「成功している会社はなぜ成功しているのか。成功するようにやっているからだ。失敗している会社はなぜ失敗しているのか。失敗するようにやっているからだ」
パナソニック創業者、故松下幸之助氏の言葉である。いわゆる勝ち組と負け組には共通的な特徴があるということだ。50年にも及ぶ筆者の経営経験に基づいた見立てでは、成功組、失敗組にはそれぞれ「ABC」があるようだ。
ダメな会社のABCは、Arrogance(経営者の傲慢)、Bureaucracy(お役所主義)、Complacency(安易な現状是認・危機意識の欠如)の3つ。一方、勝ち残る会社のABCは、Action(行動力)、Belief(企業の理念や信条・社員間の信頼)、Change(変化に対する対応力)の3点セットである。
Arroganceとは、経営者が成功を収めた時に生じがちである。「この考え方とやり方で今までやってきた。会社は伸びている、うまくいっている」という自信が生まれる。自信はとかく慢心になる。慢心が高じると傲慢になり、人の意見に耳を貸さなくなる。結果として会社を滅ぼす。
Bureaucracyの特徴は、前例主義であり、ことなかれ主義である。実質よりも形式が重んじられ、無謬症候群が蔓延する。
Complacencyとは、「まあええやんか」という、いわれのない自己満足である。「外部環境が良くなれば、そのうち我が社の業績も良くなるだろう」という甘えであり、ひとりよがりである。危機意識の欠如が会社をダメにする。
●成功する企業のABC
一方、成功する企業のAction とは、文字通り物事を実行に移すことができる行動力のことである。「Analysis Paralysis(分析ばかりで麻痺状態)」という言葉がある。どんなに優れた計画があったとしても、行動に移さなければ何ひとつ変わらない。望ましい結果には結びつかない。
Beliefには2つの意味がある。ひとつは企業理念や信条があるということ。もう一つは、経営陣をはじめとする社員の間に信頼関係がある、ということである。企業理念は判断や決断をする際の求心力としての効果を発揮する。
Changeとは、変化に対する迅速な対応力である。「生き残るのは最も強い者でも、最も賢い者でもない。変化に最も迅速に対応する者である」とは生物学者チャールス・ダーウィンの言葉である。経営環境が変わる中では、自社も変わらなければ生き残ることはできない。