日本郵政G子会社、セクハラ被害者に「あなたの責任」、組織的隠蔽か 肉体関係を社内調査
●人事担当者と面談
加害者への事実確認から約1カ月半後、A氏は人事担当者B氏と面談をした。その際、B氏から「セクハラ行為自体は会社として重く受け止めている」「本件が人事から直接社長にも報告され、弁護士にも入ってもらう」「今後産業医との面談を実施し、事実確認が終わるまでは自宅待機となる」との説明を受けた。これを受けA氏は、外部の専門家にも関わってもらえると聞き、会社の対応を信用して待ってみようと思ったという。
一方で、A氏は「加害者として名前を挙げた人から恨まれるのではないか?」「今回告発した内容とは直接関係ないことまで加害者から暴露されたり、加害者が保身のために事実を否定したりするのではないか?」という不安を抱いたままであった。
半月後、B氏からA氏に、セクハラ加害者や関係者への事実確認を行った結果報告があった。最終的には「会社としては、弁護士と相談して対処する」ということであった。
しかし、会社側はA氏が事前に訴えていた内容を十分に把握しておらず、会社に提出した証拠データも確認していなかったことが判明し、A氏は会社側の事実確認の姿勢に疑問を抱いた。
しかも会社は、加害行為を直接目撃していた可能性が高い第三者のヒアリング結果をA氏に一切説明しなかった。
その後、まるで示し合わせたかのようにA氏への中傷や事実無根の噂が加害者や関係者からA氏に浴びせられるようになった。これらによって深く傷ついたA氏に対しB氏は、「噂が事実ならば、あなたも処分の対象になる可能性がある」と告げた。
このB氏の発言は、脅す意図がなかったとしても、A氏を圧迫しかねないものである。人事担当者としてあるまじき発言であり、いわゆる「セカンドハラスメント」であることは明らかである。
その後A氏は、この中傷および噂の一部について、自ら事実無根であることを証明できたが、深く傷つき、名誉が毀損される結果になった。実際A氏は、心身症を著しく悪化させていった。心療内科の医師からも、症状の悪化が「セカンドハラスメントによる病状の再発、悪化」であると伝えられた。
なお、A氏が「セクハラ並びにパワハラ防止規程の有無」について同社へ確認したところ、同社には当該防止規程が整備されていないことが判明した。
会社側は、加害者への懲戒処分については、一切説明していない。また、A氏に対しても、調査結果などの詳細な情報の開示や謝罪を行っていない状況にある。
会社はA氏の復職についても、本人の希望に反し「復職できる場所はない」との判断を下した。セクハラ行為が「一次被害」だとすれば、このような会社の仕打ちは「二次被害」といえる。加害者は処罰されず、ケアされるべき被害者が冷たく扱われることに疑問が募る。
●労働局へ相談
A氏は、一連のセクハラ行為と、それに対する会社側の対応について東京労働局雇用均等室に相談した。
その際の雇用均等室専門相談員による見解は次のようなものであった。
「本件は虐待行為の典型的なパターンであり、A氏には専門機関でのカウンセリングを受けることを強く勧める。企業側の対応に怒りを感じることも充分理解でき、もし今後、会社側とA氏との間に衝突が生じた状態が解消されないのであれば、仲介に入ることも可能である。その場合は、日本郵政グループ本社を管轄している東京労働局で調停を行う」