ユニクロ柳井・非情経営の強さ ローソン玉塚「みんなでがんばろう」経営の危うさ
「週刊東洋経済」(東洋経済新報社/11月22日号)が『玉塚元一ローソン社長の逆襲』という特集記事を掲載している。「負け続けたプリンス」という副題が付いており、見出しには「大学ラグビー、ユニクロ…。最後の最後で勝利を逃す男、玉塚元一。大手コンビニで人生最大の逆襲に打って出る」と、遠慮のない表現をしている。実は筆者も自身のブログ記事で「この、『目立った実績が何もない』スター経営者はどこへ行くのか」と評したことがあり、「東洋経済」記事と同様な見解だ。
玉塚氏は、筆者が卒業した米サンダーバード国際経営大学院の後輩だ。2000年頃、アリゾナ州フェニックス本校から学長が来日した際、筆者が日本の同窓会会長を務めており、レセプションに玉塚氏も出席していただき挨拶を交わした。たしか当時はファーストリテイリングの副社長だった。
「ラグビーで鍛えた堂々たる体躯。身長は181センチ。甘いマスク」(「東洋経済」記事)の玉塚氏はグッド・ルッキングで、誰の印象にも残った。育ちの良さや洗練された物腰、そして何よりその後ファストリ社長に就任したこともあり、まさに我が校OBの星となってくれた。スキーの腕前もプロ並みと伝えられており、「若大将」社長、スター経営者として脚光を浴びていたのが2000年代前半のことだった。
しかし、あれから15年ほど、玉塚氏の経営遍歴つまりキャリア・チェンジはしばしば華々しく喧伝されてきたが、その話題に伴うような実績を残せてはおらず、結果として「東洋経済」で「負け続けたプリンス」と評されてしまった。
●「みんなでがんばろう」経営が孕む危険
玉塚氏の経営スタイルについて、同誌記事は次のように紹介している。
「誰とでも一瞬にして打ち解けることができる。それこそが玉塚の最高のスキルである」
「今はチーム玉塚として、みんなで肩を組んで歩いている」(ローソンのフランチャイズ店舗の有力オーナーの談)
「全社員が考えて、全社員が実行する経営にしていきたい」(玉塚氏の談)
こうした玉塚氏の経営スタイルは「みんなでがんばろう」という基本方針に基づくものだと推察されるが、実は企業経営上の危うさを孕んでいる。そして実際に玉塚氏は勝ち切れなかった。
一方、ファストリで玉塚氏を社長から解任した柳井正氏(現社長)は、「君には降りて貰う」と言い渡せる経営スタイルだ。
前者のスタイルを営業本部長のリーダー・スタイル、後者をCEOとしての経営スタイルと分類できるが、ローソン社長に就任した玉塚氏の本格的かつ最後となるであろう「逆襲」の成功を切に希望する。
(文=山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役)