――同社は50年以上の業歴を持ち、年間売上高1兆円を超えているのに、世間では“永遠の新興企業”というイメージを持たれています。上場で、そうしたステータスに変化は起きそうですか?
常見 新規事業をどんどん開発して、いつの時代にも新鮮味を持ち続けているという意味では、新興企業というイメージは必ずしも悪い面ばかりではないでしょう。社格については、1兆円企業になってもインディーズ感が非常に強いですね。日本の経済界でのランクではリクルートは常にセカンドベストで、例えば経団連などで一定のポジションを得るようなエスタブリッシュメントには入っていないと見ています。仮に時価総額が電通や博報堂を上回るようなことがあっても、社格は両社よりも下のままだと世間は捉えるのではないでしょうか。この社格の中途半端感が今後、どうなるのか。私も気になっています。
――社格については、経営陣の間で「あえてエスタブリッシュメントに加わらない」という価値観が継承されているのでしょうか? それとも、社格を上げたくても上がらないというのが実情なのでしょうか?
常見 それはわかりませんが、ただ、上場して3年以内に方向性の答えが出ると思います。日本の経済界で指導的な地位を得ようとするのか、それとも国内のステータスはどうでもよくて、国際的なステータスを得ようとするのか。現状、同社の立ち位置はエスタブリッシュメントでもないし、上場したITベンチャーのようにヤンチャな存在でもなく、ある意味で「不明確」だと思います。
●リクルート出身者は仕事ができる、は本当か?
――世間的には「同社出身者は仕事ができる」との評価が強いですが、こうした評価は現実を捉えているのでしょうか?
常見 30代以上のベンチャー企業創業社長に同社出身者が目立つのは、採用活動の違いです。その時代の採用方針は、意欲・能力に秀でた人材の採用でした。つまり母数が多い中で独立する社員が多ければ、必然的に上場するなど注目を集めるケースも多くなる。それが今の30代以上の経営者たちです。同社出身者には起業家精神が旺盛でビジネスセンスに長けているというイメージがありますが、多くは「普通」という範疇に入る人たちで、とがったりしていません。一部の人がイメージをつくっているのです。
――同社出身者は積極的に自著を出版するなど、セルフ・ブランディングに熱心ですね。
常見 これには2つの背景があります。ひとつは、同社時代にさまざまな業種の企業に対して、その企業の何を魅力として引き出して、それをどのように広告に表現すれば反響を獲得できるかという仕事を経験していること。クライアント企業のブランディング経験を積んでいます。そのノウハウを、自分のブランディングに応用しているのです。