西武ホールディングス(HD)の再開発事業である紀尾井町プロジェクトは3万平方メートルの土地に地上36階・地下2階建てのオフィス・ホテル棟を建設中で、2016年夏に完成の予定だ。オフィス部分の24フロアのうち、ヤフーは20フロアを使用。ホテル部分にはプリンスホテル(約250室)が入居する。ヤフー本社は現在、東京・赤坂の東京ミッドタウン・タワービル内にある。東京・六本木のアークヒルズサウスタワーにも事務所があり、分散していたオフィスを集約する。
紀尾井町周辺はIT関連企業が集まり、ヤフーの移転で東京・渋谷に対抗するIT村に変貌することになる。
●赤プリは権力闘争の舞台だった
赤プリは1955年、衆院議長も務めた西武グループの総帥、故堤康次郎氏が旧朝鮮王室邸を買い取り開業した。長年、ここに拠点を置いてきたのが自民党の最大派閥の清和政策研究会だ。派閥創設者の故福田赳夫元首相が堤氏と親しかったことから、格安の賃料で事務所として使ってきたという。
79年に福田元首相が清和会を結成して以来、赤プリ内に事務所を設置。森喜朗氏、小泉純一郎氏、安倍晋三氏、福田元首相の長男である康夫氏と4代連続で首相を輩出した。野党に転落した自民党が再び政権を奪取すると、清和会の安倍氏が首相に返り咲いた。
田中角栄元首相、福田赳夫元首相の「角福戦争」をはじめとした派閥全盛時代に、赤プリは国会に近いため、数々の権力闘争の舞台となってきた。
語り草となっているのは87年の竹下登氏、安倍現首相の父晋太郎氏、宮沢喜一氏による中曽根康弘元首相の後継争いだ。角福戦争でライバル関係にあった田中派の流れをくむ竹下氏と、福田派のプリンスである安倍氏は赤プリ新館の一室で8時間にわたり話し合いを続けた。双方とも譲らず、結局、中曽根氏の裁定で竹下首相が誕生した。
赤プリは11年3月に営業を終え、政局の舞台回しの役割も同時に終えた。そして16年夏、赤プリ跡地にヤフーがやってくる。
●鉄道系企業ビルのテナントは元気印のIT企業
西武鉄道、プリンスホテルを傘下に持つ西武HDは今年4月、株式の再上場を果たした。新ビルは再生のシンボルとなる。一般的に新しいビルはテナント誘致に四苦八苦するものだが、ヤフー本社の入居は大きかった。24フロアのうち20フロア分を賃借してくれることになったからだ。鉄道系企業がつくるオフィスビルに入居するのは、最近ではIT企業が目立つ。
東急電鉄が12年4月に開業した渋谷ヒカリエも、さながらIT村の様相を呈している。地上34階、地下4階で、上層階がオフィスフロアになっている。32~34階の3フロアには携帯電話大手のKDDI(au)、31階にはKDDIの子会社でモバイル業界を中心に広告事業を展開するmedibaが入居している。