もうひとつの背景はコンプレックスです。リクルートの社員には受験に失敗したとか、スポーツで挫折したとか、なんらかのコンプレックスを持っている人が多く、それが「一発当ててやろう」という山っ気を生み出してセルフ・ブランディングに走らせているのではないかと私は見ています。しかも経歴を見ると、多くが「元ナンバーワン営業社員」。しかし、全社のナンバーワンなのか、部門のナンバーワンなのか、あるいは通期のナンバーワンなのか、四半期のナンバーワンなのかわかりません。なかには全社ナンバーワンもいますが、四半期ナンバーワンにすぎないOB・OGもいるはずで、要は独立して食べていくために、リクルートというブランドを利用しているにすぎません。
――つまり、実物以上に自分を大きく見せたがる行為というわけですね。
常見 あれだけ厚かましいのですから、羞恥心などないでしょう(笑)。欧米人は自己PRに積極的だといわれますが、経歴を誇大に書いているOB・OGは、それに近いメンタリティーを持っているのではないでしょうか。セルフ・ブランディングに熱心なのはOB・OGの一部ですが、これが同社出身者のイメージ形成に大きく影響しています。
そもそもリクルート出身者が優秀だといわれるようになったのは、2000年代に入ってからです。1988年に起きたリクルート事件の余韻が消えた00年以降にくらたまなぶさん、藤原和博さん、松永真理さんなどが著名な存在になりました。そして2000年代以降、退職者たちが次々にベンチャー企業を立ち上げたり、大手企業の幹部にスカウトされたり、著書を出したりして「同社出身者は優秀である」というイメージが出来上がったのです。
――実態はどうなのでしょうか?
常見 もちろん「同社出身者はこういうタイプ」とひとくくりにはできません。採用方針も変化しますので、どの時代の社員かによってもタイプが違います。ただ、私が退職後に接点を持ったOB・OGに限っていえば、鼻が利いて、お金にならないと思ったら、すぐに手のひらを返してしまうタイプが多いのは事実です。自分から「WIN-WINで行きましょう」と言ってくる人も少なくありませんが、格闘技ゲーム風にいうと「YOU-WIN」ですよ。
悪いというよりも、ズルい、セコいというのが同社出身者に少なからず見られる特徴です。また、金銭欲が強いとはいっても、外資系金融機関の社員ほどの拝金主義ではありません。もっとも、ズルさやセコさを批判的に見ることは、私がビジネスマンには向いていない証しなのかもしれません。実際、すでに私はビジネスの世界から身を引いていますが。
――ビジネスなどで同社出身者と関わる場面になったとき、何に注意したらよいのでしょうか?