据置型ゲーム機はソニーが「プレイステーション4」、米マイクロソフトが「Xbox One」といった次世代機を発売したが、かつての爆発的ヒットは望むべくもない。こうした構造変化を乗り切るために、任天堂とDeNAが手を携えて、スマホ向けゲームを共同開発する。
一発逆転への期待から両社の株価が急騰したわけだが、懐疑的な機関投資家もいる。メリルリンチ日本証券はリポートで「国内ではゲーム利用者の中心の30~40代に幼少時からの任天堂ファンが多く、利用基盤拡大へのハードルは高い」としたが、ニンテンドー3DSとスマホ向けゲームの共食いの懸念を指摘し、投資判断は「売り」を継続した。
●思惑に微妙なズレ
今回の資本・業務提携をめぐり、両社の思惑に微妙なズレがあると見る向きが多い。任天堂は提携と同時に新型ゲーム機を16年に発表することを明らかにした。スマホゲームを呼び水に、利用者を据置型ゲーム機に引き込む戦略を描く。あくまで主役は据置型ゲーム機のハードとソフトなのである。
一方のDeNAは、スーパーマリオなどの有力なキャラクターを使ったスマホゲームを開発して、新しい利用者を獲得、課金収入を増やすのが目的だ。株式市場を沸かした提携だが、「両社の関係は同床異夢。任天堂が劇的に変わることはなさそうだ」(市場関係者)。
任天堂は据置型ゲーム機、DeNAはソーシャルゲームの勝ち組だった。任天堂は携帯型ゲーム機「ニンテンドーDS」に続く据置型ゲーム機「Wii」の世界的な大ヒットでゲーム機の王者として君臨し、07年11月1日の株価は7万3200円の最高値を記録した。一方のDeNAは、携帯電話向けソーシャル・ネットワーキングサービス「Mobage(モバゲー)」のヒットなどで急成長を遂げ、11年8月18日に4330円の高値をつけた。
その後、両社の株価は急落する。任天堂の株価は1万円を割り、12年7月25日には8060円の最安値をつけた。ピーク時のわずか11%だ。DeNAも14年8月7日には1170円の安値をつけた。ピーク時の27%だ。
任天堂はスマホ向けゲームに食われ、Wii Uだけでなくゲームソフトの販売が低迷し、14年3月期まで3期連続で営業赤字に転落した。DeNAはスマホ向けゲームに押されて、業績が落ち込んだ。
スマホゲームに主役の座を追われた両社が手を組む。巻き返しを期待して提携を好感する向きもあるが、“弱者連合”といった冷ややかな声も上がる。
(文=編集部)