東京証券取引所が企業統治(コーポレートガバナンス)ルールの原案を2月24日に公表した。新ルールの適用は2015年6月1日からで、東証1部、2部に上場している約2400社が対象となる。
新ルールの目玉は、複数の社外取締役の選任を求めているところだ。この東証新ルールに先立って5月に施行される改正会社法では1人以上の社外取締役の選任を促しているが、東証新ルールでは東証上場企業に対して法律より強いガバナンス体制を求めている。
新ルールでは、主要な取引先である企業の元役員でも退職してから1年以上たてば着任を認められ、これまで義務づけられていた独立性についての詳細な説明は省略できるなど、選任についての弾力的な運用も促している。一方、2人以上の社外取締役を選任しない場合はその理由の説明を義務づけるなど、「飴と鞭」で複数となる社外取締役の選任を上場企業に促している。
なぜ、今まで社内の取締役だけでやってきた日本企業に社外取締役の導入を促すのかというと、「外部の眼」が必要であり有効だからだ。社外取締役の導入によって企業のガバナンスが向上し、結果として業績に寄与するからにほかならない。「その企業や業界の事情もわからず、専門知識がなくて取締役として貢献できるのか」という向きもあろうが、それは企業経営を経験したことのない人々の思い込みである。
経営の実践には「原理原則」があり、それを踏襲すれば他の企業にいっても、あるいは非常勤取締役の立場で関与しても十分に機能できる。ただし、その社外取締役に十分な企業経営経験があるということが前提条件となる。1つの企業の経営だけという経験レベルでは、わからないことなのかしれない。
企業組織の階層は下にいけば専門知識や専門技能が重要だが、上にいけばいくほどいわゆる「大所高所」の見識、判断力が必要となる。他の企業や業界でそれらの知見・見識を磨いた経験者を招けば、企業ガバナンスに必ず寄与できる。近頃ようやくこのことが理解されてきたのか、いわゆる「プロ経営者」が招聘あるいは派遣されて活躍するようになってきた。せっかく外部から経験者や有職者を招くのだから、社外取締役を有効活用しない手はない。
●注目すべき京王電鉄の取り組み
筆者は昨年、とある上場企業から社外取締役就任の打診を受けた。社長は意欲的でその動きが出たのだが、筆者と面談したのは総務部長(執行役員)だった。「社外取締役の方には、役員会では提出議案に賛同するご意見を言ってもらいたい」という役割だという。つまり、単に外部の視点からもお墨付きをもらいたいというのである。筆者は「きっと社長は別の考えなのだろうにな」と思った。総務部長がさかしらをして、トップの意向とは反し役員会で波風を立てない成り行きを求めていると理解した。