業利益を70億円から155億円へとする減収増益目標が同じなら、掲げた成長戦略も今回と基本的に違わない。しかも、改革11の計画は大幅未達に終わっている。
実はユニチカの「飛躍05」(03―05年度)から前回「Change & Challenge14」までの過去4回の中計は、いずれも大幅な計画未達に終わっている。同社が挙げる未達理由も「円高、原材料価格高騰、世界経済の減速、タイ洪水の影響」などの外部要因ばかりであり、需要分析の誤りなど内部要因に対する振り返りは見られない。